第170回芥川・直木賞の贈呈式

第170回芥川賞と直木賞の贈呈式が22日東京都内で行われ、受賞した3人の作家が喜びを語りました。

第170回芥川賞と直木賞は、先月の選考会で芥川賞に九段理江さんの「東京都同情塔」が、直木賞に河崎秋子さんの「ともぐい」と、万城目学さんの「八月の御所グラウンド」の2作が選ばれました。
22日は東京都内で賞の贈呈式が開かれ、受賞した3人に記念品と賞金の目録が贈られたあと、それぞれあいさつしました。
このうち、芥川賞を受賞した九段さんは、まず、「AIを駆使して作った」と明かした選考会のあとの記者会見について、「発言が否定的なイメージとして騒がせた」と振り返り、「家族や友人には心労をかけてしまい、私の軽率な発言で心配をおかけして申し訳ありません。私はこのようにピンピンしているので心配されないようお願いします」と語り場を和ませました。
そのうえで、「人間とAIの違いについて意見を聞かれますが、人間には、データが切り捨てる偶然や遊びを楽しむ余裕があり、偶然の出会いによる創造性こそがAIと人間の違いですと申し上げてきました。きょうの出会いの場を経て、またどなたにも想像できないような作品を書いていけたらと思っています」と思いを語りました。
また、直木賞を受賞した河崎さんは、酪農を営む実家で飼っている羊のお産に立ち会っていることに触れたうえで、「母親の羊が子どもをうまく生めず母や子が死んでしまうことは、本当につらいことだが現実としてある。誰もことばにせず知覚もされずに死んでいった生き物、または無事に生まれた生き物のことを残してやりたいという気持ちが自分の中で重なって、筆をとったのだと思う」と作品を執筆したきっかけを振り返りました。
そのうえで、「勉強しないといけないこと、技巧を重ねないといけないことはまだまだあるが生き物の命を書きたい、これからも書いていきたいという志は変わらないと思います」と話していました。
同じく直木賞を受賞した万城目さんは、6回目の候補で受賞となり、「文学賞と無縁のまま過ごしてきて今に至り、このような場に呼んでいただき半信半疑のところがあります。選考会のあとに選考委員とあいさつしたとき、成績の悪いやつが職員室に呼ばれるようにひやひやしながら行ったのですが、皆さん笑顔で優しくて、そして十分に話し合ったという満足感が伝わってきました。自分の作品がどう読まれたかというよりも、選考委員がやりきって選ばれたということが伝わってきて、ちゃんと選ばれたのだと感じました」とユーモアを交えながら語っていました。