ストーリーフィギュアスケート

ファン目線でイラスト解説!NHK杯フィギュア 私の見どころ

2019-11-18 午後 0:00

趣味と実益を兼ねて(?)長年フィギュアスケートを見続けてきたイラストレーター・たきもとかよさんが今年のNHK杯フィギュアの見どころを寄稿してくれました。

 

いよいよNHK杯フィギュアが始まります。毎年、日本で見ることができ、昔から人気の高い、歴史ある国際大会ですよね。

会場で観戦することが好きなフィギュアファンにとっては、海外の選手の演技を生で見ることができる貴重な機会であり、そのほかNHK杯ならではの『どーもくん on Ice』や『どーもくんカメラ』、人気コーナーだった『豊の部屋』を継承した『明子の部屋』など、お楽しみ企画も盛りだくさんです。また、以前はフィギュアスケートの放送といえば、人気選手の演技だけをピックアップし放送するスタイルが主流でしたが、NHK杯は昔から地上波と衛星放送を駆使して全種目・全選手の演技を生中継で見ることができ、そこがファンに強く愛される要因でもありました。海外のトップクラスの選手の演技を見て学ぶ貴重な機会であったともいえます。

 

今回はすべての種目で昨シーズンの世界選手権の優勝者、あるいは五輪金メダリストがそろうというレベルの高い大会です。以下、昔からのフィギュアファンの1人として、今年のNHK杯で注目している選手について種目別にイラストとともに触れていきたいと思います。ファンの一例として、お気軽にお読みくださいね(笑)。

 

男子シングル:理想を投影したプログラムで挑み続ける孤高の王者 羽生結弦

 

昨シーズン、プルシェンコさんの伝説のプログラム『ニジンスキーに捧ぐ』をオマージュしたオリジナル作品『Origin』を演じるとの報に触れた時は歓喜に打ち震えました。SNSではファンの間でその話題がどれだけ続き、盛り上がったことか。そしてまず衣装を見て「…プルシェンコさんだ、あの衣装のオマージュだ…」と鳥肌が立ち、音楽が流れた瞬間に胸が締め付けられるような震えが走り、演技が終わった時にはテレビの前で大拍手!SNSでは感動のツイートがタイムラインにずらりと並んでいました。

 

羽生選手が自身の幼い頃からの夢と理想とこれから進む道を凝縮させたこのプログラムは同時に、昔からのフィギュアスケートファンのノスタルジーと「またあのニジンスキーを見てみたいな」というささやかな願いを(羽生選手自身はそういうつもりではなかったとしても)かなえてくれたものだと思っています。懐古的な単純なリメイクではなく、新しい形で再びよみがえらせてくれた羽生選手に感謝の気持ちでいっぱいです。

 

同じプログラムでも今シーズンの衣装はより羽生選手の魅力をひきたたせる方向へ寄った麗しい衣装になりましたね。そしてカナダ大会ではプログラム後半の4T+1Eu+3Fのジャンプに、基礎点16.83にGOEで4.07の加点がついて合計20.90という、ひとつのエレメントとして最高得点を獲得していました。今週末のNHK杯ではどんな素晴らしいパフォーマンスを見せてくれるのか楽しみです。

 

 

ちなみに、羽生選手のコンペティションプログラムで一番好きなものは『SEIMEI』ですが、エキシビションプログラムでは『花になれ』と『花は咲く』が好きです。前者はNHKのドラマ「陽だまりの樹」の主題歌、後者はNHK復興支援ソングですよネ。四大陸選手権とNHK杯それぞれ会場で見て、いずれも演技後半は涙であまりよく見えなかった記憶が残っています。今年のカナダ大会ではあのバトルさん振付のかっこいい『パリの散歩道』を披露されましたが、NHK杯もそれなのか、それとも別のものを用意してくるのか、そのあたりも楽しみのひとつです。

 

ジェイソン・ブラウン選手やセルゲイ・ボロノフ選手も大好きですし、島田選手や山本選手の演技も楽しみですし、早く見たくてたまりません!

女子シングル:躍進の国内若手選手に、大人の演技で挑む! アリーナ・ザギトワ

 

次世代の躍動とともに4回転時代のうねりが押し寄せる…。ロシアの女子選手は毎年のように女王が入れ替わってきましたが、ここまでその次元が異なるシーズンはなかったと記憶しています。女子も4回転を跳ばないと勝てないかもしれない…一気にそんな時代になりました。

 

ザギトワ選手といえば、ピョンチャンオリンピックで当時のレギュレーションを最大限に活用し、後半にジャンプを集中させることによってスコアを伸ばしましたが、昨シーズンはそういった”レギュレーションの後押し”がなくても世界選手権で優勝できる実力を見せてくれました。今シーズンはしっとりとした大人の女性の魅力を出す演技力を磨くことで、台頭してきた若手の4回転ジャンパーたちに対抗していく戦略が見えています。対国内の若手選手という意味で、メドベージェワ選手&ザギトワ選手の”技術+演技派”の選手たちの成長の行方を見届ける意味でも、NHK杯での彼女のパフォーマンスに期待しています。

女子シングル:技術に裏打ちされた独特のリズム感で魅せる 紀平梨花

 

