国立劇場建て替え 入札不調で見通し立たず 実演家危機感訴え

建て替えのために去年閉場した東京の国立劇場が、入札の不調などで再開時期の見通しが立たなくなっていることについて伝統芸能の実演家たちが会見を開き、劇場の空白期間が長引けば、文化の存続に関わると危機感を訴えました。

国立劇場は老朽化による建て替えのため去年10月末に閉場しましたが、二度にわたり入札の不調などが続き、当初5年後の2029年秋としていた劇場の再開時期の見通しが立たなくなっています。
これを受けて、歌舞伎や文楽、日本舞踊など伝統芸能の各ジャンルの実演家たち10人が16日会見を開き、劇場の空白期間が長引けば文化の存続に関わるとして、早期の劇場再開を訴えました。
このうち、歌舞伎俳優の中村時蔵さんは「大変ゆゆしき問題だ」としたうえで「国立劇場が長く取り組んできた歌舞伎の通し狂言や復活狂言などを再開するためにも次は入札がうまくいってほしい」と訴えました。
また、国立劇場を発表の拠点としてきた日本舞踊の西川箕乃助さんは「今後10年もこの状態が続けば、発表の場をどこに求めればいいのか。舞踊に関連する仕事でもすでに廃業する流れがあり日本舞踊の危機を感じる」と訴えました。
長唄の杵屋勝四郎さんも「再開までのブランクを考えると長唄の存続や古典芸能ばなれに危機感を感じる。次世代を育てるためにも早く再開してほしい」と訴えました。

国立劇場の建て替えは劇場の建て替えをメインにホテルやオフィスなどの施設をあわせて建てるという民間の資金を活用した再整備事業です。
おととし以来、二度にわたり再整備事業の工事が入札不調などになった理由として、国立劇場は、このところの建設資材の高騰などが背景にあるとしていて、計画の見直しも含めて費用の削減を検討するとしています。
国立劇場再整備本部は「私どもの要求する水準を見直すことも含めて費用の削減を検討するとともに建設市場の動向をきめ細かく把握し、早期に再整備事業の再開を図りたい」とコメントしています。