“造船現場でアスベスト吸い込み肺がんに”元労働者が国を提訴

かつて船を建造する現場で働いた千葉県の男性が、国の対策が不十分なためにアスベストを吸い込んで肺がんになったとして国に損害賠償を求める訴えを起こしました。
アスベストの被害をめぐっては建設現場で働く人などを対象にした救済制度があるため、原告側は造船業の労働者にも同様の救済をしてほしいと訴えています。

14日東京地方裁判所に訴えを起こしたのは、1971年から千葉県にある造船所で働いていた小杉山辰哉さん(71)です。
訴状などによりますと、小杉山さんは造船の現場でおよそ20年間、マスク着用などの指導がないなかで断熱材を扱う業務などを行い、退職後の2019年に肺がんを発症し、労災の認定を受けました。
小杉山さんと弁護団は、国の対策が不十分なためアスベストを吸い込んだとして、国に1430万円の損害賠償を求めています。
アスベストの被害をめぐっては3年前、建設現場で働く人などの集団訴訟で最高裁判所が国などの責任を認める判決を言い渡し、これをきっかけに最大で1300万円の給付金を支給する制度が設けられましたが、造船業は対象ではありません。
このため造船業の労働者が建設業と同様の救済を求めて国を訴える裁判が大阪や札幌で起こされていて、小杉山さんの弁護団によりますと関東での提訴は初めてとみられるということです。
小杉山さんは提訴後に開いた会見で、「肺がんと言われたとき、先が真っ暗になった。国は建設業だけでなく造船業も補償してほしい。中皮腫の治療研究の支援もしてもらいたい」と話しました。
厚生労働省は「訴状が届いていないのでコメントは差し控えます」としています。