ストーリー水泳

競泳 萩野公介 日本選手権を前に見つけた “復活の鍵” とは

2021-04-02 午後 06:30

思うような結果を残せず苦しんだ時間は王者が再び羽ばたくための雌伏の時。

 

リオデジャネイロオリンピック男子400メートル個人メドレーの金メダリスト、萩野公介選手は東京オリンピックの代表選考会となる日本選手権を前に復活につながる鍵を見つけました。

”順調に来ている” 確かな手応え

 

標高1750メートルにある長野県東御市の練習施設で、最後の強化合宿に参加していた萩野選手は軽快な動きを見せていました。


カメラを向けると笑みを浮かべるその表情から、不振を抜け出す確かな手応えをつかんでいることを感じさせました。

 

萩野 選手
非常にいい感じできている。特に最初のバタフライに不安要素があったが、それも今回はだいぶ感触がよくなっていて、順調にきている。

 

萩野選手が順調と言い切れるようになったのは探し求めていたバタフライである感覚をつかんだことがきっかけでした。

 

ここ数年は個人メドレーを戦う中で1番最初に泳ぐ種目、バタフライが課題となっていました。思うように泳ぐことができず、レース序盤で無駄な体力を使ってしまい、後半で失速するレースが続いていたのです。

 

萩野 選手
200メートル個人メドレーでいえば、これまでも150メートルくらいまではなんとか押し切れていたが、最初のバタフライでの無理が影響して、得意としていた最後のクロールで伸びが出ないレースが続いていた。バタフライは4つの泳ぎの中の1つという以上の重要な割合を占めていると思っている。

 

なぜバタフライをうまく泳ぐことができないのか。

 

萩野選手は、その問いに向き合い続けてきました。4つの泳法をまんべんなく鍛える練習メニューにも関わらず、1日中、ひたすらバタフライだけを泳いだこともありました。

 

それでも、答えにたどりつけない。それどころかやればやるほど、出口が見えなくなっていきました。

 

やらないと速くならないことはわかっていた。だけど、これが難しいところで、やればやるだけうまく泳げるかというとそうでもなかった。やったらやった分だけ悪くなる日もあった。やったらやった分だけ、いい感触を持てる日もあったけど、そういう日は本当に少なくて。いつも練習が終わった後に1人でバタフライのチェックとかをしていた。

模索の先に “鍵” が見つかる

 

逃げることなく、バタフライの改善に取り組んでいた、ことし2月、ついにその扉を開く鍵を見つけます。

 

トレーナーと自身の体の動きをチェックをしていた時のこと、ある部分が弱いことに気づいたのです。それが、左の腹筋でした。

 

うつぶせの状態でひざをつけながら前方にぶら下がった2つの紐をつかみ、手前に引き寄せるトレーニング。バタフライの腕のかきに似たこの動作をすると何回やっても体が右側に傾きました。


トレーナーから左の腹筋が右に比べて弱いため、まっすぐ体を持ち上げることができていないと指摘されます。この腹筋の左右の差が泳ぎにも影響していました。

 

萩野 選手
うまく左手に力が乗っていないという気づきがあった。このブレが水中の動作にも似ている部分であり、水中はより不安定な部分。軸が安定しないと、力を伝えることができない。ここから自分の体がどういう状況にあるのか、今まで以上に気にするようになった。

見えた光の先に

 

探し求めていた答えがようやく見つかったと感じた『練習の虫』はその本領を発揮します。左右のバランスを整えることを意識した地道なトレーニングを重ねました。

 

合宿中には、集合時間より1時間早くプールに姿を見せ、ひとり、ストレッチや陸上トレーニングを行うなど、限られた時間を余すことなく使ってきました。効果は少しずつ泳ぎにあらわれ、バタフライの動きが改善されていきます。

 

すると、個人メドレー全体の泳ぎも上向いてきたことを実感できるようになりました。

 

萩野 選手
僕自身の中でもバタフライにおいての「えっ?」という気持ちは、いまは前と比べてほとんどない。さらには全体的に泳ぎがまとまっているということをすごくいま感じている。

 

8年にわたって萩野選手を指導し、支えてきた平井伯昌コーチも萩野選手の変化を感じています。

 

平井 伯昌 コーチ
リオデジャネイロオリンピックが終わってから、バタフライにてこずっていたが、ここにきて急にひもとけてきたような感じがしている。彼が考えてきたことがトレーニングだったり、泳ぎに出てきている。

何を優先するのか、何のために泳ぐのか

 

悩み苦しみながら歩んだ、この5年間。そのトンネルを抜けて再び勝負の舞台へ上がろうとする萩野選手は大会を前に1つの決断を下しました。

 

男子400メートル個人メドレーの欠場です。

 

「強い思い入れがある」と語り、東京オリンピックでは連覇がかかる得意種目でしたが、みずからの体力や体の状況を分析し、200メートル個人メドレーなどでの代表内定にかけることを決めました。すべては東京オリンピックに出場し、そして自信が持てる種目で世界と戦うための判断でした。

 

萩野 選手

この泳ぎをそのまま自信を持って泳ぐことが出来れば、間違いなく良い結果がついてくると信じている。充実したトレーニングの成果を日本選手権で100%ぶつけて代表権を獲得し、その先にあるオリンピックで日本代表として世界のライバルと戦いたいという思いが、今1番強い。

 

3大会連続のオリンピック出場にこだわり種目を絞って日本選手権に臨む萩野選手の泳ぎから目が離せません。

この記事を書いた人

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安留 秀幸 記者

平成22年 NHK入局 北九州局からスポーツニュース部。競泳担当。メダルラッシュが期待される選手たちを追いかけて取材に邁進中。

この記事に出ている選手

萩野 公介

萩野 公介

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