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オリンピック体操 内村航平 鉄棒で落下 決勝進出ならず

2021-07-24 午後 11:28

  

東京オリンピック、体操は男子予選が行われ、種目別の鉄棒で金メダルの期待がかかった内村航平選手は、鉄棒で落下して、決勝進出はなりませんでした。


内村選手は、オリンピックで2連覇した6種目で争う個人総合から、今大会は種目別の鉄棒にしぼって出場し、3大会連続の金メダルを目指していました。

24日行われた予選では、鉄棒でH難度の大技「ブレットシュナイダー」など3つの手放し技を決めましたが、その後の演技で落下しました。

内村選手は再び演技を再開したものの、得点は13.866にとどまりました。

種目別の決勝には上位8人が進めますが、内村選手は演技を終えた時点で15位にとどまり、決勝に進めませんでした。


内村「もう僕は主役じゃない」


内村選手は「代表になってから強い気持ちでやってきたつもりだったが、“つもり”だった。やってしまったことは取り返しがつかない。現実を受け止めて後輩たちの試合を見ていたが、若干、心ここにあらずという感じだった」と心境を語りました。

また、団体の代表メンバーの演技について「彼らの演技から気持ちが伝わってきた。決勝は心配はいらないと思う」と期待していました。

そのうえで「もう僕は主役じゃない。団体の4人と種目別の亀山選手が残っているので、彼らが主役。オリンピックは僕は2連覇しているけれど、過去のことだし、彼らたちが超えていかなければいけない。それをきょう、見させてもらった」と話していました。


「人生最大の目標」に苦難の道 早すぎる予選敗退


4大会連続のオリンピック出場だった内村選手は「人生最大の目標」と話していた東京オリンピックの男子予選、鉄棒の演技で落下して決勝に進めず、大会2日目で姿を消すことになりました。

内村選手は6種目で争う個人総合で2大会連続の金メダルを獲得したリオデジャネイロオリンピックのあと、日本で開催される東京オリンピックを「人生最大の目標だ」と語っていました。

競技生活の集大成として目指しましたが、その後は苦難の道をたどりました。

2017年の世界選手権で跳馬で足首を痛めて棄権して、大会6連覇が途絶えると、それまで圧倒的な演技を支えてきた肉体は悲鳴をあげはじめました。

2019年の全日本選手権は肩の痛みで本来の演技ができず、予選敗退に終わりました。

その大会のあと、内村選手は「東京オリンピックは夢物語だ」と下を向きましたが、1つ年下の佐藤寛朗コーチとの二人三脚でけがの治療やリハビリを続けながら、4回目のオリンピック出場を目指して練習を積みました。

そして、去年2月、かねてから「体操は6種目やってこそ」と個人総合に大きなプライドを持っていた内村選手は「もう自分だけの夢ではない。オリンピックに出るためなら自分のプライドはいらない」と、比較的体の痛みが少ない鉄棒に絞って、種目別での出場にかけることを決めました。

その後は、世界でも数人しかできないH難度の大技「ブレットシュナイダー」を演技に組み込むなど、鉄棒に専念したことでさらに磨きをかけて、ことし6月まで行われた代表選考会では、すべて15点台の圧倒的な得点をマークして、4回目のオリンピック出場を決めていました。

その代表選考会では、どんな高得点を出しても「満足な演技ができない」と、着地したあとに不満そうな表情を見せるなど、さらに高みを目指す姿勢を見せていました。

さらに先月代表を決めたあとは、東京オリンピックについて「生まれた国で行われる大会で1年延期したオリンピック。特別としか言いようがない」と自身の胸にある特別な思いを口にしていました。

そして、オリンピックの目標について「とにかく笑っていたい。鉄棒の演技の最後に着地したあと、笑っていたいです」と、改めて自身が満足のいく演技をすることを目指していました。


時が止まった瞬間


一瞬の出来事に、選手やコーチの声が響いていた競技会場が静寂に包まれました。
内村航平選手が唯一、オリンピックで出場する鉄棒の演技で落下したのです。

大会2日目に行われた体操の男子予選。
鉄棒は日本にとって2つめの種目で、内村選手は日本選手5人の最後に登場しました。青と白のユニフォームを身にまとい、演技の前の身振り手振りのイメージトレーニング。表情はほとんどいつもと変わりませんでした。

「人生最大の目標」
「東京オリンピックだけはあきらめられない」
「自分のプライドを捨ててもそこにかける価値がある」

かねてより内村選手が語っていた夢の舞台。他の種目で演技をしていた選手たちもすでに演技を終えており、無観客ではあったが、選手やスタッフ、報道陣のすべての視線が内村選手に注がれました。
重圧のかかる多くの場面を乗り越えてきた、その実績と経験。
圧倒的な演技で、この予選を通過すると思われていました。

最初の手放し技、H難度の大技、「ブレットシュナイダー」。去年、個人総合から種目別の鉄棒に専念して本格的に取り入れた大技をこれまでの国内大会のようにほぼ完璧に決めます。
続くG難度の「カッシーナ」とE難度の「コールマン」。これまで内村選手の鉄棒の得点を支えてきた手放し技も成功させ、演技の山場を超えたはずでした。

しかし続く、ひねり技。握っていたはずの鉄棒のバーが、するりと手を抜けていきました。

「何が起きたかわからなかった、最初は。バーがなかった」

気がつくと下に敷かれたマットに横たわっていました。一瞬の間を置いて、悟ったといいます。

「落ちたんだ」

日本の選手たちが信じられないような表情を浮かべ、報道陣はかたまり、ほかの国の選手たちも口に手を当てたり頭を抱えたりしていました。
時が止まったような瞬間でした。
立ち上がって、演技を再開し、着地も決めましたが、すぐに鉄棒から離れました。

「人生で最大の目標にしてはあっけなさすぎた。僕の体操人生のオリンピックの項目に、東京は入っていなかったんだと思う。リオまでだったんじゃないかな」

そう語る表情は、寂しそうに見えました。

なぜ落ちたのか-
「わからない。でも、それがわかるまでは、やめられない」

ともに同じグループで演技をした団体の代表メンバー4人、オリンピック初出場の若い後輩たちは6種目をこなし、金メダルを争う中国やロシアオリンピック委員会を上回りました。自分のことより、後輩たちの話をする方が口がなめらかでしたた。

「過去に3大会に出て、団体の予選を1位で通過したことがないので、それを初出場でやってのけたというのは本当にすごいこと。彼らの演技から気持ちが伝わってきた。これからの体操界を引っ張っていく存在はきょう生まれた。自分はお役御免」

これまで日本に数々の栄光をもたらしてきた希代のアスリートは、東京オリンピックを終えました。それでもその大きな背中を追い、受け継ごうとする若手がいます。
その1人、団体の軸となった19歳の橋本大輝選手は、個人総合の得点で世界選手権の金メダリストを上回り、鉄棒でも高得点を上げました。そして、試合後、力強い表情で話しました。

「誰よりも練習してきて誰よりも調整している内村さんを僕は知っている。これから団体と個人総合で優勝して、最後に僕が内村さんの代わりに鉄棒で優勝して、内村さんに金メダルをかけたい」

体操ニッポン。強く、美しい、その伝統は受け継がれていきます。


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