気温急激に下がる 入浴時の「ヒートショック」に注意

東京都心では先週7日に11月としての最高気温を100年ぶりに更新し、記録的な暑さとなったのが一転、今週は冷え込む日が続いています。
気温が急激に下がるなかで注意が必要なのが、「ヒートショック」です。

医師で東京都市大学の早坂信哉教授によりますと、「ヒートショック」は、急な寒暖差によって血圧が大きく変化し、体調に異変をきたすことです。
入浴の際に多く発生し、暖房が効いたリビングから寒い脱衣所や浴室に移動すると血管が収縮して血圧が一気に高くなり、その後、あたたかい風呂に長くつかると血管が拡張されて逆に血圧が低下します。
血圧が大きく変化することで心臓や血管に負担がかかり、脳内出血や心筋梗塞などを引き起こすおそれがあるということです。
特に注意が必要なのが冬の時期で、脱衣所や風呂などの温度差が大きくなるほか、寒いからといって熱い風呂に長く入ることで、体温が上がりすぎて「熱中症」の症状が出るケースもあるということです。
「ヒートショック」のリスクが高いのはお年寄りのほか、高血圧や心臓の持病などがある人で、早坂教授は対策として、脱衣所を暖めるなどして浴室との温度差を5度以内に抑えることや、風呂の温度は40度まで、入浴時間は10分程度、体が温まりきらない時でも15分にとどめることを呼びかけています。
東京都監察医務院によりますと、入浴中に亡くなる人は東京23区で年間およそ1400人に上り、特に11月から4月にかけての寒い時期に多くなっています。
早坂教授は「入浴中の死亡事故の原因は十分に解明されていませんが、『ヒートショック』が多いと考えられます。原因となる温度差を小さくしたうえで、寒い日には風呂の温度を上げたくなりますが、温度を上げすぎず、長く入りすぎないよう気をつけてもらいたいです」と話しています。

特にリスクの高い高齢者の入浴の介助を行う施設では、「ヒートショック」の対策を取り入れ始めているところもあります。
千葉市中央区にある「ヒューマンライフケア千葉院内の湯デイサービス」には、毎日およそ20人の高齢者が通っています。
午前中、順番に入浴の介助が行われますが、この施設では必ず入浴前に血圧や体温を測り、看護師が体調を確認したうえで入浴できるかどうかを判断しています。
脱衣所では、寒さが増した今月11日からエアコンの暖房を入れ始め、足元を暖めるヒーターも設置しました。
そして、浴室では最初に湯船には入れず、先に洗い場で手足から体へと順番にお湯をかけ、急激な寒暖差を生み出さないよう気を配っています。
湯の温度は熱くなりすぎないよう確認し、入浴時間も長くなりすぎないよう注意しているということです。
利用者の70代の女性は「脳梗塞で左半身が動かせず、自宅ではお風呂に入れないのでいつも楽しみにしています。寒くなったので、風呂場を温かくしてくれてありがたいです」と話していました。
施設を管理する大城妃那子さんは「急に寒くなって高齢者の体にも影響が出やすいと思うので、浴室と脱衣所の温度差が小さくなるようにしています。特に心臓に病気がある人には入浴の時間を短くするなど、利用者の体に負担がかからないよう気をつけていきたいです」と話していました。

大手ガス器具メーカー「リンナイ」は、毎年、入浴の習慣に関する調査を行っています。
ことしは、全国の2350人にインターネット上でアンケート調査を行い、今月9日に結果を公表しました。
このなかで、冬場に入浴する際の温度設定を尋ねたところ、全国平均は40.6度でしたが、「ヒートショック」のリスクが高まるとされる42度以上と回答した人は、全体のおよそ3分の1に上りました。
また、湯船につかっている時間を尋ねたところ、全国平均は14.3分でしたが、20分以上と回答した人は、全体のおよそ4分の1を占めたということです。
東京都市大学の早坂信哉教授は「多くの人は適切な温度や時間で入浴しているようですが、熱い風呂に長時間入るというリスクの高い行動を取っている人も一定数いるので、注意が必要です」と話していました。