家裁で離婚調停中の妻殺害のアメリカ国籍の被告に無罪判決

4年前、東京・霞が関の家庭裁判所で離婚調停中の妻を刃物で切り付けて殺害した罪などに問われたアメリカ国籍の被告に東京地方裁判所は、妄想や幻聴の影響で責任能力はなかったと判断し、無罪を言い渡しました。

無罪を言い渡されたのは、無職でアメリカ国籍のウィルソン・ジェイコブ・スティーブンさん(37)です。
被告は4年前、東京家庭裁判所で離婚調停中だった当時31歳の妻をナイフで切りつけて殺害したとして、殺人などの罪に問われました。
裁判で弁護側は、妻の殺害は認めた一方で当時は心神喪失の状態にあり、責任能力はなかったとして無罪を主張し、検察は懲役22年を求刑していました。
20日の判決で東京地方裁判所の向井香津子裁判長は、「被告は起訴前の精神鑑定で『精神疾患の影響は認められない』とされたが、起訴後、同じ医師が再度鑑定を行い、妻や子どもが拷問されて殺されるという強固な妄想に基づき、殺害に至ったと結論付けた。2つのうち起訴後の鑑定はほかの証拠で認められる事実関係と合致し、信用できる」と指摘しました。
その上で、「殺したいと思うほどの強い怒りや恨みをうかがわせる事実は見当たらない。妄想や幻聴の圧倒的な影響で殺害したもので心神喪失の状態にあった」として責任能力はなかったと判断し、無罪を言い渡しました。
東京地方検察庁の新河隆志次席検事は「判決内容を十分検討して適切に対処したい」としています。