ストーリー水泳

競泳 武良竜也 日本選手権・男子平泳ぎの「ダークホース」

2021-04-04 午後 03:00

オリンピック代表選考がかかる競泳日本選手権。中でも特にハイレベルな争いが期待されるのが、男子200メートル平泳ぎ。日本代表2枠に入ることが即ちメダル候補とも言われる中、世界記録に迫る2分6秒台の記録を持つ渡辺一平選手と佐藤翔馬選手の対決に注目が集まっています。

3度のオリンピック出場経験を持ち、NHKの中継解説を務める林享さんにレースの展望を聞くと、二人に加えてあるダークホースの名前があがってきました。

ダークホースは武良竜也!

「オリンピック選考会には“魔物”がいるというか、予想外の選手が力をつけてきて一気に代表選手になる、そしてメダル候補になる可能性があります。このところ勢いを感じる選手として、武良竜也くんが出てきました」

 

武良竜也選手

 

林さんがレースの台風の目にあげた武良竜也選手は24歳。去年12月の日本選手権・男子200メートル平泳ぎで、自己記録を1秒半も更新する2分8秒15のタイムを出し、渡辺選手と佐藤選手に次ぐ3位に。一躍オリンピック代表候補の一人となりました。

 

「去年の日本選手権以降、今年に入ってめきめき力をつけてきています。彼はプル(手のかき)とキックのバランスがいい。平泳ぎの場合、(プルとキックは)1+1=2ではなくて、バランスよくうまくタイミングが取れることで3にも4にもなります。そのタイミングがあってきて、どんどん推進力を増して泳ぐ武良選手には、渡邊選手と佐藤選手に追いつくくらいの勢いを感じますね」

苦境が武良を変えた

林さんも驚く急成長の裏には、武良選手の大きな環境の変化がありました。

思うような結果が出せず、去年3月に所属先から契約を打ち切られたのです。アルバイト生活を余儀なくされる中、自ら所属先を探して売り込みをかけましたが、コロナ禍で受け入れてくれる企業はありませんでした。現在は地元・鳥取県の水泳連盟の支援を受けながら競技に取り組んでいます。

こうした経験を通して、武良選手は水泳との向き合い方に変化が生まれたと言います。

 

武良選手

「練習回数が半分になったので、誰よりもこの1回の練習を頑張ろう。みんなの2回分をこの1回で出し切ろうという強い思いです。全力で泳ぎ過ぎて倒れちゃったこともあります。でも、オリンピックに出たら(今の環境は)変わってくるだろうし、だから誰よりもオリンピックに出たいという気持ちは強いです」

 

武良選手の泳ぎからは、こうした強い思いが感じられる。そう林さんは語ります。

 

「十分に泳げない辛い中で、泳げる楽しさ、記録が伸びる楽しさが膨らんでいったのでしょう。今は気持ちよく泳いでいる印象があります。レース中もそうですが、レース後にすごく喜ぶ姿も印象的ですね」

 

選考会前に急激な伸びを見せる武良選手について語るうち、林さんは過去対戦したある選手を引き合いに出しました。

 

日本選手権で解説を務める林享さん

 

「2000年のシドニーオリンピックの年、高校3年生だった北島康介選手は代表選考会の3か月前あたりからグッと記録を伸ばして、選考会で優勝して一気にオリンピック出場を決めました。当時私も一緒に出場していましたが、彼には“ぶち抜かれた”んですよね。平泳ぎは技術の要素が非常に大きい種目なので、ちょっと泳ぎのタイミングが変わるだけで一気に記録が伸びるんです。今回も、この数か月で記録を伸ばして勢いのある選手は、レースでも上位に入ってくるように思います」

メダル候補渡辺は?佐藤は?

林さんがダークホースにあげる武良選手。その挑戦を受けるのが、去年12月の日本選手権で1位と2位に入った渡辺選手と佐藤選手です。林さんはそれぞれの強さを次のように見ています。

 

佐藤翔馬選手

 

「まず佐藤選手は、今年に入って2分6秒台を2回も出しています。キックが強く水の抵抗が少ない効率のいい泳ぎは、かつての北島康介さんに近い。それに最近は筋力がついて一気に記録が伸びてきました。(20歳という年齢から)経験不足ではあるかもしれませんが、自分の泳ぎをすれば世界記録(2分6秒12)、さらに2分5秒台という驚異的な記録も狙えると見ています」

 

渡辺一平選手

 

「渡辺選手は去年12月の日本選手権を2分7秒08で優勝。力強いプルを生かした大きな泳ぎで非常に良いレースでした。彼は安定して高いレベルの泳ぎができる選手。ここ一番でしっかり記録を出してくるので、オリンピック代表のかかった今大会にもしっかり合わせてくると思います」

勝負が決まるのはラスト50メートル!

この3人の中で、代表内定を掴めるのは2人まで。果たしてどんなレース展開になるのか。

 

ダークホース・武良選手はどこまで粘れるか

 

「タイム的に見れば今の勢いでは佐藤選手。渡辺選手にはプライドも勝負所での強さもある。そこに一気にタイムをあげてきた武良選手がじわじわついていく。現状の記録を見ると、200メートルでこの3人に対抗する選手は他にいないでしょう。注目は最後のターンのあとです。ラスト50メートルにどれだけ余力を残しておけるか。勝負はラストスパートだと思います」

 

誰が代表に選ばれるのか、そして世界記録は生まれるのか。注目の男子200メートル平泳ぎの決勝は、7日の水曜日に行われます。

 

競泳日本選手権 特設ページ

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