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五輪ボート会場 装置に“かき殻”で 国際大会誘致困難

2021-12-14 午後 06:45

  

東京都がオリンピック・パラリンピックのボートとカヌーの競技のために整備した会場で、国際大会を開くために必要な装置にかきの殻が付着して使えなくなる問題が起き、装置の撤去が進められています。 都は抜本的な対策を検討していますが、完了するまでの1年余りの間、オリンピック後の利用として目標に掲げている国際大会の誘致が難しくなっています。


東京オリンピック・パラリンピックでボートとカヌーの競技が行われた「海の森水上競技場」は、都がおよそ300億円かけて江東区の臨海部に整備し、大会後は国際大会を誘致する目標を掲げています。



競技場には複数あるコースをできるだけ同じ環境にするため波をおさえる「消波装置」が設けられていますが、装置にかきの殻が付着することがわかりました。

殻が付着すると重くなり海中に沈んで機能しなくなるため、都はオリンピックの前におよそ1億4000万円かけて除去しましたが、今後も新たな殻の付着が想定されるとして、現在装置の撤去を進めています。

都は、殻が付着しない効果が得られる抜本的な対策の検討を進めていますが、完了までに1年余りかかる見通しで、この間は装置がない状態となります。

ただ「海の森水上競技場」の場合、装置は国際大会を開くために必要なため、関係者によりますと対策完了までの間は国際大会の誘致が難しくなっています。


都の担当者「設計段階では想定外だった」


東京都は「海の森水上競技場」の「消波装置」にかきの殻が付着する事態について「オリンピックの前に施設を設計した段階では想定外だった」と話していて、抜本的な対策を急ぐことにしています。

「消波装置」はコースに沿って浮かべることで発生する波が伝わるのをおさえ、複数あるコースをできるだけ同じ環境にする効果がありますが、かきの殻が付着すると重くなって沈み、効果が薄れます。

都は、オリンピックの前に同じ仕組みの消波装置を使う近くの競艇場を調査してかきの殻が付着していないことを確認していたということで、都の担当者は「競技場を設計した段階では想定外だった」と話しています。

殻を付着させない対策として、都は、装置の周辺をカバーで覆ったり、定期的につり上げて付着を防いだりするなど、4つの案を検討しています。

これらの案から費用が安く、効果が高い案を今年度中に選定する予定で、その後、決まった対策を実施し再び装置を設置するまでには、1年余りかかると見込んでいます。

都の担当者は「自然のことなので地道に対策を進めていくしかない。ほかにも『海の森水上競技場』の周辺に駐車場をつくるなど今後、進めなければいけないことがあり、万全を期して国際大会を開催したい」と話しています。


来場数達成は大会の誘致が鍵に


「海の森水上競技場」は来年4月にスポーツ施設として開業する予定で、都は年間35万人の来場を目標として掲げています。

このうち、およそ6割に及ぶ20万9000人をボートの大会で来場する選手や観戦者などで見込んでおり、目標を達成するためには、どのようにして大会を誘致するかが鍵となります。

都は、1年間で国際ボート連盟が主催する国際大会を1回、そして、国内の大会を14回、誘致することを目指していますが、このうち国際大会の開催は消波装置が使えない間、難しくなりました。

都の担当者は「国内の大会を開催してもらうため、ボートの競技団体と話し合いを続けているほか、スポーツ施設以外でのさまざまな利活用策も検討している」と話しています。

都は「海の森水上競技場の」年間の収支について、現時点でおよそ1億5800万円の赤字となると見込んでいます。

施設の収入は、大会開催にともなう施設の利用料や、併設されている宿泊施設の使用料などが大きな柱となっていて、今後の収支面を考えても、大会の誘致ができるかどうかはポイントになります。


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