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ボクシング 梅村錬 五輪への最後の挑戦できず それでも、自分を突き動かすのは感謝の思い

2021-03-30 午後 04:15

梅村 錬 選手

“無になった”。この1年、何やって来たんだろうと。こういう結果が出てしまったのは自分が悔しかったのもあったが・・・。

 

東京オリンピックまで、あと4か月ほど。代表内定選手が次々に決まる一方で、みずからの出場をかけて選考会の場に臨む選手たちがいる。

 

しかし、世界を一変させた新型コロナウイルスの影響で、そのチャンスすら奪われてしまった選手たちがいることを忘れてはいけない。

 

3月、東京大会のボクシング世界最終予選の中止が伝えられた。

 

梅村 錬 選手

もう何日かあまり寝られない日が続いて。ヘルペスもできたりとか。練習はしていたが、寝てないのでまったく追い込むことが出来ない。ちょっと体調に支障が出たりとかして。

 

 

2019年 全日本選手権81キロ級で優勝した梅村選手

 

男子ライトヘビー級の梅村錬選手(23)が心の内を明らかにした。

 

2年前(2019年)、大学4年生の時に全日本選手権優勝、将来を期待される梅村選手は、東京大会の出場権を6月の世界最終予選(パリ)にかけていた。

 

まさに最後の最後のチャンスだった。

 

2019年 全日本選手権で優勝した選手たち

 

IOC=国際オリンピック委員会の特別チームが、ボクシングの世界最終予選の中止を決定。

 

代わりに特別チームが男女13階級の世界ランキングを策定し、各階級で最上位の選手に出場枠が与えられることになった。

 

特別チームの世界ランキングは、2017年からの国際大会や各大陸のオリンピック予選の成績が反映されるが、梅村選手など日本の若手は最近伸びてきた選手ばかりで、もともとランキングが低く出場枠を得られる可能性はほとんどないのだ。

 

 

小学6年生で始めたボクシング。人生をかけて出場を目指してきたオリンピックへの最後の挑戦の場が失われた。

 

出場の可能性がほぼなくなったとしても、梅村選手は変わらずトレーニングに励み、みずからの肉体を追い込んでいる。

 

梅村 錬 選手

オリンピック(代表全員)が決まるまで諦めちゃいけないからそこまで、まず全力で頑張ろうと思って。それで今はもうしっかり練習しているというか。強くなるためにまた動き出してます。1%でも可能性を信じて。

 

夢の舞台、しかも自分が生まれた国でのオリンピックへの挑戦の場を奪われたことはわかっている。

 

それでも「諦めた」とは言いたくない。厳しい状況の中でも、なぜそこまで自分を突き動かすことが出来るのか。ヒントは梅村選手のことばにあった。

 

 

冒頭、「この1年、何やってきたんだろうと。こういう結果が出てしまったのは、自分が悔しかったのもあったが・・・」

 

「・・・」の部分には続きがあった。そこには『応援して支えてきてくれた多くの方々に対して、本当に申し訳ないという気持ちでいっぱいになった』

 

オリンピック挑戦をこれまで支えてきてくれたすべての人たちへの感謝の思いだった。

 

梅村 錬 選手

始めた時から変わらずボクシングが本当に大好きだから、今も続けていけているし、たくさんの人の支えがあって、心の支えになっているというのもある。最終予選がなくなっても頑張り続けなきゃいけないっていう。自分のモチベーションになっているのかな。今、自分が止まってしまったら応援して下さっている方々を裏切ることになると思う。ここを諦めてしまったらボクシングが好きって言ってやってきたのに、ボクシングを裏切ることにもなってしまう。少ない確率かもしれないが、可能性があるなら自分を信じて今は突き進むのみ。

 

人は困難な状況や苦しい環境に置かれた時にこそ、真価が問われる。

 

誰も予想しなかった結論の中で語る、ことばの1つ1つに梅村選手の高い人間性がかいま見えた。

この記事を書いた人

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小野 慎吾 記者

平成28年NHK入局。岐阜局を経て、2019年8月からスポーツニュース部で格闘技(大相撲、ボクシングなど)を担当。前職はスポーツ紙記者。

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