ストーリーフィギュアスケート

ビギナーでも分かる!女子フィギュア選手を八木沼純子さんが解説

2019-12-16 午後 0:00

シニアデビュー1年目にして2018-19シーズンのグランプリファイナルを制した紀平梨花選手をはじめ、近年の女子フィギュア界は注目選手が目まぐるしく変わるほどの粒ぞろい。普段あまりフィギュアスケートを見ない人にとっては、それぞれの選手の特徴を把握するのが難しいかもしれませんね。

 

そこで今回は“選手の顔と名前が一致しない!”という方に向けて、フィギュアスケート解説でおなじみの八木沼純子さんが、今知っておくべき注目の日本女子選手を解説!キャッチコピーとともにそれぞれの魅力や選手としての強さを紹介します。今回紹介する選手を知っておけば、北京オリンピックに向けてフィギュアスケートの観戦がずっと楽しくなりますよ。

八木沼純子(やぎぬま・じゅんこ)

1973年生まれ、東京都出身。
1988年、14歳の若さで日本代表としてカルガリーオリンピックに出場。その後もスピンの美しさを武器に、数々の国際大会に出場した。プロ転向後はアイスショーにおいて長きに渡りチームリーダーを務め、現在はスポーツキャスターとして様々なメディアでフィギュアスケートの解説などを行っている。

 

ビギナーも知っておきたい日本の女子フィギュア選手

2022年の北京冬季オリンピックを目指して、日々成長を続ける日本の女子フィギュア選手たち。その中から、ビギナーでも知っておきたい注目の選手6名をご紹介します。

紀平梨花 (きひら・りか)

「筋肉と会話ができる」メンタル女王

 

今年11月に行われたNHK杯での紀平選手。銀メダルを獲得しグランプリファイナルへの切符を手にした

 

2018-19シーズンのシニアデビュー1年目にしてグランプリファイナルで優勝、今年2019年のNHK杯フィギュアでも銀メダルを獲得し、グランプリファイナルに出場した紀平梨花選手。普段フィギュアスケートをあまり見なくても、紀平選手の顔と名前はスポーツニュースで見て知っている!という方は多いのではないでしょうか。紀平選手の代名詞といえば“トリプルアクセル“。さらに今後は4回転も視野に入れていると言います。

 

難易度の高いジャンプで高点数を得ている印象の紀平選手ですが、八木沼さんは本当の強さの秘訣は“総合的な技術力の高さ”にあると話します。

 

八木沼純子さん(以下、八木沼)「紀平選手と聞くと“トリプルアクセル”を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。現在のフィギュアは基礎点だけではなく、その出来栄えも重要な要素として評価されます(出来栄え点)。つまり、ジャンプを跳ぶ前の助走の段階から、降りた後の滑りまで1つのエレメンツとして見られる。紀平選手の場合は、トリプルアクセルを含めどのジャンプもつながりの部分で無駄がなく、無理がありません。伸びやかなスケーティングからタイミングよくジャンプしてステップに繋げていくことができるのです。高い基礎点を得るための要素の取りこぼしも少なく、こうした総合的な技術の高さが紀平選手の持ち味とも言えますし、それが高い点数につながっています」

 

 

また、紀平選手はメンタル面の強さも持ち合わせた選手だと八木沼さんは分析します。

 

八木沼「昨シーズンは初日のショートプログラムでミスをしても、フリーの演技で挽回して逆転優勝するという姿が印象的でした。ショートの悪いイメージが残って、フリーにも影響してしまう選手が少なくないのですが、紀平選手は冷静に自分の課題に向き合って、フリーのときには自分の中で整理をつけることができる。それは、素早く切り替えができる気持ちの強さがあるからだと思います。以前、『筋肉と会話できる』とコメントしていましたが、トレーニングの種類によって、どの程度疲れが残るのかをしっかり把握していて、練習の種類や量も調整しているそうです。あの若さで、これだけ自分の体のことを把握して練習や試合に挑むことができる冷静さも、紀平選手のメンタル面での強さの現れだと感じます」

宮原知子(みやはら・さとこ)

氷上で物語を紡ぐ “ミス・パーフェクト”

 

2019ロシア大会での宮原選手。美しいスピンとステップで高い評価を得た

 

