公立小中学校給食費無償化 多摩11市 新年度実施に向け検討

公立小中学校の学校給食費の無償化を、東京・多摩地域の11の市が新年度の実施に向けて検討していることがわかりました。
東京都が区市町村が支援する場合の半分を負担する方針を示したことを受けた動きですが、これまでのところ各自治体の対応はそれぞれの財政事情などからわかれています。

公立小中学校の学校給食費をめぐっては、物価高騰などを背景に東京の特別区が去年4月以降、相次いで無償化してきましたが、多摩地域の30の市町村は財政負担が大きいなどとしてほとんどの自治体で無償化していません。
市長会と町村会は去年12月、東京都に対し、地域間格差の是正を求め、都は、区市町村が給食費を支援する場合、その半分を負担する費用として239億円を盛り込んだ新年度の当初予算案を先月発表しました。
こうした都の方針を踏まえ、多摩地域の30の市町村に給食費無償化の検討状況などを16日までに聞いたところ、八王子市、府中市、調布市、西東京市、三鷹市、立川市、武蔵野市、青梅市、昭島市、狛江市、福生市の11の市が「実施する方針」、あるいは「前向きに検討している」と回答しました。
このうち地域で最も多い3万8000人の小中学生がいる八王子市は無償化の経費をおよそ20億円と見積もっています。
市は都の支援を受けた場合の半分、10億円を捻出するため、先月の市長選挙で給食費無償化を公約に掲げて当選した新しい市長のもと検討を本格化させています。
この11の市以外にも町田市が第2子以降の無償化を、羽村市が給食費の一部減額を検討しているということです。
また、「未定」と回答したのは10の市と町で、理由については「都から詳しい制度設計が示されていない」などと説明しています。
一方、給食費無償化を「現時点で検討していない」と回答したのは日野市、東大和市、あきる野市、国立市、日の出町の5つの市と町でした。
このうち5900人余りの児童生徒がいるあきる野市は無償化には市の財源から1億5000万円余りが必要と試算していますが、年々経費が増える医療福祉など、行政サービス全体を考えると現時点では負担が大きいとしています。
あきる野市の中嶋博幸市長はおとといの記者会見で「都が半額補助しても毎年、1億円以上の経常経費を費やすのは厳しく少し慎重に考えざるを得ない。高校生の医療費無償化にも財源を投入しており、子育て支援は総合的に考えていかないといけない」と述べました。
多摩地域ではこれまでのところ給食費無償化への対応がわかれる形となっていますが、未定などと回答した自治体も都の支援内容が具体的になるなどすれば、前向きに検討するところも出てくると見られます。
ただ無償化に対応できる自治体とできないところで地域内格差が出るといった声も聞かれています。
東京都は「学校給食のあり方は全国共通の課題であり、本来は国の責任と財源で無償化を進めていくものとして国に働きかけている」と話しています。

公立小中学校の給食費無償化について、八王子市の初宿和夫市長はさきの記者会見で「私の公約でもあり、できるかぎり早く行いたいという思いだ。東京都の半額補助は市としては実施に向けて背中を押してくれるもので非常にありがたく、実施しやすい環境が整った」と述べています。

無償化が難しい自治体からは自治体間でばらつきが出ないよう措置を求める声が上がっています。
国立市は市立の8つの小学校と3つの中学校の児童生徒の給食、あわせておよそ5100人分を毎日、市内1か所の給食センターで調理しています。
経費は若干かかるものの、調味料は自然由来のものを使い食材は地元産にこだわるなど食の安心、安全の確保に力を入れています。
しかし物価高騰などからこの数年、食材にかかる経費は上がり続けているといいます。
献立の品数を減らさないよう努力しているものの、保護者から集める給食費を値上げせざるを得なくなり、4年前におよそ10%引き上げました。
市は新年度、給食費を完全無償化するにはおよそ2億7000万円が必要だと試算していて、都からその半分の補助を受けたとしても財政状況から無償化は難しいとみています。
「くにたち食育推進・給食ステーション」の土方勇所長は「財政力の差によってばらつきが出てしまったり、都からの補助がもらえなくなったりしてしまう状況は避けてもらいたい」と話していました。