東京都 生成AI利用する職員 対象の1割にとどまる

行政サービスの質を向上させようと、ことし夏に生成AIを導入した東京都では、「何に使っていいかわからない」などの理由から利用する職員が対象の1割にとどまっていることがわかりました。

生成AIをめぐっては、去年11月、ChatGPTが公開されたことをきっかけに利用が急速に拡大していて、東京都でも行政サービスの質を向上させようとことし8月に全局で導入し、およそ5万人の職員が利用できる対象となっています。
導入からおよそ4か月がたち、生成AIがどれほど利用されているのか都が確認したところ、19日時点で、利用を申請した職員はおよそ5000人と、1割にとどまっていることがわかりました。
都が10月に行った職員へのアンケートでは、「企画のアイデアを考える際に役立った」など業務が効率化されたという意見の一方、「何に使っていいかわからない」とか「利用を申請したもののほとんど使っていない」などの意見もあったということです。
このため、都は、活用方法などを職員へ周知するための勉強会を行うとともに、業務の効率化など導入した効果の検証を進めていくことにしています。

東京都では、生成AIを業務で活用する職員を増やそうと、先月から、利用したことがない職員らを対象に勉強会を行っています。
20日行われた勉強会には、主税局や環境局などの職員10人が参加しました。
この中では、講師役のデジタルサービス局の担当職員から利用に関する注意点などが説明されたあと、グループになって、それぞれ生成AIに指示文の入力を体験しました。
生成AIに対し「キャッシュレス納税を推進するためのキャチコピーを20個出してください」などと入力すると、瞬時に「キャッシュレスで未来を支払おう」などと回答が出され、さらに類似するものを20個考えるよう指示しても、回答が表示されました。
担当職員から「無理難題を言ってもやってくれる」と説明されると、参加した職員は「『20個出してくれ』と部下に指示するとパワハラになるが、生成AIは喜んで引き受けてくれる。行政の職員からは出てきにくいキャッチコピーが得られた」などと感想を話していました。
勉強会のあと参加した職員は「生成AIを周りに使っている人がいなく、今まで使ってこなかった。勉強会に参加するのに勇気が必要だったが、年齢に関係なく、自分の業務でも使えそうで、ハードルが下がった。いろいろな業務に使ってみたい」と話していました。
デジタルサービス局の大迫未佳・企画調整担当課長は「『何に使っていいかわからない』という声はまだまだある。生成AIを正しく、効果的に活用してもらい、行政サービスの質の向上を目指していきたい」と話していました。

行政サービスを向上させるために生成AIを活用する動きは全国的に広がっていて、課題も出ています。
全国知事会では、ことし7月、生成AIの活用のあり方を検討するためのワーキングチームの設置が提案され、9月から検討を始めました。
各都道府県に、9月中旬の時点で、業務への利用状況をアンケートしたところ、すでに導入しているか導入に向けて検証していると答えたのは、あわせて35の都府県に上りました。
これまでに、「企画のアイデアを出すのに時間を短縮できた」など業務の効率化につながったという意見のほか、利用する職員や場面を増やす機運醸成や生成AIが出す回答の正確さの見極めなどが課題として寄せられているということです。
ワーキングチームは、今後、各地での活用事例や、業務で確認された課題などをまとめ、来年の全国知事会議で報告することにしています。