IOC ロサンゼルス五輪 追加で野球など5競技の採用決定

IOC=国際オリンピック委員会はインドで開かれた総会で、2028年夏のロサンゼルスオリンピックで実施される追加競技として、野球・ソフトボール、クリケット、ラクロス、スカッシュ、フラッグフットボールの5つの競技を採用することを決めました。

IOCは16日、インドのムンバイで15日に引き続き総会を開き、今後、予定されているオリンピックの準備状況などについて審議しました。
このうち、2028年にアメリカのロサンゼルスで開かれる夏のオリンピックについては、大会組織委員会が追加競技として提案した野球・ソフトボール、クリケット、ラクロス、スカッシュ、フラッグフットボールの5つの競技を実施するかどうか採決が行われました。
採決は5競技一括で行われ、賛成多数で可決されてロスサンゼルス大会で採用されることが決まりました。
野球・ソフトボールは、東京大会でも追加競技として実施され、いずれも日本が金メダルを獲得していて、2大会ぶりの実施となります。
クリケットは第2回大会以来128年ぶり、ラクロスは第4回大会以来120年ぶりで、今回は6人制が採用されました。
フラッグフットボールとスカッシュは初めての実施となります。

オリンピックで野球は1992年のバルセロナ大会から、ソフトボールは1996年のアトランタ大会から正式に採用されましたが、2008年の北京大会を最後に実施競技から除外されました。
それぞれの競技団体は、2013年にWBSC=世界野球ソフトボール連盟を設立し、野球とソフトボールを1つの競技として東京大会で復帰させることを目指しましたが、オリンピック競技としては世界的な普及度が低いことや試合時間の長さ、さらに野球が盛んではないところでは球場を整備する必要があり、大会後の施設の利用も難しいことなどが課題となっていました。
WBSCでは試合時間短縮のために野球もソフトボールと同じ7イニングで行うことなど改革案を打ち出し、東京大会の実施競技の最終候補に残りましたが、2013年9月のIOC総会での投票の結果、復帰はかないませんでした。
それでもその後のオリンピック改革のなかで開催都市が実施競技を追加提案することが認められるようになり、国内での人気や球場を新規に建設する必要がないことなどを背景に東京大会で3大会ぶりに正式競技として復帰しました。
東京大会では野球は稲葉篤紀監督率いる日本が決勝でアメリカを破り、正式競技としてはオリンピックで初めて金メダルを獲得し、ソフトボールも宇津木麗華監督のもと、エースの上野由岐子投手の活躍などで決勝でアメリカを破り北京大会以来、3大会ぶりの金メダルを獲得しました。
しかし、来年のパリ大会では再び正式競技から除外されていて今回、野球とソフトボールが盛んなアメリカのロサンゼルスで行われる大会で再度、追加競技として復帰するか注目されていました。

フラッグフットボールは、アメリカンフットボールのルールをベースに、タックルなどの接触プレーの代わりに腰の左右につけた『フラッグ』を取り合うことで安全性を高めた競技です。
老若男女が楽しめるスポーツとして日本でも人気が高まっていて、国内の競技人口はおよそ3000人です。
試合は5人対5人でオフェンス側とディフェンス側に分かれ、オフェンス側には4回の攻撃機会が与えられて、ボールを持って走ったりパスを回したりしながらタッチダウンを目指します。
反対にディフェンス側はボールを持った選手の腰のフラッグを奪うか相手のパスをカット、もしくはボールを持った選手をサイドラインから外に追いやれば相手の攻撃機会を1回減らすことができます。
戦略が重要なスポーツで、オフェンス側には攻撃の機会がくるたびに作戦を考える時間が与えられます。
こうしたことから「コミュニケーション能力」と「思考判断力」、そして「体力」を同時に育むことができるとして、日本では令和2年度から小学校の体育の授業に本格的に取り入れられています。

スカッシュはイギリス発祥の球技で、4面を壁に囲まれたコートの中でラケットを持ち、ゴムでできたボールを1対1で打ち合います。
ボールのスピードは最速で時速200キロに達し、1ゲーム11点先取で5ゲームを行い、先に3ゲームを取った方が勝ちとなる形式で行われます。
世界の185の国でおよそ2000万人がプレーしているとされています。
オリンピックでは、2012年のロンドン大会から、リオデジャネイロ大会、東京大会、さらにパリ大会と、実施競技の候補に挙がりながら落選が続いてきましたが、ロサンゼルス大会で初めて採用されることになりました。

ラクロスは北アメリカが発祥の球技で1チーム10人制と6人制があり、選手は先端に網のついたアルミニウム製の『スティック』を持ち、直径6センチのボールを奪い合って相手のゴールに入れて得点を競います。
男子のシュートは、時速150キロを超え、日本では主に大学スポーツとして人気を集めていて、競技人口は1万3000人ほどです。
オリンピックでは1904年のセントルイス大会と1908年のロンドン大会で行われました。
その後、公開競技として行われた大会もありましたが、アメリカでは、バスケットボールやフットボールなどとならんでラクロスも盛んで、ロサンゼルス大会では6人制を提案し、正式競技としての採用を目指してきました。

クリケットはイギリス発祥の球技で世界の競技人口は3億人以上にのぼり、サッカーに次ぐ第2位と言われています。
長さおよそ20メートルの『ピッチ』と呼ばれる長方形のスペースで、投手がワンバウンドで投げたボールを打者が打ち返し、打球が処理される間に打者がピッチの端から端までを走って得点します。
1チーム11人で対戦して規定のアウト数を取られる間に、より多くの得点を取ったほうが勝ちとなりますが、形式によっては試合時間が7時間のものや数日間に及ぶものもあります。
過去のオリンピックでは、1900年のパリ大会で実施されましたがその後は行われず、近年は、競技団体がTwenty20という競技時間が3時間ほどに収まる方式でオリンピック競技への採用を目指していました。
ヨーロッパやインド、オーストラリアなどでも盛んに行われていますが、日本では競技人口が4000人ほどにとどまっていて、日本クリケット協会はオリンピック競技への採用を普及につなげたいとしています。

IOC=国際オリンピック委員会の総会で2028年夏のロサンゼルスオリンピックの追加競技にクリケットが採用されたことについて、日本クリケット協会の本部がある栃木県佐野市では関係者から喜びの声があがっています。
栃木県佐野市は、10年以上前からクリケットの普及に街ぐるみで取り組んでいて、2010年から日本クリケット協会の本部が置かれているほか市内には日本で初めての全面天然芝のクリケット専用のグラウンド、「佐野市国際クリケット場」が整備されています。
16日は午後2時から協会の関係者や選手などおよそ20人がグラウンド脇の建物に集まって、インターネットで中継されるIOC総会の様子を見守りました。
そして、午後5時前にクリケットが追加競技に採用されることが決まると、「おー」という歓声がわき、会場は大きな拍手に包まれました。
採用決定の瞬間を見届けた元プロ野球選手でクリケット日本代表の木村昇吾選手は「うれしいです。日本のクリケットは
これからなので、頑張りたいです」と話していました。
日本クリケット協会の宮地直樹事務局長は記者会見で「クリケット競技にとって大きな追い風になると思う。今後、オリンピックという新たなステージを目指せるよう選手の育成など、様々な取り組みを高めていきたい」と話していました。