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カーリング女子【詳細】日本 強豪カナダに勝ち今大会初勝利

オリンピック カーリング パラリンピック 2022年2月11日(金) 午後8:38
カーリング女子【詳細】日本 強豪カナダに勝ち今大会初勝利

北京オリンピック カーリング女子の日本代表、「ロコ・ソラーレ」は11日、予選リーグの第2戦で強豪のカナダに8対5で勝ち、今大会、初勝利をあげました


カーリング女子の予選リーグは10チームが総当たりで対戦し、上位4チームが準決勝に進みます。

日本は序盤から正確なショットで主導権を握り、第5エンドまでに不利な先攻ながら得点を奪う「スチール」に3回成功するなど、5対2とリードして試合を折り返しました。
第6エンドではカナダに2点を奪われましたが、続く第7エンド、スキップの藤澤選手が最後の1投でナンバーワンだった相手のストーンを押し出し、みずからのストーンを中心付近に残す「ヒットアンドステイ」を冷静に決めて2点を奪い、流れを再び引き寄せました。
日本はその後も得点を重ね、最終10エンドの途中でカナダが負けを認めたため、8対5で勝ちました。

日本は今大会初めての勝利で、予選リーグの勝敗は1勝1敗となりました。

12日も予選リーグは続き、午前に世界ランキング10位のデンマークと、夜には世界ランキング4位のROC=ロシアオリンピック委員会と対戦します。


【試合詳細】


日本は初戦と同じくリードが吉田夕梨花選手、セカンドが鈴木夕湖選手、サードが吉田知那美選手、司令塔のスキップが藤澤五月選手という布陣です。


第1エンド 日本 1-0 カナダ(後攻)


日本時間の午後3時5分に試合が始まりました。日本は不利な先攻でのスタート。しかしスキップの藤澤選手が最後の1投で相手のストーンの裏に隠すように円の中心近くへのドローショットを冷静に決めました。一方、カナダのスキップでカーリング界でレジェンドと呼ばれるジェニファー・ジョーンズ選手はストーンを中心に寄せきれず、日本はスチールに成功して1点を先制しました。


第2エンド 日本 1-2 カナダ(後攻)


先攻の日本はスキップの藤澤選手の1投目、相手のガードストーンをぎりぎりでかわし、円の中心付近への精度の高いドローショットを決めます。
ハウスの中のナンバーワンのストーンは日本、ナンバーツーのストーンはカナダで連続スチールのチャンスもありましたが、カナダはスキップの選手の最後の1投で、みずからのストーンにあてたうえで日本のナンバーワンのストーンを押し出す「ランバック」と呼ばれるショットで、カナダが2点を獲得しました。


第3エンド 日本が2点奪い再逆転 日本(後攻)3-2 カナダ


日本はこの日初めての後攻。スキップの藤澤選手が見事なショットを見せました。
最後の1投、正確なコントロールで相手のストーンに中心からわずかにずらして当て、相手のストーンをはじき出したうえで、自分のストーンは円の中に残しました。ねらいどおりのショットにチームメイトからも「上手!」と声がかかりました。これで2点を奪い、逆転。一進一退の攻防が続きます。


第4エンド 日本が不利な先攻で1点 日本 4-2 カナダ(後攻)


日本は不利な先攻で、相手の得点を1点に抑えればOKというエンド。スキップの藤澤選手が最後の1投で円の中心付近にストーンを寄せ、相手にプレッシャーをかけます。カナダのスキップ、ジョーンズ選手はそのストーンをはじき出して1点を取りにいきましたが、自分のストーンを円の中心に残すことができず、ナンバーワンは日本のストーンとなりました。正確なショットと相手のミスが重なり、日本が2回目のスチールで1点を追加しました。
藤澤選手はこのエンドまで8回投げてショット成功率は100%。チーム全体の成功率も88%と高い率となっています。


第5エンド 先攻日本がさらに1点 日本 5-2 カナダ(後攻)


ハウスに日本の3つのストーンが残る中、後攻のカナダは最後のジェニファー・ジョーンズ選手の最後のショットはねらいより弱く、チームメイトが懸命のスイープを見せるもナンバーワンにはなりませんでした。
強豪カナダの司令塔にミスが続き、日本がこの日3回目のスチールで1点を追加。3点リードで試合を折り返しました。

ここまでの10回あった両チームのスキップのショット成功率は藤澤選手は100%なのに対し、一方のジェニファー・ジョーンズ選手は58%とスキップが各エンドの最後の2投の調子のよしあしがここまでのスコアにも表れています。


ハーフタイムの「もぐもぐタイム」では“ようかん”も


第5エンド終了後のハーフタイム、日本はおなじみの「もぐもぐタイム」でエネルギーを補給します。日本の選手たちが食べていたのはゼリーや「ようかん」でした。一方、巻き返しをねらうカナダの選手たちもチョコレートなどを口にしていました。前半の日本のショット成功率はチームで89%とカナダの69%を大きく上回っています。


第6エンド 後攻カナダが2点獲得 日本 5-4 カナダ(後攻)


スキップ藤澤選手にきょう初めてミスが出ます。最後のショットで円の中にある相手のストーンをはじき出し投げたストーンを円の中に残すのがねらいでしたがわずかに強く、自分のストーンも外に出てしまいました。
その後相手のスキップが日本のストーンにあてたあと円の中心部分に寄せるショットを決め2点を返されました。1点差となり、第7エンドは日本が後攻です。


