来月から新酒税率 ビールは引き下げ 第3のビールは引き上げ

お酒に課される税、「酒税」の一本化に向けて、来月からビール系の酒類などで新たな税率が導入され、ビールでは税率が引き下げとなる一方、いわゆる「第3のビール」は引き上げられます。
消費者の選択やメーカーの販売戦略への影響を指摘する見方も出ています。

酒税をめぐっては、お酒の原料や製法によって税率が細かく分かれる複雑な体系をより簡単なものに一本化することなどを目的に、3年後までに段階的に税率が変更されます。
ことしは来月1日からビール系の飲料などで新たな税率が導入されることになっていて、350ミリリットル缶あたりに換算すると、ビールは6円余り引き下げられ、一方で、第3のビールは9円余り引き上げられます。
このため、ビールと第3のビールとの差は、これまでの32円余りから一気に16円余りにまで縮まります。
店頭での販売価格はそれぞれの小売店の判断になるものの大手ビールメーカーの缶ビールの小売価格は下がるとみられていて、ビールの需要が高まるという見方も出ています。
酒類市場や消費の動向に詳しいSOMPOインスティチュート・プラスの小池理人主任研究員は「消費者はこれまで、税率が異なることでより安い製品を求める傾向が強かった一方、今後は製品の品質、おいしさを重視して選ぶ方向へと向かうのではないか。このため、税率変更をきっかけに大手メーカーなどの新商品の導入も注目される」と話していました。

酒税率の変更を前に、スーパーや酒の販売店では「第3のビール」を中心に引き上げ前の駆け込み需要を取り込もうとする動きが見られます。
このうち、仙台市に本社がある酒の販売店「酒のやまや」のさいたま市中央区の店舗では、酒税率が引き上げとなる第3のビールについて「10月1日より増税が予定されています」とか「9月中のまとめ買いがお得です」などと説明するチラシを店内の至るところに掲示して駆け込み需要の取り込みに力を入れています。
この日は平日の夕方にも関わらず箱入りの商品を買い求める客が次々に訪れ、このうち66歳の男性は「税率が変わることを知り、いまのうちに第3のビールを買っておこうと思いました。さまざまな物の値段が上がっているので、少しでも安く買っておきたい」と話していました。
内田修店長は「土日などには第3のビールを大量に買い求める人もいました。9月中は第3のビールの駆け込み需要を取り込もうと思いますが、10月に入ったらビールの税率が下がるのでクラフトビールや海外産のビールの売り込みに力を入れたい」と話していました。

埼玉県川越市のクラフトビールのメーカーは今回の税率変更を、物価高騰による苦しい状況を打開するきっかけにしようと動きだしています。
「コエドビール」の名称で知られる、クラフトビールメーカーの埼玉県東松山市にある醸造所です。
円安に加えて輸送コストの高まりなどで海外から輸入している麦の原価が一時2倍ほどに値上がりしたのに加え、製造に必要な電気やガスの値上げなど、長引く物価の高騰が製造コストに大きく影響し、大幅な値上げを検討した時期もありました。
しかし、今回のビールの税率引き下げなどで、先月の価格の見直しでは希望小売価格で1本あたり20円前後の値上げにとどめることができたといいます。
税率の引き下げでビールへの注目度が高まると期待していて、製造過程の見学会や醸造所を活用した音楽イベントを開催して幅広くクラフトビールの楽しみ方を提案したいとしています。
クラフトビールメーカー「協同商事」の朝霧重治社長は「麦の価格の高騰などでビールの価格はどうしても上げざるを得なかったが、酒税が下がることをふまえて値上げ幅をできるだけおさえました。今後はビールへの関心が高まると思うのでクラフトビールの新たな楽しみ方の創出にも取り組みたい」と話していました。

酒税率が変わることで、ふだん飲むお酒が変わるのか、東京・新橋で聞きました。
59歳の会社員の男性は「飲食店ではビールを、家ではワインをよく飲みます。ビール好きにとってはより安くなって飲みやすくなるならありがたいです」と話していました。
また、21歳の女子大学生は「第3のビールはやはり安さが魅力だと感じるので、税率が上がって価格に反映されれば影響が大きいと思います。ふだんはハイボールなどを飲みますが、税率が下がるならビールも飲んでみようという気持ちになります」と話していました。