ストーリー水泳

競泳 松元克央 年の差47歳 師弟コンビの挑戦

2021-04-05 午後 10:46

「メダル圏内には間違いなくいると思うが、選考会では金メダルをとれるところまでもう一段上げてほしい」男子200メートル自由形の決勝、松元克央選手は、恩師のことばを体現するレースをみせました。

 

 

序盤で抜け出すと、前半の折り返しのラップタイムは50秒42。自身の日本記録よりも0秒76速い驚異的なペースでした。
後半に入ってからも徐々にリードを広げると、最もすごみをみせたのはラスト50メートル。4年前から指導を受ける、71歳の鈴木陽二コーチが「世界の選手も上げてくる勝負どころ」と重点を置き、松元選手自身も持ち味とするラストスパートでぐんと伸びました。

残り5メートル、「もう体が動かなかった」という最終盤にみせたのは息継ぎをしない“ノーブレス”でした。

「本当にめちゅくちゃ練習してきて、体が動かない中でもどうにかして動かすような練習をしてきた。何が何でもその実力は出したいなと思っていた」

力を出し切りました。
結果は2位に3秒近い差をつけての圧勝。日本選手で初めて1分45秒を切る1分44秒65の日本新記録は、松元選手が銀メダルを獲得したおととしの世界選手権で金メダルに相当するタイムでした。

 

 

レース後、松元選手は泳ぎに込めた思いを口にしました。

「1年前の選考会でも44秒を出すつもりだった。きょうは去年の大会が中止になったときの分の思いもぶつけてやろうとレースに臨んだ」
「1年延期したことが、今になってすごくプラスに働いたと感じる」

 

 

この1年、松元選手も多くのアスリートと同じく強化スケジュールが全く立てられない中で模索する日々を過ごしました。
「もう二度とやりたくない」というほど厳しいトレーニングを積み、手応えをつかんでいたさなかに決まった東京オリンピックの延期。一時はプールに足が向かないこともあったという松元選手の目を覚ましたのは、世界のライバルの存在、そして恩師のことばでした。

去年10月、ハンガリーで行われた短水路の国際大会・ISL。松元選手をはじめ世界選手権のメダリストが顔をそろえた準決勝のレースで、松元選手の結果は3位。苦手な短水路のレースであったことを差し引いても、「世界は止まっていない」と痛感させられたレースでした。
さらに胸に刺さったのが全幅の信頼を置く鈴木コーチのことば。

 

 

「こんなところで負けていたら、東京での金メダルはない」

松元選手は「まだまだ甘いところがあった」と決意を新たにします。この冬の泳ぎ込みは鈴木コーチが「本人の覚悟を感じた」と認めるほどの鍛錬を積み重ねました。

 

 

「一切やり残したことはない」と言い切って臨んだレースで打ちたてた日本新記録は2年分の思いと練習量に裏打ちされたものでした。

レース後、71歳のコーチは「これでようやく金メダルの勝負ができるところにきた」と目を細めました。24歳の教え子は「このタイムを見て世界もレベルを上げてくる。それに負けないくらい僕もあげていきたい」とさらなる飛躍を誓いました。

世界に挑む年の差47歳の師弟コンビ、その挑戦の物語はこの夏へと続きます。

この記事を書いた人

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安留 秀幸 記者

平成22年 NHK入局 北九州局からスポーツニュース部。競泳担当。メダルラッシュが期待される選手たちを追いかけて取材に邁進中。

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松元 克央

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