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オリンピック 柔道 ウルフアロン “体との対話”徹底し頂点に

2021-07-30 午前 11:17

  

東京オリンピック、29日に行われた柔道男子100キロ級で、日本勢5大会ぶりの金メダルを獲得したウルフアロン選手。金メダルを獲得した要因は、ケガをしたひざのケアや体重調整など、自分の体と徹底して対話し、向き合ったことでした。

“減量”との戦い


「最高では体重118キロくらいまでいったことがある」
100キロ級で戦うウルフ選手は長い間、減量に苦しんできました。
2017年に世界選手権を制したウルフ選手は、その後、左ひざを痛め、稽古の量が減っていました。2018年の春、世界選手権に向けた日本代表の合宿が公開された際には、井上康生監督が「皆さんは、あの体を見てどう思いますか?」とあえて報道陣の前で苦言を呈すほど、明らかに絞りきれていない体でした。
この年は、大会直前までほかのメンバーと別メニューでの調整になるなど減量に苦しみ、世界選手権でのメダルを逃しました。
2019の4月には、体重無差別で行われる全日本選手権で優勝。
この大会には110キロを上回る体重で出場し「減量がなく力が発揮できた」と率直に話しました。


体の負担 最小限に抑えて


ウルフ選手は、100キロ級の戦いで最高のパフォーマンスを発揮するために、いかに「体の負担を最小限に抑えて減量していくか」が、1つ目のテーマとなりました。
まず取り組んだのは自炊です。メニューを考えて料理を作ることで、食事の量と内容を自然と把握できるようになります。もともと料理は得意で、大きな魚をひとりでさばくこともできるということです。
「魚や鶏肉などをなんでもバランスよく。自分で作れば量もコントロールできる」
さらに減量の方法も変えました。これまでは大会前の2週間で一気に体重を落としていましたが、オリンピックに向けては、体の負担を考慮して、1か月間じっくりと時間をかけました。
本番の1か月前、国立スポーツ科学センターに入り、専門家にカロリー計算をしてもらって食事制限をするとともに、有酸素運動を多くするなど消費カロリーも計算しながら減量をしました。


ひざとの対話


2つ目は、ケガをしたひざとの対話です。
2018年には左ひざ、2019年には右ひざも手術したウルフ選手。オリンピックに向けて、両ひざとしっかり向き合わなければならなかったのです。
特に右ひざについては「去年7月にオリンピックが開催されていたら、ひざの状態は相当悪かった。僕にとっては延期はプラスになった」と話すとおり、回復が遅れ、実戦への復帰まで1年4か月かかりました。
帰国後、2週間の待機期間が必要となる国際合宿への参加も回避し、トレーナーなどからひざのケアを受ける時間を優先しました。
非常に激しい稽古を1週間続けたあとは、その後の1週間でひざのケアを重視しました。徹底した体重調整に、ひざのケアをしながら、本番当日にすべてをかけたウルフ選手。井上監督が「このオリンピックに勝つための準備を周到にやってきた。その力がすべて出た試合」とたたえたように、畳の上では全くひざのケガの影響を感じさせない技のキレを見せた、最高のパフォーマンスでした。


試合後に明かす 実は…


試合後、ウルフ選手が驚かせました。
「両ひざの半月板がすり切れて最近は痛みが増したため、試合前日に痛み止めを打った」
このような状態だったにもかかわらず、ウルフ選手は笑顔を交えて話しました。
「リハビリでひざの動かし方、力の入れ方はやってきたので大丈夫だった。試合ではアドレナリンも出て動きました」
試合当日を見据えて、みずからの体と徹底して向き合いながら一日一日を過ごしてきたウルフ選手が、ついに金メダルをもぎ取りました。


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