ストーリー野球

沢村賞投手 大野雄大が磨く生命線は “インズバ”

2021-02-25 午前 10:30

昨シーズン、最優秀防御率と最多奪三振の2つのタイトルに加え、沢村賞を受賞した中日の大野雄大投手。

 

今シーズンは「すべてにおいてレベルアップ」を目標に、沖縄でのキャンプで調整を進めている。その中でも最も重視するのが“インズバ”だ。

初心を忘れず山登りでスタート

 

2021年1月5日。大野雄大投手の姿は、地元・京都の大文字山のふもとにあった。京都外大西高校時代から続ける、山登りの自主トレーニングだ。

 

毎年、この山登りで1年を始める。どんなに成績が良くても悪くても、初心に返って自分を見つめ直し、長く厳しいシーズンに備えるというルーティーンだ。

 

大野 雄大 投手

初心を忘れない大切さを感じ、シーズン中も『あの山登りに比べれば、たいしたことはない』と頑張ることができる。

 

取材のため同行し、一緒にスタートした私だったが、あっという間に大野投手は見えなくなった。私のほうが4つも年下なのに。運動しない生活を送ってきたことに後悔しつつ、大野投手の跳ねるように走る姿と、ゴール地点で余裕の笑顔を見せる、その劣らない体力に改めて驚かされた。活躍の裏には、この馬のような強じんな下半身が生きているのだと、止まらない汗を拭きながら、感じた。

沖縄キャンプは ゆっくり

 

2月1日、沖縄での春のキャンプが始まった。ところが毎年、いの一番に入るはずのブルペンに、大野投手の姿はなかった。キャッチボールもノックの送球も山なりのボールだ。昨シーズン、6つの完封を含む完投10試合と投げ続けてきた、その疲労は大きいはず。「ケガ?」、いやな2文字が頭をよぎったが、そうではなさそうだ。

大野 雄大投手

例年だと初日からブルペンに入っていたが、まだそんなに慌てなくていいかな。(キャンプでの調整は)任せてもらっている部分もあるので、しっかりと自覚をもって開幕に照準を合わせている。

 

 

そのことば通り、スローペースで入ったキャンプも、ブルペンでの投げ込みの球数も増えていき、シート打撃への登板と、段階を踏んできている。

 

 

さらに、昨シーズン飛躍の要因となった1つ、伝家の宝刀「ツーシーム」にいたっては、2月9日の2回目のブルペンで「いつでも投げられる」と語るほど順調な仕上がりを見せている。与田剛監督も「大野投手は、すごく安定していたし、バランスが良かったのが1番」と信頼を寄せていた。

今季のテーマは“すべてにおいてレベルアップ”

大野 雄大 投手

昨季は抑えられたけど、今季は各球団のバッターは、レベルアップしてくると思うので、自分もすべてにおいてレベルアップしたい。


昨シーズンが終わってから、大野投手が再三、口にしていることばだ。厳しいプロの世界、当然、他球団の選手がレベルアップしてくることはもちろんのこと、徹底的に研究されることは想定される。昨季、球界ナンバーワンの評価を得た“沢村賞投手”ともなればなおさらだ。


「去年と変わらず」ではなく、「常に進化」する。成績に満足せず、1歩、2歩上を目指す大野投手の意識の高さが表れている。また、その意識は実際の数字にも出ているという。大野投手いわく、ここ数年でストレートの平均球速が、約145キロと、5キロほど速くなっているというのだ。大卒プロ入りで32歳、10年たっても成長は止まらない。

“インズバ”を追求!


大野投手の投球の基本となるストレートの中でも、特にこだわるのは、右打者のインコースへ厳しく投げる、いわゆる“インズバ”だ。


「クロスファイヤー」とも呼ばれ、左投手の大野投手にとって、生命線のボール。一方でコントロールできなければ逆効果にもなる。キャンプ中のブルペンでのピッチングでも、早々に右打者を立たせて投げ、感覚を確かめていた。

 

大野 雄大 投手

右打者のインコースのまっすぐは甘くなったら、すごく危ない球。シュート回転して甘く入ってきたら、打者もバットが出やすいところなので。ただ決まった時は抜群の球なので自分の1番の武器だと思うし、そこに投げ込んでいかないと、ツーシームもフォークボールも生きてこないというのはある。やはりピッチャーをずっとやってきて、そこの球を1番、練習している。これからも追求していく球ではある。


 

実際、昨シーズン、開幕から6試合勝利がなかった期間では、インコースのストレートの要求に対して、真ん中に甘くボールが入り、ホームランを打たれる場面もあった。

 

変化球を生かすためにも、「インコースへのコントロール」と「ボールの力強さ」を高めることは、必要不可欠だ。昨シーズン以上の成績を残すためにも、インコースのストレートの出来は、1つのバロメーターと言っても過言ではない。

ドラゴンズが大好き!10年ぶりの優勝を!


キャンプ中、大野投手は人一倍大きな声を出して、投手陣を盛り上げていたのが印象的だった。昨シーズン国内FA権を取得し、去就に注目が集まったが、権利を行使せずに、早々に残留を決めた。

 

「このチームが大好き!」
2年続けての最優秀防御率のタイトル、そして沢村賞の受賞で、正真正銘のドラゴンズのエースになった大野雄大投手。愛するチームのため、昨シーズン以上に成長して、10年ぶりのリーグ優勝をたぐり寄せることができるか、今シーズンが楽しみだ。

この記事を書いた人

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竹内 啓貴 記者

平成27年NHK入局

横浜局ー沖縄局を経て、名古屋局で中日ドラゴンズを担当。小学校から大学まで野球を続けるも、社会人となって体重30キロ増で見る影もない。ちなみにポジションは投手でした・・・。

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