全銀ネットのシステム不具合 依然として復旧の見通し立たず

全銀ネットのシステム不具合 依然として復旧の見通し立たず

金融機関どうしの資金のやり取りを担うシステムに不具合が発生し、10日に続いて11日も11の金融機関で他行宛ての振り込みが遅れるなどの影響が出ていますが依然として復旧の見通しは立っていません。
このため取り引きを制限する金融機関が相次いでいて利用者への影響が広がっています。

システムの不具合の影響を受けているのは、三菱UFJ銀行、りそな銀行、埼玉りそな銀行、関西みらい銀行、山口銀行、北九州銀行、三菱UFJ信託銀行、日本カストディ銀行、JPモルガン・チェース銀行、もみじ銀行、商工中金=商工組合中央金庫の11の金融機関です。
システムを運営する一般社団法人の全銀ネット=「全国銀行資金決済ネットワーク」は、午後5時半の時点でも復旧の見通しは立っていないとして、別の手段で振り込みができるよう対応していますが、今後も通常より振り込みが遅れる可能性があるとしています。
この影響で、三菱UFJ銀行は、全国の店舗やATM=現金自動預払機、それにインターネットなどでの他行宛ての振り込みについて、11日正午までにいったん受け付けを止めていましたが、11日夕方から12日朝にかけてはATMやインターネットでの振り込みが可能だとしています。
また、政府系金融機関として中小企業向けの融資などを手がける商工中金は11日、他行宛ての振り込みについて全国の店舗やATM、インターネットなどによる取り引きを停止しました。
今回の不具合の原因について全銀ネットは、中継コンピューターに整備されている取り引きにかかる費用をチェックする機能に問題があった可能性があるとしていて、サイバー攻撃の影響ではないとしています。
システムの不具合の影響が長引けば給与や家賃、仕送りや月謝など振り込みや中小企業の送金などが遅れる可能性もあります。

システムの不具合で影響を受けた利用者に対する金融機関の対応です。
三菱UFJ銀行は、システム不具合の影響で顧客が本来より多く振込手数料を支払った場合は差額を銀行が負担するとしています。
例えば、他行への振り込みができなくなったことでやむをえず別の銀行で振り込みを行ったときに、支払った手数料が三菱UFJ銀行から振り込むときにかかる手数料より高かった場合、その差額を負担する方針です。
また、システムの不具合の影響で企業が残高不足に陥り手形や小切手の決済ができなくなった場合でも不渡りとはしないということです。
りそな銀行も顧客が本来より多くの振込手数料を支払った場合、銀行側で負担するとしています。
各銀行は、取り引きの決済に時間がかかる中、同じ口座に二度送金する「二重振り込み」が発生しないよう利用者に注意を呼びかけています。

金融庁は、システムを運営する全銀ネットと影響を受けた金融機関に対して聞き取りを行うなどして状況の確認を進めています。
そのうえで全銀ネットに対して一刻も早いシステムの復旧を求めるとともに、影響を受けた金融機関には、利用者に不利益が及ばないよう柔軟な対応をとるなど、顧客対応に万全を期すよう求めています。

全銀ネット=「全国銀行資金決済ネットワーク」は、全国銀行協会の関連組織で、金融機関どうしの資金取り引きをオンライン処理する「全銀システム」=全国銀行データ通信システムを運営しています。
この「全銀システム」は全国1100以上の金融機関をネットワークで結ぶ基幹システムで、一日平均およそ770万件、金額にして13兆円余りの取引データを処理しているということです。
「全銀システム」は平日の午前8時半から午後3時半までの入金に対応した「コアタイムシステム」と平日の夜間と土日や祝日に対応する「モアタイムシステム」の2つのシステムで構成され、取引データが金融機関の間でやりとりされる振り込みなどのデータを集中的に処理し、ほぼリアルタイムで受取人の口座に資金が入金される「迅速性」が最大の特徴だとうたっています。
システムを運営する「全銀ネット」は、一般社団法人で職員数は50人。
役員は、辻松雄理事長のほか理事10人、監事2人で構成され、理事には銀行のトップなどが就いています。
「全銀システム」は1973年に稼働を始めましたが金融機関の顧客の取り引きに影響を及ぼす形で不具合が発生したのはこの50年間で初めてだとしています。