ひつぎのドライアイス 二酸化炭素中毒のおそれ 死亡事故も

ひつぎに入れられる保冷用のドライアイスが原因で二酸化炭素中毒を起こしたとみられる死亡事故が起きているとして、消費者庁などは故人とのお別れの際にひつぎに顔を入れないよう注意を呼びかけています。

消費者庁によりますと、ひつぎに入れられる保冷用のドライアイスが気化した二酸化炭素を吸い込み中毒を起こしたとみられる死亡事故が令和2年から3年にかけて全国で3件起きています。
具体的には、小窓を開けた状態のひつぎの近くで倒れていたり、ひつぎに顔を入れた状態で意識を失っていたりしたケースが報告されていて、寝ずの番の最中など周囲に人がいない状況でひつぎの中の故人に話しかけるなどして事故が起きたと考えられるということです。
事故を受けて国民生活センターがひつぎに10キロのドライアイスを入れて二酸化炭素の濃度を測る実験を行ったところ、ひつぎのふたを閉めた状態では急激に濃度が上昇し、20分後にはすぐに意識を失うとされる30%を超え、4時間後には、およそ90%まで上昇しました。
その後、ふたを開けると濃度は低下していくもののふたを開けて50分が経過しても、30%以上の濃度になっていました。
消費者庁ではドライアイスを入れたひつぎは二酸化炭素が充満しやすいとして、故人とのお別れの際にひつぎに顔を入れないようにするほか、室内の換気を十分に行うこと、万が一に備えて1人きりにならないこと、気分が悪くなったらすぐにひつぎから離れるよう呼びかけています。

ひつぎに入れられる保冷用のドライアイスが原因で二酸化炭素中毒を起こしたとみられる死亡事故。
遺体の安置を請け負う都内の会社でも対策を進めています。
亡くなった人への化粧や修復のほか、葬儀までの間に遺体の安置などを請け負う東京・足立区の会社では、以前、仕事中に気分が悪くなったスタッフがいるなど、二酸化炭素中毒の危険性を感じたことがあるといいます。
この会社では、対策としてひつぎをのぞきこまないようにすることや、一人になる時間を設けないこと、室内の換気を十分に行うことなどを徹底するようにしています。
また、日常的にドライアイスを使用するため、スタッフには作業用手袋の使用を徹底させたり二酸化炭素中毒の勉強会を行ったりするなど、中毒にならないための対策を進めています。
染谷幸宏社長は「二酸化炭素は色もにおいもないため、充満していることに気づきにくくとても危険です。今後もドライアイスを適切に使用するとともに、故人へのきれいなお別れができるよう注意を続けていきたいです」と話していました。

二酸化炭素中毒は、空気中の二酸化炭素を大量に吸い込むことで、人体に影響を及ぼします。
人は呼吸によって空気中の酸素を取り込み、二酸化炭素を排出します。
しかし、空気中の二酸化炭素の濃度が高い場合は、排出ができなくなり、体に中毒の症状が現れ、生命に危険が及びます。
消費者庁によりますと、通常、空気中に含まれる二酸化炭素はおよそ0.04%程度ですが、空気中の濃度が3%になると呼吸困難やめまいが、8%から10%で激しい頭痛やふるえなどがおき、5分から10分で意識がなくなるということです。
そして、30%になるとほぼすぐに意識が消失するということです。