千葉 柏市議会 全議員出席し市職員へのハラスメント防止研修

千葉県柏市の市議会で、議員による市の職員へのハラスメント行為を防ぐための研修会が、すべての議員が出席して行われ、講師が「議員たちもみずからが地方公務員だと認識するべきだ」などと意識の変革を求めました。

柏市議会では、ことし4月の調査で、150人を超える職員から議員にパワハラやセクハラを受けたという訴えが寄せられ、ことし6月に成立したハラスメント防止を目的とした新たな条例で、研修会の実施が定められました。
研修会は26日、本会議に続いて議場で行われ、36人の議員全員が出席しました。
地方議会などでコンプライアンスの研修を行っている「公務員研修協会」の高嶋直人代表理事が講演し、「議員は、政治活動を行う点で市の職員と異なるものの、同じ地方公務員だと認識するべきなのに、間違って認識している人がいる」と指摘しました。
そのうえで、「議員と職員の間にはある程度の緊張感は必要だが、ともに行政を担うパートナーとしての関係性を築くことが大切だ」として、一人ひとりに意識の変革を求めました。
研修会は2時間近く行われ、講演のあとの質疑では、パワハラ行為の定義に含まれる「優越的な関係」の考え方や、適切な対処を行うための相談窓口の体制づくりなどについて相次いで質問が出されました。
最後に高嶋代表理事は「柏市の条例は全国のなかでも先進的な取り組みなので、ぜひ対策を進めていってもらいたい」と呼びかけていました。
研修会のあと、先月の市議会議員選挙で初当選した新人の男性議員は「議員になると、偉くなったと勘違いしてしまいがちだが、どちらが偉いとかではなく、柏市をよくするために議員も職員もお互い切磋琢磨していくことが大切だと認識を改めた」と話していました。
別の新人の男性議員は「これまでもハラスメントには気をつけていたつもりだが、研修を受けて、議員にはより高い倫理観を求められていると認識できた。市の職員との関係においては、緊張感とハラスメントの境界線を意識して対応する必要があると感じた」と話していました。
ハラスメント防止を目的とした条例案の作成にも関わった女性議員は「研修によって、議員36人全員がハラスメントに対して共通の認識を持てたはずだ。議員と職員が、互いを尊重する関係性を構築するための基礎ができたと思う」と話していました。

柏市議会では、議員によるハラスメントを防ぐため、新たな条例を制定するなど取り組みを強化してきました。
柏市議会はことし4月、議員による市職員へのハラスメントについて調査を行い、回答した1827人のうち、157人が議員からハラスメントを「受けたことがある」と回答し、316人がハラスメントを「見たことがある」と回答しました。
ささいなミスを長時間叱責されたり、意に沿わない対応をどう喝されたりするといったパワハラ行為のほか、彼氏や彼女がいるのかと聞かれたり、早く結婚しろと言われたりするなどして苦痛を感じるセクハラ行為も回答のなかで寄せられました。
柏市議会では、去年から超党派の議員でつくる検討会を設置し、先進的な自治体を視察するなどしてきましたが、調査結果を受けて、検討会でハラスメントを防止するための条例案をまとめ、ことし6月、賛成多数で可決・成立しました。
条例では、議員によるハラスメント行為が疑われたときは、議員みずからが誠実に疑惑の解明にあたって責任を明確にすることや、議員はほかの議員による疑わしい行為があると知った場合、その議員に直接指摘するよう努めなければならないと定めています。
議長は、事実関係を把握してハラスメント行為が確認した場合、その議員の氏名を公表するとしています。
さらに議長は、ハラスメントに関する相談窓口を設置するとともに、議員を対象とした研修会を実施することともされています。

研修会を前にした今月22日、議長、副議長など議員4人と議会事務局の職員が、今後のハラスメント対策についておよそ20分にわたって意見を交わしました。
このなかで円谷憲人議長はことし6月にハラスメント対策の条例案を採決した際、34人中5人の反対が出て全会一致とならなかったことに言及しました。
そのうえで、「先月の選挙で当選した新たな議員もいるので、全員がハラスメントに対する共通認識を持ち、条例を実効性のあるものにしなければならない」とし、危機感を持ってハラスメントを防ぐ必要があると述べました。
ほかの議員からは「条例制定が目的ではなく、ハラスメント防止が目的なので議会で継続的に取り組むべきだ」などと意見が出され、今後、会派を超えて議員が出席する議会運営委員会などで議論を続けていくことを確認しました。
また、議会事務局には、条例に基づいて職員からのハラスメントに関する「相談窓口」が設けられましたが、これまで職員からの相談は寄せられておらず、議員の1人は、窓口が秘密を守ることなど情報の扱い方を明確にする必要があると指摘しました。
議会事務局は、窓口となる職員に専門的な知識が求められるとして、職員向けの研修も必要となるとの考えを示しました。

地方行政について調査や研究を行っている「地方自治研究機構」によりますと、議員によるハラスメントを防止する条例を設けている自治体は、今月1日の時点で、全国で26の市区町村と2つの府県に上るということです。
このうち、大阪府や千葉県柏市、神奈川県大和市など9つの自治体では、ことしに入ってから条例が施行されたということで、議員によるハラスメントを防ごうという動きは全国的に広がりつつあります。