「合計特殊出生率」都市部で低く 全国ワースト7位の豊島区は

女性1人が一生に出産する子どもの数を示した出生率の5年間の全国平均は1.33でした。
特に東京23区や政令指定都市などの都市部で低い傾向が続いていて、専門家は「都市部は独身者が多く出生率は低くなりやすい。結婚・出産を支援する環境づくりが重要だ」と話しています。

女性1人が一生に出産する子どもの数を示した「合計特殊出生率」について、厚生労働省はおととしまでの5年間の平均値を調べました。
全国平均は1.33で、前回の調査よりも0.1ポイント低くなりました。
市区町村別に調べたところ、最も高かったのは、鹿児島県徳之島町で2.25、次いで鹿児島県天城町が2.24、沖縄県宜野座村が2.20で、上位20の市区町村のすべてを九州と沖縄の自治体が占めました。
一方、最も低かったのは、京都市東山区で0.76、次いで大阪市浪速区と京都市上京区がともに0.80で、下位20の市区町村の8割を政令指定都市と東京23区が占め都市部での出生率が低い傾向が続いていることがわかりました。
東京23区では東京・豊島区が0.89と最も低く全国でも7番目に低くなりました。
人口問題に詳しい日本総合研究所の藤波匠上席主任研究員は「都市部は結婚や出産が遅い傾向があり独身者が多いので出生率は低くなりやすい。若者は経済的に不安な人も多いので、全国どこに住んでいても一定の支援が受けられて結婚・出産に前向きになれる環境を作っていくことが重要だ」と話しています。

前回0.94と全国で6番目に出生率が低かった東京・豊島区。
今回、順位を1つ上げたものの、0.89と0.05ポイント低くなりました。
区の担当者は「出生率の向上にはさまざまな要因がある。引き続き、希望する人が産み育てやすい豊島区を目指したい」としています。
豊島区では2014年に民間の研究グループが発表した消滅の可能性がある都市に東京23区で唯一、挙げられたことを受けて子育てしやすいまちづくりを政策の柱にしてきました。
特に、保育所の整備に力を入れてきて、2017年度以降は「待機児童ゼロ」をほぼ達成。
5年前からは子どもを預けていない人でも園の行事への参加や離乳食などの相談ができる「マイ保育所制度」を実施しています。
区内にある園の園長は「子育て中はちょっとしたことでも不安になりがちですが、徒歩圏内ですぐに相談できる場所として広く活用してもらっています」と話していました。
さらに、ことし2月からは生後4か月から11か月までの赤ちゃんのいる世帯を支援員が毎月訪問し、困りごとを聞き取ったり子育ての情報を提供したりする取り組みを始めました。
訪問後には育児用品に使える電子クーポンを1回につき3000円、最大で8回分、2万4000円を配布していて対象者の8割が利用の登録をしています。
今週、訪問を受けた生後4か月の赤ちゃんの母親は、子どもの発達や母乳のケアのしかたなどについて支援員に相談していました。
母親は「夫の育休が終わり子どもと2人きりのことが多かったので、心配に思っていることを聞いてもらえるのはありがたいです」と話していました。
出生率が低下したことについて豊島区子育て支援課の安達絵美子課長は「出生率の向上にはさまざまな要因があり、何かをすればすぐに上がるというものではないと考えている。子育て施策だけではなくさまざまな角度から取り組みを進めて、希望する人が産み育てやすい豊島区を目指したい」と話しています。

豊島区の高際みゆき区長は、19日の定例会見で出生率が前回の調査よりも低くなったことについて、「産みたいと思う人が産める環境をつくることは本当に重要だと取り組みを進めるなかで感じていて、少し期待もしていたので、残念だ」と述べました。
そのうえで、「豊島区は“女性と子どもにやさしい街”を標ぼうしてきたが、これからもしっかりと頑張りたい。そのために、人口動態などの分析を進め、次の手を打つための検討を重ねたい」と話していました。