PFOS含む消火剤 都所有の30施設で設置確認 交換進める

化学物質の「PFAS」をめぐり都が所有する駐車場や事務所ビルなどにある消火剤について都が調べたところ、30の施設で有害性が指摘される物質を含むものが設置されていたことが分かりました。

「PFAS」は、有機フッ素化合物の総称で、「PFOS」や「PFOA」など一部の物質は水や油をはじく特性などからかつて泡消火剤など幅広い用途に使われていましたが有害性が指摘され、国は水質の暫定的な目標値を設けるなどして規制しています。
こうしたなか、去年12月、町田市内の立体駐車場に設置されていた消火設備を何者かが起動し、PFOSを含む泡消火剤が近くの川に流れ出て、川の水から国の目標値を上回る値が検出されました。
これを受けて都が、都の施設すべてで、PFOSを含む消火剤が設置されているかどうか緊急で調査を行ったところ、都内の駐車場や事務所ビルなど、あわせて30の施設で設置されていたことが分かりました。
都は、規制対象の物質を含んでいることが分かった場合、取り替えていましたが、今回の結果を踏まえ、交換を進めています。
また、民間施設でも交換を進めようと、費用の一部を補助するのにおよそ2億3000万円余りを新年度・令和6年度予算案に盛り込んでいます。

東京・町田市では、去年12月、市営の立体駐車場の消火設備が何者かによって起動され、有害性が指摘されているPFOSを含む泡消火剤がまき散らされました。
市によりますと、泡消火剤のなかには、PFOSが8リットルから1.6リットル程度含まれ、洗い流した際などに、排水溝から近くを流れる境川に流れ出たということです。
これを受けて、市が川の水質検査をした結果、下流の2か所で国の暫定的な目標値の1リットルあたり50ナノグラムを大幅に上回る、810ナノグラムと190ナノグラムのPFOSが検出されたということです。
消火設備は、天井にはりめぐらされたパイプを通して上から泡消火剤を放出する仕組みで、火を感知した場合に自動で作動するほか、火事に気付いた人が手で起動できるよう、封のされたレバーも駐車場内に設置されています。
この泡消火剤は、PFOSが規制される前の1980年に駐車場ができた際に設置されたもので、来年度以降の老朽化した駐車場の建て替えにあわせてPFOSを含んでいないものに交換する予定だったということです。
駐車場近くの80代の男性は「近くに工場などがあれば、化学物質の流出があることもわかるが、駐車場なので驚きです。あまり『PFAS』に関する情報がないので、もっと知らせてほしい」と話していました。
50代の女性は「火災の時に必要であるなら、しかたがないところもあるがただ消せばいいというものでもないと思う。何も害のないものがあれば一番いいので、そっちの方がいい」と話していました。
2歳の子どもがいる20代の母親は「川の水に有害物質が含まれていたのが怖い。研究を重ねてもらい、有害なものはなるべく近くからなくしてもらえたらありがたい」と話していました。

PFASの問題に詳しい京都大学大学院の原田浩二准教授は「立体駐車場などに設置されている泡消火剤は古いものだと、PFOSを含んでいるものが数多くあり、それが今も残っている。PFOS自体は劣化しない物質だが、消火設備は劣化してしまうので、老朽化で誤作動などが起きた場合に、PFOSを含んだ泡消火剤が流出するケースが全国各地で報告されている」と指摘しています。
そのうえで、「身近なところにも流出リスクが常にあること、それが場合によっては水源などにも影響しうることは考える必要がある。立体駐車場などでは、規模によって消火設備の設置が義務づけられているが、消火剤をどのように交換するのかという仕組みが十分ではなく、設置当初からずっと置かれている状態になっているものもあるので早くPFOSが出ないものに交換することは喫緊の課題だ」と話していました。