栃木 那須町 8人死亡雪崩事故刑事裁判 30日判決言い渡し

7年前、栃木県那須町で部活動として行われた登山の訓練中に雪崩に巻き込まれ高校生など8人が死亡した事故で、業務上過失致死傷の罪に問われている教諭ら3人に対し30日、宇都宮地方裁判所で判決が言い渡されます。
検察が禁錮4年を求刑したのに対し弁護側は「雪崩は予見できなかった」などと無罪を主張していて裁判所の判断が注目されます。

2017年3月、那須町の茶臼岳で高校の山岳部が集まって歩行訓練をしていたところ雪崩に巻き込まれ、生徒7人と教員1人が死亡し多くの生徒がけがをしました。
この事故で当時、生徒の引率などにあたった教諭の猪瀬修一被告(57)と菅又久雄被告(55)、元教諭の渡辺浩典被告(61)の3人が業務上過失致死傷の罪に問われています。
裁判では3人が当日の朝の時点で雪崩の発生を予見できたかが争点となり、検察が冬山登山の知識や経験があり予見できたと主張して禁錮4年を求刑したのに対し、弁護側は「必要な情報は収集し訓練についても安全な範囲を定めていた。雪崩は予見できなかった」として無罪を主張していました。
判決は宇都宮地方裁判所で30日午後1時半から言い渡される予定で高校の部活動中に起きた雪崩事故に対する教諭らの責任を裁判所がどう判断するか注目されます。

事故当時、高校の山岳部員として訓練に参加し事故に巻き込まれた元生徒の男性は「事故は、起きてからでは取り返しがつかない。命を守るためにできることを尽くしてほしい」と訴えます。
仙台市の大学院生、三輪浦淳和さん(23)は事故当時、県立大田原高校1年生の山岳部員で、当日は生徒と教員あわせて14人のグループの一員として登山の訓練に参加し雪崩に巻き込まれました。
三輪浦さんは太ももの筋肉を断裂するなどの重傷を負いながらも救助され一命を取り留めましたが、同級生や先輩など、あわせて8人が亡くなりました。
三輪浦さんは山岳部での活動について、「部活の同級生や先輩は友だち以上の仲間でお互いを気にかけ合って登っていました。つらいけれど楽しく、仲間との思い出は宝物です」と話します。
また事故直後の心境については、「山に登る人間は互いの命を守る責任があると思っていましたが、それを果たすことができず、後悔と反省がありました」と振り返っています。
一方、発生から7年という時間がたち、心境には変化もあったということです。
自分が成人を迎えて大人になるにつれて「子どもは大人が守るべき存在」という考えを持つようになったと言い、「当時の自分と同年代の子どもを見ると、『守ってあげなきゃ』と思うようになりました。大人は子どもに対する責任があり、守るためにベストを尽くすべきだという感覚が分かるようになりました」と話していました。
三輪浦さんは毎年命日に事故現場を訪れて8人の追悼を行っているほか、事故で犠牲になる人を減らしたいと、雪崩事故の防止に取り組む団体で講演会の運営などにも携わっています。
三輪浦さんは同じような事故を繰り返さないために今後も自身の経験や事故防止について伝え続けていきたいと考えていて、「発生から時間がたつと風化して忘れられていってしまいますが、事故は起きてからでは取り返しがつきません。命を守るために事前にできることを尽くして、後悔がないようにしてほしい」と話していました。