川崎 長男監禁死亡事件初公判 被告と弁護側が一部争う姿勢

おととし、川崎市の住宅で精神疾患があったとみられる37歳の長男を拘束したすえに死亡させたとして保護責任者遺棄致死などの罪に問われている父親の初公判が開かれ、被告と弁護側は「医療を受けさせる必要性を認識していなかった。毎日食事を与えていた」などと主張し、起訴された内容の一部を争う姿勢を示しました。

川崎市麻生区の横山直樹被告(71)は長男の雄一郎さん(37)をおととし5月から4か月にわたって手錠などを使って自宅に監禁したうえ、みずから食事もできない状態になっていたにもかかわらず必要な治療を受けさせず死なせたとして保護責任者遺棄致死と監禁の罪に問われています。
14日横浜地方裁判所で開かれた初公判で、被告は起訴された内容について裁判長から問われると、「監禁は認めるが、生存に必要な保護はしていました」などと述べて保護責任者遺棄致死の罪は成立しないと主張しました。
検察は冒頭陳述で「20年ほど前に大学を中退した長男は12年前から両親に暴力を振るうなどし、医師からは統合失調症の疑いが指摘されていた」と説明しました。
そして「被告はおととし5月に長男が全裸で外出したことをきっかけに監禁した。3か月後に階段から転落して立ち上がれない状態になったが医療を受けさせないまま死亡させた対応は悪質で、結果は重大だ」と主張しました。
弁護側は「医療を受けさせる必要性を認識していなかった。毎日食事を与えていた」などと主張しました。

おととし9月、川崎市麻生区の住宅で横山直樹被告の長男、雄一郎さん(37)が死亡しているのが見つかりました。
警察のこれまでの調べや検察の冒頭陳述によりますと、長男は都内の私立大学に通っていた平成16年に大学を中退し、そのころから自宅に引きこもるようになったということです。
平成23年からは自宅の壁を壊したり、両親に暴力を振るったりするようになったということです。
家族から相談を受けた区役所の職員が医師の診断を受けるよう勧めたものの受診しなかったということです。
おととし5月には衣服を身につけずに外出したとして警察に通報が寄せられます。
このときも区役所が家族に医療機関を紹介しましたが受診はせず、このあと監禁が始まったとみられています。
長男はロープや手錠で手足を縛られて自宅の2階で監禁されていたとみられ、おととし8月には2階の階段から転落して頭を強く打ったことをきっかけに寝たきりの状態になったということです。
その後は流動食しか食べられず衰弱していったということで、玄関に敷かれたシートの上で床ずれから感染症になっておよそ1か月後の9月に亡くなりました。
亡くなった時の体重はおよそ50キロで統合失調症だったとみられています。
長男の死亡から4か月後の去年1月、同居していた父親は亡くなるまでの4か月間にわたって手足をロープなどで縛って監禁したとして監禁の疑いで逮捕されました。
その後、5か月にわたって、刑事責任能力を調べる鑑定留置が行われ、去年7月、食事もできない状態の長男に必要な治療を受けさせずに死なせたとして保護責任者遺棄致死の疑いで再逮捕されました。
検察は責任能力を問えると判断し、去年8月、保護責任者遺棄致死と監禁の罪で起訴しました。
一方、同居していた母親と妹も保護責任者遺棄致死などの疑いで逮捕されましたが、いずれも不起訴になっています。
警察のこれまでの調べに対し父親は「病院に連れて行こうとすると暴れて連れて行けなかった。外に出すと迷惑になると思った」と供述していたということです。