記録的大雨から2週間 止水板で被害軽減の住宅も 千葉 茂原

今月8日の記録的大雨から22日で2週間。
浸水した住宅は千葉県茂原市でおよそ2000棟に達し、現在も増えています。
その一方で住宅や商業施設で「止水板」を設置していち早い復旧につながった事例が相次いでいたことがわかってきました。

千葉県茂原市の八千代地区に住む吉田喜代司さん(83)は、記録的な大雨で氾濫した一宮川の近くに自宅があり、4年前の大雨では自宅が床上まで水に浸かり、車庫にあった車2台も水没しました。
この教訓から、自宅の門や車庫、裏口の3か所に水の侵入を食い止める止水板を購入し、今月8日、雨が強まった午前10時ごろに家族と設置を済ませました。
その後、川の水位はぐんぐん上昇し、家の門のすぐ近くで最大80センチほど浸水しましたが、止水板によって敷地内の浸水は最大でも30センチほどに抑えられ、床上は浸水せずにすみました。
4年前は2週間ほど2階で暮らし、元の生活に戻るまで5か月ほどかかりましたが、今回はすぐにふだんどおりの暮らしができたということです。
吉田さんは「4年前は1階の畳をすべて替えるなど大変だったので、今回も川の水位が上がってきた時にはどうなることかと心配していました。床上まで水が来ず、設置してよかったと思います」と話していました。

吉田さんの住宅に設置された防犯カメラには、一宮川の水位が上昇する様子や一帯が浸水する一部始終が記録されていました。
午前11時前には川沿いの道路に水があふれ出し始め、正午前には道路の大半は冠水し、すねほどまでつかりながら人が歩いている様子が分かります。
午後1時前に雨はいったん弱まったものの、車庫の前まで完全に水に覆われました。
このあと浸水のスピードが速くなり、午後2時ごろまでの1時間で40センチほど急上昇し、成人が太ももほどまで水につかりながら歩いているのがわかります。
その後も水位は上昇を続け、ピークとなった午後4時ごろには、道路からは1メートル20センチ、住宅周辺では80センチほど浸水しました。
一方、別の場所に設置されたカメラの映像では止水板の効果で住宅の敷地内は午後1時ごろまで冠水しておらず、その後も浸水するスピードは遅く、水位も低いことが確認できます。

4年前を教訓に止水板を設置することで被害を防ぎ、速やかに営業を再開した商業施設もありました。
茂原市高師のショッピングモールは、4年前の大雨の際に床上50センチ以上浸水してエスカレーターも被害を受け被害額は2億円以上にのぼり、10日ほどの休業を余儀なくされたといいます。
このため、よくとし、およそ3500万円をかけて高さ60センチほどの止水板を100枚ほど購入しました。
今月8日の大雨の際には朝から準備を始め、午後1時に閉店した際には設置を終えました。
その結果、床上への浸水を免れ、大半の店舗で翌日から営業できたということです。
「茂原ショッピングプラザアスモ」を運営する茂原商業開発の秋葉好昭取締役は「設置費用は高額でしたが、店舗の中を守って通常通り営業ができています。利用者に迷惑をかけずにすみよかったです」と話していました。

大雨による冠水や浸水の被害が相次ぐなか、関東の自治体のなかには、個人や企業が止水板を設置する場合に補助するところもあります。
このうち東京・品川区は、昭和57年や60年の大雨で目黒川があふれるなどして浸水被害が発生したことから、昭和62年度から止水板の設置費用を補助する取り組みを行っています。
平成2年度には補助の割合を4分の3まで、金額も最大100万円に引き上げました。
品川区によりますとこれまでの助成件数は個人と企業あわせて170件ほどで、工事費は個人では50万円程度、企業では200万円程度かかるケースが多いということです。
止水板の設置に対する補助は東京では板橋区、足立区、三鷹市などで行われていて千葉県でも千葉市のほか今年度から柏市でも始まるなど広がりをみせています。
茂原市では、昨年度、補助金の導入が検討されましたがまだ実施には至っていません。
茂原市はNHKの取材に対し、「今後、補助を実施している他の自治体の状況を調査・研究し、検討していきたい」としています。

浸水を防ぐため止水板を設置する対策について、水害対策に詳しい東京大学大学院の松尾一郎客員教授は「今回被災した地域は土地が平たんで、浸水が頻繁に起きている。こうした地域ではすぐに設置できる止水板は個人の対策として有用な取り組みだと思う。ただ、川の流れが速い地域では家ごと流される可能性もあるので、止水板に頼りすぎることなく、自宅や企業の状況を考慮しながら活用してほしい」と話しています。