不正輸出めぐるえん罪事件 国と都の控訴に原告側“あきれた”

横浜市の化学機械メーカーの社長ら3人が不正輸出の疑いで逮捕され、その後無実が明らかになったえん罪事件をめぐる民事裁判で、捜査の違法性を認めた東京地方裁判所の判決を不服として国と東京都が控訴したことについて、原告側の社長らが会見し、「あきれた」などと語りました。

不正輸出の疑いで逮捕、起訴され、その後無実が明らかになった横浜市の化学機械メーカー「大川原化工機」の大川原正明社長、島田順司元取締役と、同じく逮捕され、亡くなった相嶋静夫さんの長男は11日、都内で会見を開きました。
東京地方裁判所は先月、大川原社長などへの検察と警視庁の捜査の違法性を認めて国と都にあわせて1億6200万円余りの賠償を命じましたが、国と都は10日、判決を不服として控訴しました。
これについて大川原社長は会見で「やっぱりかとあきれた」と語り、島田元取締役も「がっかりした」と語りました。
相嶋さんの長男も「警察や検察に反省する気持ちがあるのではないかと少しだけ期待していたが、温かみのない対応に落胆している」と話していました。
捜査機関側の控訴を受け、原告側も10日、控訴していて、島田元取締役は「裁判で真相をより明らかにしていただきたい」と述べました。
一方、原告側の高田剛弁護士は1審判決で警視庁の取り調べに違法な点があったと認定されたことに触れ、「2審の審理を待たず、警視庁の内部で検証を行わなければならない。行われないならば、刑事告発することも一つの方向性としてあると思っている」と述べました。

横浜市の化学機械メーカーの社長ら3人が不正輸出の疑いで逮捕され、その後無実が明らかになったえん罪事件で、国と東京都は10日、賠償を命じた東京地方裁判所の判決を不服として控訴しています。
警察庁の露木康浩長官は11日の会見で、「警視庁が通常要求される捜査を怠ったとされた点、原告を誤解させて、供述調書に署名などをさせたとされた点については、これまでの主張と大きく異なり、証拠上受け入れることは難しいということで、上級審の判断を仰ぐことにしたと報告を受けている」と述べました。
そのうえで、「捜査が法と証拠に基づいて、緻密かつ適正に行われなければならないことは言うまでもないことだ。警察庁としても公訴が取り消しになったことについては、真摯に受け止めるべきものであると考えている」と述べ、警視庁を含めた全国の警察に対して、指導を徹底する考えを示しました。