シニアデビューの昨シーズン、NHK杯での演技は素晴らしかったですよね!ショートプログラムで透明感あふれる演技に魅了された翌日のフリースケーティングでは一転、力強くもしなやかな演技を見せたのですから…しかも、トリプルアクセルを2つ成功させたうえに、全種類の3回転ジャンプを決めて、すべてのジャンプに加点がつく出来栄えだったのですから。

 

昨シーズンのフリー『A Beautiful storm』で少し垣間見えた、しなやかな動きの中でうまく音をはずす絶妙なリズム感。今シーズンのショートプログラム『バクダッドの朝食』はさらに進化していて、不思議な世界観の演技に氷上から目が離せなくなるプログラムです。結果ももちろん期待していますが、あのプログラムがNHK杯でも見られることそのものが楽しみです。

同じように”プログラムを見ること自体が喜び”だったのが、浅田真央さんの『愛の夢』や鈴木明子さんの『O(オー)』でした。どれも「良いものをみせていただいた」という充実感で会場を後にしたものでした。紀平選手も4回転を跳びつつ持ち前の表現力でも魅せてくれるはずなので期待しています。

ペア:コケティッシュな魅力で円熟味を増してきた2人 隋文静/韓聡

 

ジュニアのころの2人は『バリーニャ』や『カントリーダンス』に代表されるような、快活で元気あふれる演技をするペアでした。キャラクターという意味では個人的にはカナダのデュハメル/ラドフォード組や高橋成美/トラン組などがイメージが重なります。

 

ケガに苦しみましたが、昨季はテクニックだけでなく、より一層しっとりとした情景が思い起こされるような演技派・実力派ペアに成長して戻ってきてくれました。ペアではなくアイスダンスを見ているのかと思うような情感あふれるパフォーマンスは、さまざまな力技をも入れなければならないペアという種目ではなかなかできるものではなく、実力があるからこそ可能になるものです。個人的にはヴォロソジャール/トランコフ組や川口/スミルノフ組の演技を観終わったあとと同じような、心の中にやさしい気持ちが染み渡るような夢心地にさせてもらえる、そんなすてきなペアです。NHK杯でもきっと素敵な演技をみせてくれるでしょう。

アイスダンス:ユーモアと優美なプログラムでスキルに磨きをかける ガブリエラ・パパダキス/ギオーム・シゼロン

 

アイスダンスの注目はパパダキス/シゼロン組!実績トップクラスの実力派カップルです。

 

ピョンチャンオリンピックではショートダンスで衣装ハプニングに遭うもフリーダンスで世界最高得点の演技で金メダルへ王手をかけましたが、ヴァーテュー/モイアー組が鬼気迫る圧巻の『ムーランルージュ』を演じ切り、金メダル獲得。それぞれが持てる最高の力を出しきった、歴史に残る名勝負でした。

 

今シーズンのリズムダンス「Fame」はこの組の持つユニークさと優美さが融合したとても楽しいプログラムです。パパダキス選手は"The Ice Dancer"とも言える端麗な顔立ちと美しいスタイルですが、エキシビション衣装かと一瞬とまどうような80年代風レオタードでさえもほれぼれと魅入ってしまう”ステキ衣装”へと変貌させ、凛々しく美しい演技をみせてくれました。シゼロン選手の素晴らしいスケーティング技術も必見です!

 

初日のリズムダンスでは「パターンダンス」と言われる、全組がまったく同じステップを踏むパートがあります。今シーズンはフィンステップが課題として採用されていて、ミュージカルあるいはオペラから引用することが指定されています(課題にこのような指定があるのは珍しいですよね)。実況のアナウンサーが「ここからパターンダンスです」などの紹介をしてくれるはずなので、アイスダンスを初めて見る方はぜひ各々の組の技術の差・表現の差を見比べて楽しんでみてくださいね!

あなたは生観戦組?それともテレビ観戦組?

 

以前テレビ情報誌『ステラ』用にNHK杯の放送中継プロデューサーを取材したことがありました。海外テレビ局からのさまざまな要望を集約して公式の映像を作る国際映像班、国内用の独自の映像や企画を盛り込む国内映像班、また、新しい映像作りを模索する試みもあり、制作スタッフのみなさんもNHKの総力をあげてがんばっていらっしゃることがひしひしと伝わってきました。今年も素晴らしい映像を届けてくださると期待しています。

 

ちなみに8K会場で見るNHK杯もかなりお勧めです!氷の状態や衣装の繊細な色合いや会場の奥深い暗いところまではっきりと見えつつ、22.2chサラウンドシステムによる立体音響によって選手がコツコツ動く氷の小さな音だけなく、拍手が天井へ湧き上がり反響して、また、下へ降りてくるといった3D的な臨場感あふれる音が体中を包んでくれます。なんだかNHKさんからの宣伝文句のようになってきましたが(笑)、まさに「体感する」という言葉がぴったり当てはまるシステムで、個人的にはある意味一番お得な観戦方法かもしれないとも感じています。未体験の方はぜひ一度。

 

11月に入り、一気に寒さを増した札幌。プラチナチケットを手にした幸運な生観戦組の人も、家でのんびり気ままなテレビ観戦組の人も、8K会場組の人も、共に今年の熱い氷上の物語を見届けましょう!(ちなみに私は大相撲中継放送とのテレビはしご観戦組です!笑)

たきもとかよ

イラストレーター。相撲雑誌などスポーツのイラストを中心に活動。

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