自転車の悪質な交通違反 反則金制度の導入検討へ 警察庁

自転車の悪質な交通違反が後を絶たないことから、警察庁は、自動車やオートバイのようにいわゆる「青切符」による取締りを行う反則金制度の導入を検討することになりました。
実効性のある取締りにつなげるのが狙いで、導入されれば、身近な交通手段のあり方の大きな転換点となります。

警察庁によりますと、全国の交通事故の発生件数は減少傾向にありますが、自転車が関係する事故の占める割合は増加傾向が続いていて、自転車と歩行者の事故件数も増加しています。
さらに、去年全国で発生した自転車が関係する死亡・重傷事故のうち、73%余りで自転車側に交通違反があったということです。
事故につながる違反を減らすことが課題になるなか、自転車の取締りは、刑事罰の対象となる交通切符、いわゆる「赤切符」を交付するなどして行われているものの、実際に罰則が適用されるケースは少なく、専門家などからは責任の追及が不十分だという指摘もありました。
こうした状況を受けて、警察庁は、自動車やオートバイのようにいわゆる「青切符」による取締りを行う反則金制度の導入を検討することになりました。
実効性のある取締りにつなげるのが狙いで、月内にも有識者で作る検討会を設けて、取締りの対象とする違反の内容や年齢など具体的な議論を始めることにしています。
検討会では、あわせて、自転車の交通ルールをどのように周知するかや、自転車が安全に走行できる道路環境などについても議論し、年内に提言を取りまとめる予定です。
警察庁は提言の内容を踏まえ、来年の通常国会での法改正を視野に準備を進めることにしていて、反則金制度が導入されれば、身近な交通手段のあり方の大きな転換点となります。

3日、東京都内では自転車に乗りながら携帯電話を操作したり、歩道の歩行者の間を縫うように速度を上げて走ったりするなど、交通違反にあたる自転車が複数見られました。
こうした状況について中学3年生の女子生徒は「歩道を並んで走ったり、下り坂でスピードを出したりする自転車をよく見るので危なくて怖いです」と話していました。
また、30代の夫婦は「歩道を走る自転車が赤信号を無視してそのまま進んでいたので危ないと感じることがありました」と話していました。
警察庁が反則金制度の導入の検討を始めることについて、70代の女性は「スマートフォンを見ながら運転したり、急に止まったりする人がいて危ないのでどんどん取り締まってほしい。制度がないと改善されないと思うので、『青切符』の導入はいいことだと思う」と話していました。
その一方で、40代の男性は「自転車による違反は比較的軽微な内容も含めてたくさんあると思うので、すべての違反を取り締まるのは無理があると思います。取り締まる違反の基準などをしっかりと定める必要があると思います」と話していました。

自転車の交通違反の取締りは、多くは罰則を伴わない専用のカードを使った「警告」が行われているのが現状で、去年は全国でおよそ131万件でした。
悪質な違反には交通切符、いわゆる「赤切符」が交付され、刑事罰の対象として検察庁に送られることになっていて、去年全国で「赤切符」などで検挙されたのは2万4549件でした。
ただ、多くの違反者は不起訴となり、実際に罰則が適用されるケースは少ないということです。
自動車やオートバイのほか、先月から新たな制度が始まった電動キックボードには、反則金を課す「交通反則通告制度」がありますが、自転車にはありません。
国の検討会はおととしまとめた報告書のなかで、「自転車の違反に対する責任追及が著しく不十分な状況」として、「違反金を課すなど違反を抑える実効性のある方法の検討が必要だ」などと指摘していました。
では、自転車に反則金の制度が導入されると、どう変わるのでしょうか。
取締りを受けた違反者には反則切符、いわゆる「青切符」が交付され、期限内に反則金を納付することになります。
納付しないと刑事罰の対象として扱われることになります。
また、自転車には運転免許がないため、電動キックボードと同じように違反点数は設けられないものとみられます。
現在の「警告」と「赤切符」に加えて、新たに反則金の制度を導入することで警察庁は実効性のある取締りにつなげたい考えです。

今回、反則金制度の導入を検討する背景には、交通事故の件数が減少傾向にあるなかで、自転車の交通違反が事故につながるケースが相次いでいることがあります。
警察庁によりますと、自動車の交通ルールの浸透や事故を回避する技術の進歩などに伴って、自動車の関係する事故は毎年減少を続けています。
その一方で、去年全国で発生した自転車が関係する交通事故は6万9985件と、2年連続で増加しました。
事故全体に占める割合も6年連続で上昇していて、去年は23.3%と同じ方法で統計を取り始めた平成15年以降、最も高くなりました。
さらに、去年全国で起きた自転車が関係する死亡・重傷事故7107件のうち73.2%で前方不注意や信号無視、一時不停止など自転車側に交通違反が確認されたということです。
重大な事故につながる悪質な自転車の違反を減らすことが、喫緊の課題となっています。

自転車に関わる政策の調査・提言などをしているNPO法人「自転車活用推進研究会」の理事長で、警察庁の検討会で委員を務める小林成基さんは「現在は交通違反で取締りを受けてもほとんど罰則は適用されず、一部では自転車はルールを守らなくてもよいという風潮があると感じている。『青切符』の導入は、注意喚起の有効な手段になる」と述べました。
そのうえで、「取締りにあたる警察官の数は限られているので軽微な違反と命に関わるような重大な違反をしっかりと区別し、重点的に取り締まる対象を絞り込む必要がある」と述べました。
一方で、自転車の交通ルールが複雑で、実態にあっていない内容もあるとしたうえで、「取締りの議論だけでなく、複雑すぎるルール自体を見直すことや、自転車がルールを守って快適に走れる道路環境を整備していくことも重要だ」と指摘しました。