ふるさと納税 横浜や世田谷区など 都市部から税の流出進む

ふるさと納税で、ほかの自治体に寄付をした住民が多く、今年度の住民税の税収が減る見通しの全国の自治体を、総務省が減収額が多い順にまとめました。
その結果、1位が横浜市、4位が川崎市、5位が東京・世田谷区と上位5つのうち3つが東京と神奈川の自治体で、都市部から税の流出が進む傾向が続いています。

総務省によりますと、去年1年間にふるさと納税を利用し、今年度の住民税の控除を受ける人は891万1000人でした。
これまで最も多かったおととしと比べて144万人余り増え、過去最多を更新しました。
利用者は10年連続で増加しています。
また、ふるさと納税で、全国の自治体に寄付された額は昨年度、9654億1000万円と、前の年度を1300億円余り上回り、3年連続で過去最高を更新しました。
集めた寄付が多かった上位20の全国の自治体のなかに関東の1都6県からは3自治体が入り、16位の茨城県境町が59億5300万円、18位の茨城県守谷市が55億7400万円、19位の千葉県勝浦市が55億3400万円となっています。
一方、ふるさと納税を利用して住民がほかの自治体に寄付を行った影響で、今年度の住民税の税収が減る見通しとなっている金額が多い全国上位5つの自治体では、1位が横浜市で272億4200万円、4位が川崎市で121億1500万円、5位が東京・世田谷区で98億2300万円などとなっています。
上位20団体まで広げると、東京・神奈川・埼玉・千葉の1都3県で12自治体が入っていてふるさと納税によって、都市部から税の流出が進む傾向が続いています。

東京・世田谷区では、ふるさと納税による今年度の住民税の減収額がこれまでで最も多い98億2000万円と、100億円に迫る額となり、区民からは驚きの声も聞かれました。
29歳の男性は「知り合いがふるさと納税をしていて、とても興味があるので、専用のアプリも入れて、まさに始めてみようかと思っていたところです。ただ、これだけ税金がほかのところに流出していると聞くと、ちょっと不服に感じる点も出て来そうな気はします。あまりそこまで把握していなかったので勉強も必要ですね」と話していました。
53歳の女性は「以前に夫がふるさと納税をしてその土地の食べ物をもらったことがあります。地方のためにはいいと思いますけど、税収が減ってしまう側からすると、がく然とする額ですよね。区の子育て支援を考えても、よくないのではと感じます。金額に上限を設けるなど制度の見直しを考えてほしいです」と話していました。
45歳の男性は「びっくりする額ですね。ただ、税金が逃げちゃったから世田谷区でこれができなくなった、あれもできなくなったというような情報が目に見えてはそんなにないので、ふるさと納税を選ぶか、住んでいる地元に納税するかまであえて考える人は少ないのではないでしょうか。私は面倒だなと思って、まだしていませんが、けっこういい物がもらえると聞けば、どちらを取るか、難しいところですよね」と話していました。

東京23区で最も人口が多い世田谷区は、ふるさと納税による今年度の住民税の減収額が、過去最多の98億円2300万円で昨年度から10億円以上の減収となっています。
減収額は横浜市、名古屋市、大阪市、川崎市に次いで全国5番目ですが、これらの市より世田谷区の人口規模は小さく、控除の適用を受ける人、1人あたりの控除額はこれら5つの自治体で世田谷区が最も多くなっています。
税収が減ることにより、区民の暮らしに直結する事業への影響が懸念されています。
区内の小中学校は1960年代から70年代にできたものも多く、一斉に老朽化の時期を迎えます。
このため区は、年に3校のペースでの改築を目指していますが、1校あたりの費用が40億円程度かかるため、税の100億円規模での流出が続けば影響は避けられないとしています。
また、区内の家賃が高いなかで、若者や子育て世代、高齢者の住宅に関する支援策についても税の流出などにより財源の確保が非常に困難になっているとしています。
保坂展人区長は「ついに100億円目前の数字になった。今後はもっと膨れ上がっていくことが予想され、悪夢のような事態だ」と話しています。
現時点では積立金を活用して、公共サービスへの影響が出ないように持ちこたえているとしたうえで、「積立金も無尽蔵にあるわけではないので、今後はストップをかけなければならなくなる事業も出て来ると思う。黄色信号から赤信号にさしかかったというのが今の状況だ」と危機感をにじませました。
世田谷区は、これまで、制度の見直しを訴える立場から、いわゆる返礼品競争には加わらない方針でしたが、去年11月、方針を転換しました。
そして、専用のサイトをオープンして、区内にある有名店の焼き菓子の詰め合わせやローストビーフなど、およそ100の製品やサービスを返礼品に加えました。
しかし、昨年度の寄付額はおよそ2億8600万円で、流出額とは大きく離れています。
保坂区長は「一向に流出が止まらない以上、自衛せざるを得ない。ただ、区内に製品を作る工場が多くあるわけでもないので、やはり限りはある」と説明しました。
世田谷区は税の控除額に一定の上限を設けることや、東京23区のような地方交付税の不交付団体にも補填を行うことなど、23区のほかの区などとも連携しながら、制度の見直しを求めています。