ストーリー水泳

池江璃花子 涙の“王座奪還” 競泳 日本選手権

2021-04-04 午前 09:40

「すごくつらくて、しんどくても、努力は必ず報われる」池江璃花子選手は3年ぶりの“王座奪還”を果たしたレース直後、大粒の涙を拭いながらも自身が歩んできた道のりをそう表現しました。

「タイムを見て初めて」

東京オリンピックの代表選考会となる競泳の日本選手権2日目。女子100メートルバタフライ決勝。

まだ体力も完全には戻りきっていないはずの池江選手が強烈なラストスパートで抜け出しました。ゴール板をタッチし、振り返って確認した電光掲示板。まず目に入ってきたのは自身の名前の横に示された1着をあらわす「1」の数字でした。

 

 

「自分が勝てるのはずっと先のことだと思っていたので、ものすごく驚いた」と池江選手が続いて確認した自身のタイムは57秒77。

「自分は代表権を争うところまで まだ戻っていない」と考えていた中で、東京オリンピックのメドレーリレーの派遣標準記録を突破して代表内定をたぐり寄せた優勝となりました。

「タイムを見て初めてうれしさが込み上げてきた」

スタート台をつかんだまま涙がこぼれ、しばらくプールから上がることができませんでした。

 

 

「本当に、本当に、ことばにできないような、表現できないような、そんなうれしい気持ちになった。今までのつらかったことなど、いろいろ思い出された。そして、ここまで戻ってこれたことがすごくうれしくて、体もきつかったし、上がれなかった」

白血病の治療を乗り越えてプールに戻ったのが去年3月、最初は練習でチームメートについていけない日々が続きました。

「『もう自分、ダメなんだな』みたいな、落ち込んだ時期がけっこう長く続いた」

闘病の影響で体重は一時15キロ以上落ち、筋力も大きく低下。競技復帰は決して簡単な道ではありませんでした。それでも、持ち前の負けん気は衰えていませんでした。

 

 

まだ筋力が戻りきらずスタート台を蹴り出す力が弱いため、0秒01でも速く反応しようと繰り返し飛び込み、気持ちが先走るあまりフライングすることもあったスタート練習。体重を取り戻すために“食トレ”に取り組み、夕食を食べた後にラーメンを詰め込んだこともありました。

一つ一つ課題をつぶして、4日のレースを迎えたものの、「100メートルバタフライは1番、時間がかかると思っていた」と優勝にはまだ、距離があると感じていました。

ここで最後に彼女をもう一押ししたのは、勝負師としての集中力でした。4日のレースを見た競泳日本代表の平井伯昌ヘッドコーチは「きのうの準決勝では最後の5メートル、3回、腕をかいていたが手が上がらなくなっていた。きょうは、1回分削って、伸びることでカバーしていた。さすがの修正力と集中力、すごいなと感じた」とうなりました。

 

 

レース後、「まだ気持ちの整理ができていない状況で、これから徐々に実感がわいてくると思う」と想像以上の結果を受け止めきれずにいた一方で、「まだ世界と戦えるタイムではない。出場が確実に決まったら、東京オリンピックに向けてさらにタイムを伸ばしていくことを目標にする」と次を見据えた池江選手。世界に挑む戦いが再び始まります。

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安留 秀幸 記者

平成22年 NHK入局 北九州局からスポーツニュース部。競泳担当。メダルラッシュが期待される選手たちを追いかけて取材に邁進中。

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池江 璃花子

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