東京 北区 資材や物価の高騰で複合文化施設の改修計画見直し

首都圏各地で相次ぐ再開発計画に物価などの高騰が深刻な影響を及ぼしています。
東京・北区は、王子駅前の複合文化施設で来年から予定されていた大規模改修について、当初より、2倍近くに費用が増える見通しとなったとして、計画を見直すと発表しました。

これは、北区の山田加奈子区長が25日開かれた定例会見で明らかにしました。
王子駅前の複合文化施設「北とぴあ」は、平成2年にオープンした、ホールや会議室などを備える17階建ての複合施設ですが、老朽化が進み、来年度から2年間休館して、大規模な改修を行う予定でした。
しかし、資材や物価の高騰の影響で、当初100億円程度と見込んでいた改修事業費が、2倍近くの190億円に増える見通しとなったことから、計画を見直すことにしました。
すでに、事業者とは4億4000万円余りの設計業務の委託契約を結んでいるため、この段階で中止することは異例だということですが、山田区長は「このまま進めることの損失の方が大きいと判断した。赤羽や十条など、これから多くの再開発も予定されており、なにがベストなのかをいったん立ち止まって考えたい」と話していました。
区は、計画をいったん白紙に戻して、電気設備や配管など、施設の維持に必要な修繕を行いながら、2年ほどかけて、改修内容の見直しやコスト削減を図る方法などを検討し、新たな計画をまとめるとしています。

計画の見直しについて、趣味の活動で定期的に施設を利用している女性は「大きな金額で驚きました。みんなの税金ですから、見直しはやむを得ないのではないでしょうか」と話していました。
一方、職場が近くにあり、たまに施設を利用しているという男性は「物価もあがっているので改修費用が高くなるのもしかたないのではないか」と話していました。

建築費の高騰により工事計画を大きく変更せざるをえなかった施設はほかにもあります。
東京・五反田の大型複合施設、「TOCビル」は建設から50年以上が経ったことなどから3年前、地下3階、地上30階建ての高層ビルに建て替える計画を公表し、ことし3月にビルが閉館しました。
しかし、建築費の高騰やビルの賃貸市場の状況を踏まえて、より収益が得られるよう当初の計画を見直すことになりました。
建て替えの着工時期は令和15年ごろを想定していて、一定の期間がかかることから閉館しているビルはことし9月頃に営業を再開する予定だということです。

ゼネコンなどで作る「日本建設業連合会」は、資材や人件費の上昇について状況をデータでまとめて公表していて、工事の発注者に価格への理解を求めています。
金井甲専務理事は「3年前から資材がこれまでになく高騰し、高止まりが続いている。人件費については、賃上げに加えてことし4月からの労働時間の規制強化のほか、担い手不足もあって今後も上昇しそうだ。いまの状況だとそう簡単に工事費が下がる状況にないと考えている」と話していました。