2014年から全日本選手権を4連覇し、その後も第一線で活躍し続けている宮原知子選手。2018年のピョンチャンオリンピックでは4位に入賞しています。正確な滑りが持ち味であることから“ミス・パーフェクト”と評され、ストイックな練習ぶりも有名。その練習の成果が演技にもしっかり反映されていると八木沼さんは言います。

 

八木沼「誰よりも質の高く長い練習を毎日毎日こなしているのが宮原選手。フィギュアスケートは練習の際に気にするべきポイントが多く、それに伴い練習量も増えていくのですが、心と体を一定のバランスに保ち続けることは、誰もが耐えられるわけでありません。その練習に耐えられる宮原選手は、やはりミス・パーフェクトと呼ばれるだけのことがあると思います。その成果がしっかり演技にも表れていて、細かいニュアンスや余韻、動作の繋げかたなど一音一音細かく見せてくれるのが宮原選手の素晴らしいところ。無音の時ですら表現しているように感じます。音の世界に入っていって、どういう主人公でどう話が展開していくのか、細部にまで気を配る繊細な演技です。宮原選手も北京オリンピックに向けての気持ちがとても強いと思います。その代表になるには自分が何をどう進化させていけば良いかを見据えて練習しているのではないでしょうか。そうした芯の強さも宮原選手の魅力ですね」

坂本花織(さかもと・かおり)

表現力にも磨きがかかる ダイナミックジャンパー

 

2019フランス大会の坂本選手。日本勢では最高の4位

 

坂本花織選手は2016年の全日本ジュニア選手権で優勝を飾り、シニアデビュー後も目覚ましく成長している選手です。ピョンチャンオリンピックでは国内の激しい代表争いの中で出場枠を勝ち取り、女子シングルスで6位と好成績を残しました。スピードに乗ったパワーのある滑りが特徴で、ジャンプの高さは「日本の女子選手の中で間違いなくトップクラス」と八木沼さんは言います。

 

八木沼「坂本選手はスケーティングのスピードを生かして、弧を描くように幅のあるジャンプをダイナミックに跳んでいくのが特徴。そのジャンプも他の日本の女子選手が出せないような高さです。坂本選手の場合、降りた後もしっかり流れがありますから、試合においても十分な加点要素となります。さらに最近では、どのように音楽にのって表現していくかという部分にも力を注ぎ、体全体を大きく使った演技も印象的。パワーのある滑りに今後どのような表現力がさらに加わっていくのかに注目ですね」

三原舞依(みはら・まい)

しなやかに柔らかに、美しき軌道を描くシンデレラ

 

2019年3月のユニバーシアード冬季大会で優勝した三原選手。2019-20シーズンの競技大会は残念ながら療養のため欠場

 

坂本選手と同じチームに所属し、2人並んだ笑顔が中継などに映されることの多いのが三原舞依選手。坂本選手の力強い滑りが“剛”で表現されるなら、三原選手は“柔”の演技が特徴です。三原選手はジュニア時代、1万人に1人という難病に襲われリンクに立てない時期もありましたが、シニアデビューを果たした2016年には全日本選手権で3位と好成績を残しました。その時のフリーのプログラムが『シンデレラ』。三原選手の持ち味であるしなやかな滑りはまさにシンデレラのイメージにピッタリ。

 

八木沼「三原選手は氷上を滑らかに、そしてしなやかに滑るのが特徴。無駄のない流れのあるスケーティングから、そこに乗って美しい軌道を描いたジャンプを跳ぶことができます。最初から最後まで流れるように、まるで雲の上を滑っているかのような演技に引き込まれて、あっという間にプログラムが終わってしまう、そんなイメージです。こうした滑りができるのも、スケーティングのテクニックが優れているから。スピンの回転やポジション、ステップといった点においても柔らかさの中に鋭さもあり、こんなところでもぐんぐんと演技に引き込まれます。」

本田真凜(ほんだ・まりん)

力強さを身につけ進化中 華やかガール

 

2019カナダ大会6位の本田選手。華やかな演技で会場を魅了した

 

