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柔道 永瀬 逆境を努力で乗り越え金

2021-07-28 午前 0:23

  

柔道男子は4日連続の金メダル。81キロ級の永瀬貴規選手は前回大会での無念の思い、その後のヒザの大けがを努力で乗り越え、悲願を達成しました。


初めてオリンピックに出場した前回のリオデジャネイロ大会、永瀬選手は前の年の世界チャンピオンとして臨み優勝候補でした。
しかし、結果は銅メダル。メダルを確保しても「悔しさしかなった」と振り返ります。

そこから目指すものはただ1つ、『東京オリンピックの金メダル』に据えました。
ところが、2017年の世界選手権で右ひざのじん帯を損傷する大けがをします。ここから治療と単調なメニューが続く苦しいリハビリが始まり、1年間にわたって試合に出ることができませんでした。

復帰後も国内での大会復帰2戦目となった講道館杯では初戦敗退。

「復帰してから試合で勝てない時期や練習でも思うような動き、パフォーマンスができない時間が長かった」

それでも永瀬選手は「毎日少しずつできることを増やしていけばいい」と決して諦めませんでした。さらに「もう前の自分には戻れない。戻るのではなく新しい柔道を探す」と割り切ったのです。

腹が決まったあたりから試合でも結果が出始めました。
おととしの夏以降、国際大会を4大会連続で制して代表争いを大逆転。この年の世界選手権に出場しなかった選手ではただ1人オリンピックの代表に選ばれました。

長い手足を生かした足技で相手を投げ、一本を狙う柔道が持ち味だった永瀬選手が、ヒザをけがして以降は戦略も見直しました。「粘り強く戦うこと」をテーマに相手の技を受け、時には相手への指導狙いの柔道もいとわなかったのです。

オリンピックで金メダルを取るためにひたすら勝ちにこだわりました。5年かけてたどりついた2回目のオリンピックは、まさに大会前に語っていたとおりの柔道でした。



5試合中、実に4試合が延長戦。初戦は延長に入り、互いに指導2つで並んだ場面で、相手に3つ目の指導が与えられての勝利。その後も、厳しい組み手争い、相手の力任せの技を必死にこらえました。

延長で一瞬のチャンスを生かしてポイントを奪って勝利する試合が続きました。
しかし、この厳しい戦いも永瀬選手は覚悟の上でした。

「ワンチャンスしかない、そのワンチャンスをものにするしかないと思っていた。稽古でも長期戦を想定して準備してきたので」

粘り強く勝ち上がってモラエイ選手と対戦した決勝。永瀬選手は接近戦でパワーを使って勝負してくる相手に、粘りながら距離を取って遠い距離から足を出してけん制します。

この試合も延長に入って1分30秒過ぎでした。長い足を使った足車で技あり。
得意の足技でワンチャンスをものにしました。



5年越しの思いで獲得した金メダルに永瀬選手は「けがだったりつらいこともたくさん経験したので精神力も成長することができた。今までやってきたことがむだじゃなく報われた」と胸を張って答えました。

男子日本代表の井上康生監督も「それぞれのメンバーがつらいことも経験しているが永瀬はこれほどの努力をできるものがいるのかと思うくらい、1つ1つ寡黙に積み上げてきた。努力は人を裏切らないと改めて感じさせた」とたたえました。


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