「こども誰でも通園制度」試験的事業 あり方の議論始まる

親が就労していなくても子どもを保育所などに預けられる「こども誰でも通園制度」について、来年度行う試験的な事業のあり方に関する議論が始まり、事業の進め方などについて保育の事業者や専門家らが意見を交わしました。

「こども誰でも通園制度」は、保育所などの利用要件を緩和し親が就労していなくても時間単位などで子どもを預けられるようにする新たな通園制度です。
政府は来年の通常国会に制度を創設するための法案を提出することを目指すとともに、本格的な実施に向けて来年度には試験的な事業を行う方針で、21日は事業のあり方を議論するため、保育所の事業者や幼児教育の専門家、自治体の代表らによる検討会の初会合が開かれました。
会議でははじめに、こども家庭庁の担当者が制度の概要について対象は0歳6か月から2歳までとし、対象者を自治体が認定する仕組みを設けるほか、保育所や認定こども園、幼稚園、地域子育て支援拠点などを実施する事業者として想定していると説明しました。
また全国の自治体で提供体制が確保できるよう、来年度の試験的な事業では1人あたりの利用時間を「月10時間」を上限にする方針だと説明しました。
これについて出席者からは保育士が不足しているので資格がある人に限定せずさまざまなな人が担い手となる仕組みにすべきだという意見や、障害がある子どもなどが利用する児童発達支援センターでも実施できるようにしてほしいといった意見が出されたということです。
検討会では今後複数回議論を重ねたうえで12月をめどに意見をとりまとめる予定です。
保育の現場では人手不足や業務負担の増加などが課題となっていて、こども家庭庁は全ての子どもが利用可能な制度となるよう検討を進めることにしています。

「こども誰でも通園制度」の本格実施に先駆けて、モデル事業を行っている園では、現場の負担感をどう解消するかが課題になると指摘します。
モデル事業を行っている自治体のひとつ、東京・中野区の保育園は0歳から2歳の16人を預かることができる小規模保育の園ですが、空き定員がある0歳児の枠を利用して、区のモデル事業を受託し、ことし8月から0歳から1歳の子ども2人を週に2回定期的に預かっています。
19日午前9時すぎに訪れた1歳の女の子は、上の兄弟もいるなかで母親はなかなか自分の時間をとれなかったといい、女の子は午前中いっぱい園内でほかの子どもと一緒に過ごしました。
ただ、母親と離れることにまだ慣れないため、預けられると泣き出してしまい、ベテランの主任保育士が抱っこであやします。
また、すぐにみんなと一緒に遊ぶことができず、保育士が「泣いてもいいよ、大丈夫だよ」などと声をかけながらつきっきりで抱っこし、少しずつ慣らしていました。
このため、0歳児を担当するこの保育士が女の子にかかりきりになっている間、他の2人の保育士が、1,2歳児とあわせて0歳児も一緒に見守っていました。
モデル事業での預かりは通常の通園と違って週に2回しか来ないため、慣れるのに時間がかかるといいます。
主任保育士の市村彩さんは「慣れないことを想定して始めた事業ではありますが、毎日来る子どもと比べると継続した保育が難しく、予想以上に慣れないということがあります。その子の興味に保育士側が合わせて遊びなどを考えながら対応しています」と話していました。
また、この園では元々、園が費用負担し国や自治体の配置基準より多く保育士を雇用し、ゆとりをもった人員配置をしていますが、新たなモデル事業の対応で現場の負担感は増えているといいます。
さらに通常は子ども1人につき算定される保育士の処遇改善などの加算もつかないこともモデル事業の課題だとしています。
ゆめのいろ保育園中野の米田恵園長は「育児負担を軽減することで虐待などを予防したいと思い、働いていなくても子どもを預けられるというこの制度の理念に共感して、モデル事業に応募しました。しかし、先立つものがないと、せっかく良い事業していても現場が疲弊してしまい、受け入れが難しくなってしまう。保育現場では保育士の配置基準が現状にあっておらず、元々、負担感が大きい。まずは、園の運営が安定するようしっかり予算をつけてほしいです」と話していました。