去年の「落とし物」過去最多 犬は1万匹超 現金228億円超

去年1年間に、全国の警察に届けられた「落とし物」の数は、およそ2979万点と、これまでで最も多くなったことがわかりました。
警察庁は新型コロナ対策の行動制限が去年、解除されたことや、電化製品の小型化が進んでいることなどが、落とし物の増加の背景にあるのではないかとみています。

警察庁によりますと、去年、全国の警察に届けられた「落とし物」の数は2978万7068点で、おととしをおよそ315万点上回り、現在の形で統計を取り始めた1971年以降で最も多くなりました。
警察庁は、新型コロナ対策の行動制限が去年5月に解除され、人の流れが活発化したことなどが、前年からの大幅な増加につながったとみています。
これまでで最多だったのは、新型コロナの拡大が本格化する前年、2019年のおよそ2975万点でしたが、なぜ、落とし物の数が増加傾向にあるのか。
警察庁によりますと最近はワイヤレスイヤホンや携帯用扇風機など、小型の電化製品の落とし物が特に増えています。
また、「エコバッグ」や「加熱式たばこ」、「モバイルバッテリー」などの落とし物も増えているということです。
警察庁は、小型化した新たな商品の普及で人々が携帯するモノが増え、落とし物の増加につながっているのではないかと分析していて、所持品の管理に注意するとともに、もし落としてしまった場合には、なるべく早く遺失届を出してほしいと呼びかけています。

去年警察に届けられた「落とし物」のうち、『現金』は228億4568万8596円でこちらも過去最多になりました。
また、去年のうちに持ち主に返還された現金の落とし物は、前年に届けられたものも含め、157億8009万4242円で、保管期間の3か月の間に持ち主が見つからず、拾った人のものになったのは、32億5330万2497円でした。
また、持ち主が見つからず、拾った人も受け取りを辞退するなどして都道府県の歳入となったのは、34億699万6217円でした。
落とし物として警察に届けられた228億円を自治体の予算と比較すると、人口およそ4万3000人の北海道北斗市の今年度の一般会計予算とほぼ同じ金額になります。
キャッシュレス決済が急速に普及するなか、現金の落とし物が過去最多となったことについて、警察庁は「国民の間に、現金を持ち歩きたいという心理が根強いことや、キャッシュレス決済の普及によって、現金を使用する機会が減り、財布の中に現金が残ったままであることなどが一因として推察される」としています。

落とし物のなかには「動物」も含まれていて、警察が対応に苦慮しているケースもあります。
警察庁によりますと、去年、落とし物として全国の警察に届けられた動物は2万5535匹でした。
「犬」が1万2722匹、「猫」が4382匹、鳥やカメなど「その他」が8431匹でした。
ペットとして飼われていたとみられる動物も多くいて、警察は、遺失届や首輪、マイクロチップなどをもとに飼い主を捜しますが、見つからない場合、最長で2週間程度まで、警察署の中で飼育します。
ことし3月には、都内の警察署に「フクロモモンガ」が落とし物として届けられ、警察官がインターネットで生態を調べながらエサを与えたり、新聞紙で隠れ家を作ったり、世話に追われていました。
担当していた警察官は「飼い主のもとに戻ることが一番幸せだと思いながら、世話をしています」と話していました。
落とし物として届けられた動物たちは、警察署で2週間程度飼育したあと、動物愛護センターや愛護団体、愛好家の人たちのもとに預けられます。
ただ「落とし物」としては、3か月の保管期間があり、その段階で拾った人が希望すれば、拾った人に引き渡し、希望しない場合は動物愛護センターや愛護団体側に引き取りを依頼しますが、動物の状態や種類によっては難しいケースもあります。
こうした場合、やむをえず、警察官や職員が、自宅で飼うことになるケースも多いということです。
警視庁遺失物センターの荘司春海所長は「生き物なので扱いが難しいですが、試行錯誤しながら保管しています。飼うのであれば、大切に扱ってもらい、最後までしっかり面倒を見てほしいです」と話していました。

落とし物をした場合の「遺失届」は、警察署や交番で提出できるほか、一部の都道府県では、オンラインで提出できるシステムの運用も始まっています。
警察庁は膨大な数の落とし物のなかから捜しやすくするための遺失届の書き方として、落とした日時や場所はあまり幅を持たせず、なるべく思い出し、特定してから遺失届を書くこと、キャッシュカードなど、落とし主の名前が記載されている物が含まれている場合は、記入すること、色や形、絵柄や飾りなど、固有の特徴を書いておくことも重要だとしています。