ストーリー水泳

競泳 日本選手権 1発勝負の五輪代表選考会!北島康介さんの注目は?

2021-03-30 午後 06:30

東京オリンピックの代表の座をかけた1発勝負の選考会となる競泳の日本選手権。

 

そのプレッシャーを最も味わい、そして、最もはねのけてきたこの人に大会の見逃せないポイントを聞きました。

競泳界の ”ナビゲーター” 北島康介さん

 

北島康介さんは今大会、NHKの中継で「ナビゲーター」を務め、連日、会場で選手たちの戦いを見届けます。

 

北島さんがまず注目しているのが、選手たちの姿や泳ぎそのものだといいます。

 

新型コロナウイルス、そして、オリンピックの延期という、誰も経験したことのない事態を選手たちがどう乗り越え、この1年間をどう過ごしてきたのか、レースにあらわれると考えているからです。

北島 康介 さん

選考会自体も延期となり、この1年、選手たちが、どう水泳と向き合ってきたのかが、試される大会になる。選手1人1人がここまで支えてくれた方の思いも背負ってスタート台に上がってくれると思う。

世界レベルの頂上決戦!男子200メートル平泳ぎ

渡辺一平選手と佐藤翔馬選手

 

北島さんが注目レースの1つに上げたのが、男子200メートル平泳ぎ。かつて北島さんがオリンピック2大会連続で金メダルを獲得し、日本のお家芸とも言われる種目です。

 

いま、この種目を引っ張っているのは、前の世界記録保持者で2019年の世界選手権銅メダリストの渡辺一平選手と、すい星のごとくあらわれ、急成長を続ける20歳、佐藤翔馬選手の2人。

 

新型コロナウイルスの影響で強化計画の変更を余儀なくされているなかでも、国内大会で世界レベルの戦いを繰り広げてきました。

(直近の戦績)

▼2020年12月・日本選手権

 優勝:渡辺 2分7秒08

 2位:佐藤 2分7秒69

 

▼2021年2月・ジャパンOP

 優勝:佐藤 2分6秒74

 2位:渡辺 2分7秒54

 

北島 康介 さん

2人ともこんなに高いレベルで平均的に泳げているのは、僕からしてみたら桁違いというか、並大抵のことではない。世界記録を更新するようなハイレベルなレースが展開されると予想している。

 

北島さんは2人の勝負を見る上でポイントとなるのが、世界記録への挑戦だと指摘します。

(記録一覧)

▼渡辺 2分6秒67(日本記録)

▼佐藤 2分6秒74(歴代2位)

 

▼アントン・チュプコフ(ロシア)

 2分6秒12(世界記録)

 

2月の競泳ジャパンOP200m平泳ぎ決勝の佐藤選手と渡辺選手

 

もともと2人が得意とするレース展開は正反対で、渡辺選手が持久力を武器にレース後半を得意とする一方、佐藤選手は前半から積極的に飛ばすレース展開が持ち味です。

 

オリンピック本番も見据えて、自身の強みを最大限発揮するために、2人がどのようなレースプランを立て、どれだけ愚直に実行できるのか。その結果が勝負、そして世界記録につながると考えています。

北島 康介 さん

2人はお互いを意識せずにレースすると思う。そうなったときに、世界記録を出すためにそれぞれがどのようなレースを組み立てるのかが見どころだと思う。

”1発” の怖さは「派遣標準記録」にあり

1発勝負の代表選考会では、もう1つ重要となる“記録”があります。それが「派遣標準記録」です。

 

オリンピック本番で決勝進出が期待できる選手を選ぶために設けられた基準で、優勝したとしても、この派遣標準記録を突破できなければ、代表内定を勝ち取ることは出来ません。

 

競泳は2004年のアテネオリンピックの代表選考から現在のシステムで選手選考を行っていて、北島さん自身も通ってきた道です。

 

2016年 代表選考会での北島康介さんと平井コーチ(右)

 

派遣標準記録について北島さんはアテネ大会と北京大会で平泳ぎ2種目で2連覇を果たした全盛期には「意識はしなかった」と振り返る一方で、苦い経験をした大会もありました。

 

それが、2016年4月、北島さんが「最後の挑戦」として目指したリオデジャネイロ大会の代表選考会です。

 

