ストーリー水泳

競泳 入江陵介 31歳 泳ぎ続ける理由

2021-04-08 午後 10:48

100メートル背泳ぎに続き200メートルでも代表内定を決めた入江陵介選手は4大会連続のオリンピック出場です。引退も考えた5年前の記憶、そしてコロナ禍で芽生えた「選手の価値」への疑問。すべてを振り払い泳ぎ続けたのには訳がありました。

 

 

今回の日本選手権はオリンピック延期によるモチベーションの低下で調子を落としたり、一発勝負の重圧で力を発揮できなかったりして実力のあるトップ選手でも代表内定を逃すケースが出る中、31歳になったいまも第一線を走り続ける入江選手は危なげない泳ぎで代表内定を手にしました。

 

 

平泳ぎでオリンピック3大会に出場したNHK解説者の林享さんは入江選手の安定した強さを「コロナ禍でも一貫して調子を維持してきたのはメンタル面の成長。昔は泳ぎが上手でも不安定な時期があったが、いろいろな経験をして強くなった」と分析します。

入江選手の「経験」とは5年前のリオデジャネイロオリンピックの苦い記憶です。
200メートル背泳ぎでまさかの8位に終わり、レース後のインタビューで「賞味期限切れなのかな」と吐露した映像が全国に流れました。

 

一時は引退も考えましたが、「日本人がいない環境に行こう」と心機一転、アメリカに練習拠点を移し各国の選手が集うプロチームで過ごした2年間で力強さを身につけました。

しかし、コロナ禍による東京オリンピックの延期。ニュースで医療従事者の苦境が報じられ、自身も緊急事態宣言で満足にプールで泳げない日々に、「泳ぐことができないスイマーに何ができるのか」と思い悩むこともありました。

それでも「今、自分ができるのは悲しいことに水泳しかない」と心に決めて再びトレーニングを始めます。

 

 

延期でできた時間を痛めていた腰の回復と筋力強化にあてたことで、スタートの鋭さや泳ぎの力強さが増す結果にもつながりました。

今大会、入江選手の決意を後押しする出来事もありました。

代表選考会の2日目、池江璃花子選手が100メートルバタフライで復活優勝を果たしオリンピックへの切符を手にしたレースです。

 

 

レース後、涙を流す池江選手の姿に声援のない無観客の会場に選手やコーチたちからの拍手が響きました。

「『スポーツに何ができるか』と問われると正直分からないところがあるけど、璃花子の泳ぎを見ていると水泳選手としてだけではなく人間として勇気づけられる。スポーツの力はこういうことなんだ」

 

 

決勝のレース後「純粋に水泳が楽しいので、やめる時がわからない」と代表選考会のプレッシャーから解き放たれ笑顔を見せた入江選手。

泳ぎ続けてつかんだ4回目となるオリンピックは入江選手自身も気付かされたスポーツの力を誰かに伝える舞台になるのかもしれません。

この記事を書いた人

画像alt入ります

橋本 剛 記者

2005年 NHK入局 

社会部で東日本大震災からの復興や環境問題を取材。スポーツニュース部では水泳を担当。

この記事に出ている選手

入江 陵介

入江 陵介

関連キーワード

関連トピックス

最新トピックス

RANKING人気のトピックス

アクセス数の多いコンテンツをランキング形式でお届け!