2016年の世界ジュニア選手権で優勝し、シニアデビューするや話題の中心となった本田真凜選手。抜群の表現力に華やかな演技が魅力の本田選手ですが、今は日本を離れ、練習拠点をロサンゼルスに移してネイサン・チェン選手など世界のトップスケーターを指導するラファエル・アルトゥニアンコーチに師事しています。新たな環境でトレーニングを積むことで、より成長を見せていると八木沼さんは言います。

 

八木沼「本田選手は、リンクに躍り出てきただけで周囲が明るくなるような“華やかさ”が魅力。“華やかさ”というのは、誰もが身につけられるようなものではありませんから、誰もが羨むチャームポイントではないでしょうか。また、現在はアメリカに渡り今までとは違うトレーニングを重ねることで、ジャンプの力強さなど、美の中にアスリートとしてのパワーも兼ね備えてきているイメージです。今は練習や試合などを通して経験や技術を磨き、自分の中にストックを作っている状態でもあると思いますが、スケーターとしてまだまだ伸びる選手だと思います」

樋口新葉(ひぐち・わかば)

キレのあるジャンプ ほとばしるパッション!

 

2019フランス大会の樋口選手。躍動感のある演技が魅力

 

惜しくもピョンチャンオリンピック出場の座を逃した樋口新葉選手ですが、現在は紀平選手や宮原選手などと共に日本スケート連盟の特別強化選手に指定されている確かな実力をもった選手で、今後の活躍が期待されています。そんな樋口選手の武器は、強じんな脚力とスピードのある滑り。そのスピードとテクニックを生かして、激しく一音一音を表現するメリハリのある演技が見どころ。

 

八木沼「樋口選手も坂本選手のようにスピードのある滑りが特徴。脚にモーターが付いているのかと思うようなハイスピードな滑りに乗って、パワーのあるジャンプを繰り出します。最近ではそこに繊細な表現が加わり、成熟度があがっている印象です。振付師が求めるものをしっかりと自分のカラーにして表現することができ、メリハリのつけやすい楽曲は得意中の得意。また、今ではトリプルアクセルも練習でコンスタントに成功させ、今後試合にも組み込んでくる様子。樋口選手のトリプルアクセルを楽しみにしたいですね!樋口選手も次の北京オリンピックを目指して頑張っているところなので、スピードのある滑りと表現力が融合した演技がこれからどう進化していくのか、とても楽しみです」

4回転時代に突入!日本の選手はどう戦う?

 

2022年の北京オリンピックに向けて日々成長する日本の女子フィギュア選手たち。しかし目下関心を集めているのは、4回転ジャンプを跳ぶロシアの若手選手の台頭です。今後の女子シングルの展望について八木沼さんの見解をお聞きしました。

 

八木沼「フィギュアスケートはジャンプ単体ではなく、演技全体で評価される競技です。そのため、ミスや取りこぼしなく、ひとつひとつのエレメンツでいかに大きな加点をもらって完成度の高いプログラムに仕上げることができるかというのも大切。ですから、スケーティングの技術や、プログラムをどのように解釈して体現していくか、といったポイントも見どころになってきます。こうした総合的なバランスの良さで見ると、日本の選手は優れているのではないでしょうか」

 

また、4回転ジャンプを駆使した戦いがこれからどのように展開されていくのかもまだ分からない部分があるとのこと。

 

 

八木沼「跳べば大きな加点となるのでやはり4回転ジャンプは強いですし、今後、選手たちがこの4回転を武器にどんな構成で戦っていくのか。一方で、女子選手は成長期を向かえて大人の体になっていくときに、ジャンプの回転の軸やタイミングが微妙に変わっていきます。成長期を迎え、その先に向けてそれぞれの体と向き合いながら難易度の高い技をキープしながら、フィギュアスケーターとして成熟していくのか。現在4回転を飛んでいるスケーター達が2年後のオリンピックに向けて現在の状態を維持しながら進化していくのか。さらに、2年後の北京オリンピックの段階で4回転を跳べる新星が他に表れたとしても、体に負荷がかかりやすい4回転をどう組み込んでいくのか、その駆け引きは非常に難しいものだと思うので、どのような戦いになるかはまだ予測が難しいですね」

 

 

今回紹介した選手たちの多くは12月19日からはじまる全日本選手権に出場予定。2022年の北京オリンピックを見据えて日々成長を続ける日本の女子選手たちに注目です!

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