小中学校タブレット端末 修理費6億円超 自治体が負担 埼玉

小中学生に1人1台のタブレット端末などの整備が進められるなか、NHKが、埼玉県の自治体を調べたところ、破損した端末が昨年度1万5000台余りにのぼり、修理などに必要な費用が6億円を超えることがわかりました。
こうした費用については、国からの補助金はなく、自治体にとって財政負担が課題となっています。

教育のデジタル化に対応するため国は全国の小中学生に1人1台のタブレット端末や学習用のパソコンを配備する「GIGAスクール構想」を進めています。
NHKが埼玉県の人口10万人以上の21の自治体に、昨年度の端末の使用状況について、アンケート調査したところ、回答があった20の市で1万5000台余りの端末が破損するなどしていたことが分かりました。
自治体が修理などに必要な費用は、少なくとも6億円を超えていました。
内訳をみますと、端末の修理費用が2億1000万円余り、保険費用が3億9000万円余りとなっています。
アンケートに回答した自治体からは「日常的に持ち歩いて使う以上、故障は避けられない」とか、「端末の保守は全国的な問題なので、国に適切に対応してほしい」といった意見が寄せられました。
国は、端末の更新費用や、故障した場合の予備機の購入費用について、補正予算を計上しましたが、端末の修理や、故障に備えるための保険費用は対象になっていないため、自治体にとって財政負担が課題となっています。

教育のICT化を進めている埼玉県久喜市では3年前、小中学校に1万台余りのタブレット型端末を導入しました。
このうち、鷲宮中学校では国語や数学だけでなく美術や体育などの授業でも、タブレット端末を使うほか、自宅での家庭学習にも活用しています。
1年生の男子生徒は「端末を使う授業が多いので楽しいです。人によってまとめ方が違っていて個性があって良いと思う」と話していました。
一方で、液晶画面が割れるなど破損も相次いでいて、市教育委員会によりますとことし2月1日の時点で、破損のため修理している端末は、およそ450台に上ったということです。
修理費用は昨年度までの3年間で、7390万円余りとなり、すべてを市が負担したということです。
端末が破損したという中学2年の女子生徒は「移動教室でタブレット端末を持ち歩いている時に落として画面が割れてしまいました。修理費も高いと聞くので大切に使わないといけないと思っています」と話していました。
市教育委員会のGIGAスクール推進室、山本純室長は「タブレット端末の活用が進み、毎日持ち帰りもしているので一定数の破損がでるのはもちろん承知していました。ただ、修理の台数が増えてきているので、子どもたちの学びをとめないよう、対策をとりたい」と話していました。

タブレット端末の破損が相次ぐなかで、修理業者も対応に追われています。
久喜市にある修理会社は、ことし1月中旬、市からおよそ400台の修理を受注しました。
原因は、ひび割れなど「液晶パネルの破損」が最も多く全体のおよそ60%で、次いで「ネジの外れ」だということです。
この店では、スタッフが足りず茨城県の本社からも動員して2月末の納期に間に合わせたということです。
修理会社「エイド」の山下浩平社長は「修理する台数がかなり増えたという印象がある。使用年数がたつにつれて故障する端末なども増えることが予想され、令和6年度、7年度には修理のピークがくるのではないか」と話していました。

教育のICT化に詳しく、国の委員なども務める東京学芸大学の高橋純教授は「導入時は、新型コロナによる影響もあり、端末の整備に必死で故障まで目が向かなかった部分もあったのではないか。情報化が遅れていると言われる日本ゆえの課題が、まさにいま、あらわになっていると思う」と指摘しました。
一方、教育行政に詳しい千葉工業大学の福嶋尚子准教授は「財源の確保や条件整備をどこまで自治体が担う必要があるかを検証しないまま、財政的な負担が生じる形になっている印象だ。配備した端末を、きちんと活用しようとすれば故障はやむをえず、費用負担のあり方を改めて練り直す必要がある」と指摘しています。