学校プール 埼玉県内3割超の自治体で使用せず 老朽化などで

公立の小中学校で老朽化したプールの維持や管理が課題となっています。
埼玉県では昨年度、全体の3割を超える23の自治体で、学校のプールを使用せず民間の施設を活用するなど水泳の授業を見直す動きが出ていて、専門家は「費用のほか教員の負担を減らす目的があり今後も見直しが加速するのではないか」と指摘しています。

学校教育の内容などの基準を示す学習指導要領では水泳の授業は小学1年生から中学2年生まで「必修」とされていて、ほとんどの公立の小中学校にはプールが設置されています。
しかしこうした学校のプールは50年以上前に整備されたものが多く、老朽化などで施設の維持や管理が全国的に課題となっています。
こうしたなか、埼玉県内では、プールの使い方や水泳の授業のあり方を見直す動きが進んでいて、県教育委員会によりますと、民間や自治体の屋内プールを授業で活用したり複数の学校でプールを共有する取り組みを導入したりする自治体は、昨年度、全体の36%にあたる23の自治体にのぼるということです。
なかにはコロナ禍で水泳の授業ができない状況が続くなかで施設が使えなくなったケースもあるということです。
こうした状況について、教育行政に詳しい千葉工業大学の福嶋尚子准教授は「水泳の授業をやることには意味があるが、現状を見ると簡単な状況ではない。教員の負担や経済的な資金をかけて学校のプールで授業を行うことが適当かどうかというところで、今後も見直しが加速するのではないか」と指摘しています。

水泳の授業は、学校での教育内容などの基準を示す学習指導要領で、小学1年生から中学2年生まで必修になっていますが、プールなどが確保できない場合は取り扱わないことができます。
一方で、施設の関係で水泳の実技ができない場合でも水難事故の防止などは扱うことが求められていてこうした授業は行う必要があります。
学校のプールについては老朽化の問題に加えて屋外プールがほとんどのため授業そのものが天気に左右されやすく、計画どおり進めにくいという課題もあります。

埼玉県越谷市では、プールの取り壊しをきっかけに、水泳の授業を見直す動きが出ています。
市内の大袋小学校では、区画整理事業にともなって、66年にわたって使われてきたプールを取り壊すことになりました。
先月から解体工事が始まっていてかつてプールがあった場所には解体されたコンクリートなどが積み上げられています。
越谷市教育委員会は、プールを再建することも検討しましたが、多額の費用がかかることなどから再建はせず来年度からは試験的に民間のスイミングスクールを活用して水泳の授業を行うことを決めました。
今後、この小学校での取り組みの結果などをもとにほかの学校についても水泳の授業の見直しを検討するということです。
また、水泳の授業のなかでプールで泳ぐ実技を中学校で廃止した自治体もあります。
埼玉県鴻巣市は、市内の8つの中学校すべてでプールの利用をやめ、昨年度から水泳の授業で実技を廃止しました。
背景にはプールの老朽化に加え、新型コロナによる影響で水泳の授業が中止された2年間で設備の状態がさらに悪化して水道管の漏水などが発生したことがありました。
鴻巣市の教育委員会では協議を重ね補修費や維持費に高額の費用がかかるとして中学校については学校のプールの利用を取りやめ、水泳の実技自体を廃止したということです。
水泳の授業では実技に代わって水難事故を防止する知識を学んでいるということです。
生徒や保護者などからはプールを惜しむ声は聞かれるものの、反対意見などは特に出ていないということです。
鴻巣市教育総務課の新井洋平主査は「校舎の老朽化が進み、プールよりもそちらの補修や建て替えを優先しなければなりません。民営プールの活用も検討したものの委託できる事業者の数が足りないなどの課題があり、水泳の実技を取りやめることになりました。ことしは酷暑なので生徒からは『プールがあればよかった』と残念がる声も聞かれましたが、市の実情を理解したうえで納得してくれていると思います」と話していました。