東海道新幹線 車内のワゴン販売 31日で終了 JR東海

JR東海は、東海道新幹線で行っている車内のワゴン販売を31日で終了します。
車内販売の売り上げが減っていることや人手不足で販売スタッフの確保が難しくなっていることが要因です。

東海道新幹線の列車内で軽食や飲み物などを提供する車内販売は、1964年の開業時に始まり、現在、「ひかり」と「のぞみ」でワゴンでの販売が行われていますが、JR東海は31日でワゴン販売のサービスを終了します。
飲料や食品の車内への持ち込みが増えて売り上げが減少していることに加え、人手不足で販売スタッフの確保が難しくなっていることが要因です。
ワゴン販売の終了に伴い、ニーズが高かったドリップコーヒーとアイスクリームについては「のぞみ」の停車駅のホームに自動販売機を設置して販売するとしています。
また、来月からは、グリーン車の乗客を対象にスマートフォンを通じて飲料や食品の注文ができる新たなサービスを導入します。
30日に新幹線を利用した愛知県の20代の女性は「ぎりぎりに乗ったときでもコーヒーなどを車内で買えると思っていたのでなくなると寂しいです」と話していました。
東海道新幹線で、2004年からワゴン販売を担当している川尻真富果さんは「長きにわたり利用してくれたお客さんに感謝の気持ちを伝えたい。時代の流れでサービスの形は変わるが、お客さんに寄り添う気持ちは変わりません」と話していました。

東海道新幹線の車内販売用のワゴンを製造してきた福島県の会社はワゴン販売の終了について、「残念ですが、好みの多様化にあわせて商品の種類も増えるなかで、車内販売という小さなお店は一つの転換期を迎えたのかなと受け止めています」としています。
東海道新幹線の車内販売で現在、使われているワゴンを製造したのは、福島県いわき市にある従業員およそ40人の会社です。
社長の三村俊明さんによりますと、初めてワゴンの製造を担ったのは20年ほど前で、ワゴンを使う販売スタッフが気持ちよく販売できるよう、設計事務所とともにデザイン性にこだわった設計を考えたということです。
30点ほどの候補のなかから10点を選んでコンペに出し、見事選ばれました。
選ばれたワゴンは黄色が基調で、持ち手の部分は大きな半円形になっていて、インパクトのあるデザインにしたということです。
そのおよそ5年後には、新たな車両・N700系の導入にあわせてワゴンのモデルも刷新され、現在とほぼ変わらない形になりました。
N700系は、座席部分が広くなったためその分、通路が狭くなり、ワゴンの幅も小さくしました。
また、いわゆる「駅ナカ」の店舗が充実するなかで、JR側の要望に応じて冷たいものや暖かいものをその場で提供できる車内販売の強みをいかして飲み物の販売を重視した設計にしました。
東海道新幹線では出張帰りの人たちがビールを購入することが多いため、缶ビールを24個入りのケースごと運べる構造になっています。
冷たさを保てるようワゴンの素材は断熱性のものを使いました。
さらに、車内の揺れなどを考慮し、ワゴンを押すレバーから手を離すと自動でブレーキがかかるほか、転倒を防ぐため重心が低い構造になっていて、製造を担って以降、一貫して安全性を重視してきたということです。
ワゴンの製造を担ってきたミムラ工業の三村社長は「乗客に楽しく便利に利用してほしいという思いで20年間、携わってきました。終了は残念ですが、好みの多様化にあわせて弁当一つとっても何十種類と駅で販売している状況のなかで、車内販売という小さなお店は一つの転換期を迎えたのかなと受け止めています」と話していました。