岡本太郎の壁画「明日の神話」 大規模修復作業始まる 渋谷駅

日本を代表する芸術家、岡本太郎が手がけた巨大壁画「明日の神話」が、東京・渋谷駅の連絡通路に設置されてから15年がたって傷みが目立ってきたため、10日から大規模な修復作業が始まりました。

「明日の神話」は岡本太郎が原子爆弾が炸裂した瞬間をイメージして描いた作品で、長年、行方がわからなくなっていましたが、2003年にメキシコの資材置き場で見つかりました。
修復作業が行われたあと2008年からは、岡本太郎の「芸術は暮らしの中に生きるもの」という思いに応えようと多くの人に見てもらえる渋谷駅の連絡通路に設置されています。
壁画は設置から15年がたってひび割れや汚れなどが目立ってきたためきょうから大規模な修復作業が始まり、壁画が発見された際に修復作業を行った修復家の吉村絵美留さんも参加しました。
壁画は高さが5.5メートル、幅が30メートルあり、10日は足場にのぼって専用の液を使いながら汚れなどを落とす作業が行われました。
壁画の設置場所は一日およそ30万人が通行し、衣類の繊維やほこりなどが壁画に付着しているほか、連絡通路の片側がガラス張りになっているため日光があたるなどして色の変化やひび割れが見られるということです。
今後は汚れを落としたうえで、色をつけたりひび割れを直したりする作業が行われる予定で、すべての修復作業が終わるには数年かかる見通しです。
修復作業の費用の一部は壁画の保全や管理を行うNPO法人がクラウドファンディングで集めていて、現在は目標額まで残り200万円となるおよそ1600万円の寄付があったということです。
修復家の吉村さんは「クラウドファンディングに協力してくれた人からは『未来永ごう引き継いでいきたい』というメッセージが寄せられ身が引き締まる思いです。原爆の被害を受けても未来に向けて生きていくという作品に込められた思いを多くの人に受け止めてほしい」と話しています。