第7エンド 日本が2点追加 日本(後攻)7-4 カナダ


1点差に迫られた後攻の日本は最後の1投を残して円の中に相手のストーンが3つあり、ミスをすればスチールされる可能性もある状況となっていて、時間をかけてチームで慎重に作戦を話し合いました。
そして、スキップ藤澤選手が最後の1投でナンバーワンだった相手のストーンを押し出し、みずからのストーンを中心付近に残す「ヒットアンドステイ」をきっちり決めて2点を奪いました。リードは再び3点に広がりました。


第8エンド カナダが1点獲得 日本 7-5 カナダ(後攻)


3点リードで迎えた第8エンド終盤。日本は2投を残してタイムアウトを取りました。リンクサイドに降りてきたコーチと英語で会話しながらチームで話し合い、決まった作戦は「3時方向にある相手のストーンをテイクアウト(=はじき出す)する」というものでした。この直後、スキップ藤澤選手は見事にねらい通りのショットを決めました。



さらに藤澤選手は最後のショットでナンバーワンからナンバースリーまで日本のストーンという状況を作り相手にプレッシャーをかけます。
相手のスキップもこれらのストーンをしっかりはじき出してナンバーワンを取りましたが、得点は1点止まり。日本はねらい通りの試合運びを見せました。


第9エンド 日本が1点獲得 日本(後攻) 8-5 カナダ


ハウスの中にカナダのストーンが2つ残る中、日本は藤澤五月選手が最後の1投で2つともはじき出す「ダブルテイクアウト」を見事に決め、投げたストーンもハウスの中に残り1点を追加しました。
ここまでの18回あったスキップのショット成功率は藤澤選手は88%なのに対し、カナダのジェニファー・ジョーンズ選手は69%となっています。


最終 第10エンド カナダがエンド途中で「コンシード」日本が勝利


日本が3点をリードして迎えた最終第10エンド。カナダは残り1投を残して日本に追いつくために必要なストーンがなくなり、途中で「コンシード」、負けを認め日本の勝利で試合は終わりました。第1エンドから優位に試合を進めた日本が今大会初勝利です。


各選手談話 藤澤「あすは寝坊しないように」


スキップの藤澤選手は「きのうの負けでたくさん改善点が見えて、その失敗をしないようにみんなでどういう風に氷の上に立つかというのを確認して試合に臨んだ。これまでとは違う気持ちで戦うことができてよかった」と試合を振り返りました。
また、12日の試合に向けては「きょうはまずしっかり食べてあすは寝坊しないように早く起きられるように頑張る」とリラックスした表情でした。



リードの吉田夕梨花選手は「きのうの反省を生かして、チーム全員でショットを決められたと思う」と話していました。
また、今大会のアイスについては「去年12月の世界最終予選のときよりは素直なアイスだと思う」と話し感触は悪くない様子でした。

セカンドの鈴木夕湖選手は得意としているスイープについて問われると、「今シーズンはそれをいちばん大きなチーム目標にしてきたので、その集大成を見せたいと思う」と話していました。



サードの吉田知那美選手は「きょう対戦したカナダのチームは、誰もが知っているチームなので私たちも戦うことがすごく好きだったし、オリンピックで対戦できて感動している。大きな1勝だ」と笑顔で話していました。
またチームに本来の明るい表情が戻ってきたことについては「オリンピックは今回を逃すと、また4年間待たないといけないので、やりたいことを全部やろうと思っている」と笑顔で話していました。


【記者の目】前日の敗戦いかした「修正力」とチームワークで勝利


強豪カナダに挑んだ第2戦、日本はスキップの藤澤選手を中心に極めて正確なショットを次々に決め、終始優位に試合を運びました。
前日の敗戦を生かした修正力、そしてチームワークのよさが際立った初勝利でした。

〈際立った精密なショット〉
前日のスウェーデン戦、日本はアイスの状態を読み切れず、勝負どころでのショットにミスが出ていました。しかしこの日はそれを見事に修正します。



流れを引き寄せたのが第3エンド、スキップ藤澤選手の最後の1投です。相手のストーンの中心からわずかにずらして当て、相手のストーンをはじき出したうえで、自分のストーンは円の中に残す非常に難しいショットを決め、一気に2点を獲得しました。

前半の第5エンドまでの藤澤選手のショット成功率はなんと100%。不利な先攻で得点を奪う「スチール」にも3回成功しました。後半第6エンドではミスがあり、1点差に迫られましたが、悪い流れを引きずりませんでした。



続く第7エンド、藤澤選手のラストショットはナンバーワンだった相手のストーンを押し出し、みずからのストーンを中心付近に残す、完璧な「ヒットアンドステイ」で2点を奪い、勝利を大きく引き寄せる1投となりました。

藤澤選手の試合を通してのショット成功率は88%と初戦の76%から大きく向上し、しっかりと精度を上げてきました。

〈そして際立った「チームワーク」も〉
もう1つ、この日のロコ・ソラーレに感じたのは「チームワーク」の力です。
初戦よりもお互いに声を掛け合い、笑顔を見せる場面が多くなっていました。
「アイスが曲がるようになってるねー」などと気がついたことはすぐに共有し、たびたび時間をかけて作戦を練っていました。



リードの吉田夕梨花選手が「きのうの反省を生かしてチーム全体でショットを決められたと思う」と話していたとおり、チーム全体でショットのずれを修正していったのです。
ねらい通りのショットが決まると、「ナイス!」「上手!」と笑顔で声を掛け合い、のびのびとカーリングを楽しんでいるように見えました。

「これまでとは違うチームの雰囲気と気持ちで戦うことができてよかった」
その気持ちこそがプレッシャーのかかる場面でもショットを決められた大きな要因かもしれません。

今大会の初勝利をもたらしたロコ・ソラーレのチームワーク。
このあとのリーグ戦、正確なショットとともに、選手たちの笑顔にも注目です。


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