記録的暑さ ブルーベリーや梨などに被害や影響 千葉県内

先月の全国の平均気温はこの100年余りで最も高くなるなど記録的な高温となっています。
この影響で、農産物にも影響が出ていて千葉県では収穫の最盛期を迎えているブルーベリーに、実が小さくしぼむなどして出荷できない被害が相次いでいます。

千葉県はブルーベリーの生産量が全国の都道府県で5番目に多く、6月から今月にかけてが収穫の最盛期です。
毎年およそ1200キロのブルーベリーを収穫しているいすみ市の片山尉さんの畑では厳しい暑さが続いていることから例年より2週間ほど早く収穫を始めましたが、高温と強い日ざしの影響で畑に水分が十分に行き渡らず、実が小さくしぼんで硬くなる被害が相次いでいるということです。
ブルーベリーの栽培に適した気温は30度までとされていますが、畑のある地域は比較的涼しく、30度を超えることはこれまで多くなく、夏の収穫も可能でした。
しかし、ことしは7月から厳しい暑さが続いたため出荷できず捨ててしまう実が相次ぎました。
廃棄した実はこれまでに全体の2割と例年の5倍以上に急増しているということです。
熱を持った実は傷みやすいということで、片岡さんは収穫後すぐに冷房の効いた屋内に移し、品質を保つよう努めているということです。
片山さんは「多くの実を捨てないといけないのは残念です。これだけ暑すぎるとブルーベリーにも、収穫する人にもよくないので和らいでほしいです。来年以降はしっかりと収穫できるよう工夫したいです」と話していました。

千葉県が生産量で全国トップを誇る梨も今が出荷の最盛期を迎えていますが記録的な暑さの影響で実の色づきが早まっています。
そのため、収穫や出荷を例年にないほど早めて対応しているところもあります。
千葉県の梨の収穫は今が最盛期で、今後も品種を変えながら10月ごろまで続きます。
200軒ほどの梨農家がある市川市の選果場の一つでは、最初に収穫する品種「幸水」の出荷を先月23日から始めました。
例年、初出荷は8月の初めですが、ことしは気温が高く日ざしの強い日が続いたことから色づきが早く、収穫を10日ほど早めて対応したということです。
「JAいちかわ」によりますと、これまでお盆の贈答品やお供えとしては主に「幸水」が一般的でしたが今シーズンは例年、8月下旬ころに親しまれる「豊水」が主流になる見通しだということです。
「JAいちかわ迎米梨業組合」の及川剛組合長は「長年、梨を作ってきたが、こんなに出荷時期が早いのはこれまでに経験がない。今後も年々早めざるをえないのではないかと考えている」と話していました。

こうした猛暑の背景について専門家は、エルニーニョ現象など自然の変動に加えて地球温暖化が影響しているのは疑いがなく、首都圏では都市化によってさらに高温になるおそれがあるとしています。
そのうえで「適切な対策をしない限り、暑さによる健康被害や農作物への影響は深刻化していくおそれがある」と警鐘を鳴らしています。
気候変動や異常気象を研究している東京大学大気海洋研究所の今田由紀子准教授は、過去の気象データの分析と将来の気候のシミュレーションを行っています。
今田准教授は、埼玉県熊谷市や群馬県館林市など気温が高いことで知られる首都圏の3か所について、1900年から去年までの7月と8月の最高気温を分析しました。
その結果、1900年から1949年までの期間では、その地域にとって「50年に1度」の確率で起こるような暑さは38度前後でした。
ところが2000年を過ぎると38度は「3年に1度」以上の頻度、つまり、20世紀前半の数十倍ほどの確率で起こりやすくなっていたことがわかったのです。
さらに、「50年に1度」の確率で起こる高温も41度前後に達しました。
夏の高温の要因について今田准教授は、エルニーニョ現象やラニーニャ現象といった自然現象に都市化によるヒートアイランド現象、そして地球温暖化が複雑に重なり合っているとしています。
そのうえで、地球温暖化がどの程度影響しているのかを調べるため、温暖化が進んでいる気候と、仮に温暖化が進まなかった場合の気候をそれぞれコンピューター上でシミュレーションし、猛暑日の日数を比較しました。
平成30年7月の例では関東平野一帯で猛暑日は温暖化が進んでいなかった場合に比べて4日から6日程度増えていたという結果になりました。
さらに今田准教授は、首都圏の都市部では、日ざしであたためられたアスファルトなどの熱や、エアコンや自動車などから排出される熱が地表にたまり、郊外より気温が高くなる「ヒートアイランド現象」のため気温がさらに高まるおそれがあると指摘しています。
今田准教授は「人間活動による温室効果ガスの排出が原因の地球温暖化が、厳しい暑さに影響していることは疑いようのない事実だ。適切な対策をしない限り、暑さによる健康被害や農作物への影響は深刻化していくおそれがある」と指摘しています。