男子100メートル平泳ぎの決勝、北島さんは2位に入りましたが派遣標準記録に0秒30届かず代表入りを逃しました。前日に行われた準決勝のレースでは派遣標準記録を突破していましたが、決勝ではタイムを落としてしまいました。

 

北島 康介 さん

僕が余計なことを考えた唯一の大会だったと思う。それまでは記録を気にしたことも、優勝への疑問もなかった。ただ、あそこで初めて記録を意識してしまい、決勝でタイムを落としてしまった。そもそもオリンピックで戦う力がないということだったのだと思う。

 

一方で、この派遣標準記録の存在が日本競泳界の成長を促し、そして世界の舞台で結果を残せる一因になっているといいます。

北島 康介 さん

日本の水泳界を世界レベルに押し上げる基準になっているし、世界で活躍するプレーヤーが出てくる1つの要因になっていると思う。そして戦う集団、たとえ少人数でも勝負ができる集団で戦うことがより多くの感動を生み、勇気を与える結果につながっているのだと思う。

王者の決断 その結果は?

 

タイムではっきりと明暗が分かれる代表選考レース。今回、その場に1つの決断を下して挑む選手がいます。

 

リオデジャネイロオリンピック、男子400メートル個人メドレーの金メダリスト、萩野公介選手です。

 

金メダルを獲得したあと、一時、競技を離れて休養するなど、ここ数年、不振が続いていました。東京オリンピックで連覇がかかり、「強い思い入れがある」と話す400メートル個人メドレーへの挑戦を継続してきたものの、体力面などで最も過酷とされるこの種目で安定した結果を残すことができませんでした。

 

 

そこで萩野選手は今大会は大会期間中の負担も考慮して200メートル個人メドレーなどで代表入りを目指すことを優先するため、400メートル個人メドレーを欠場することを決めたのです。

 

萩野選手は北島さんが競技生活の終盤に練習をともにした弟弟子ともいえる存在で、現在は北島さんが社長を務めるマネージメント会社に所属しています。北島さんは不振に苦しむ萩野選手を気にかけて、地方で行われた大会に足を運ぶなど、その歩みを見つめてきただけに萩野選手の復活に期待を寄せています。

 

北島 康介 さん

400メートル個人メドレーに対しての自分の思い入れと葛藤、挑戦しないといけないという意義をずっと背負ってきたと思う。それを外すことで、また違った萩野公介が見られるかもしれないし、そこに期待したい。苦しんだ時期もあったけれど、東京オリンピックに対してどのような思いで臨むのか、彼の覚悟を感じ取れるレースになると思う。

東京五輪の切符勝ち取る鍵は?

東京オリンピックの切符をかけた1発勝負というやり直しがきかない舞台で鍵になるものはずばり何か北島さんに聞くと、その答えは。

 

「平常心」

 

北島 康介 さん

僕の好きなことばというのもあるんですけど、水泳選手はふだん反復練習とか繰り返し練習が多い。それなのに、いざ本番となった時に“もっと何かをしてやろう”と考えてしまうことが、マイナスになってしまう。ふだん通り、気持ちを落ち着かせてレースに出ていくことが僕は大事だと思う。練習や生活環境からいかに気持ちを落ち着かせて水泳と向き合うかがすごく重要だと思うし、僕は常に心がけていた。

この選手も気になります

 

そして、最後に日本一を決める舞台に帰ってくるこの選手の泳ぎを楽しみにしているのは私たちと同じでした。

 

池江璃花子選手。去年8月に白血病から競技復帰を果たし、その後も着実にタイムを縮め今大会は4種目に出場する予定です。

 

池江選手は自身の力の戻り具合を踏まえて2024年のパリオリンピック出場を目標に掲げ、今大会は「すべての種目で決勝に残ること」を目指すとしています。

 

北島 康介 さん

少しずつ選手としての表情と発言になって来ていると思うので、それをじっくり温かく見守りたい気持ちでいる。無理せずに、選考会を楽しんでほしい。厳しい勝負の世界にもう1回、飛び込んできてくれたので、そこを肌で感じてもらって多くの人にまた力を与えてほしい。

この記事を書いた人

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安留 秀幸 記者

平成22年 NHK入局 北九州局からスポーツニュース部。競泳担当。メダルラッシュが期待される選手たちを追いかけて取材に邁進中。

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