障害者投票実態 障害重いほど投票率低い傾向に 狛江市が調査

東京・狛江市がこの春の統一地方選挙で、障害者の投票状況を詳しく調査した結果、障害が重いほど投票率が低い傾向にあることがわかりました。
総務省によると、こうした調査は全国初とみられるということで、専門家は「これまで障害者の投票の実態は把握されてきておらず意義が大きい。投票環境整備のために全国的に調査が行われるべきだ」としています。

障害者の投票環境の整備に力を入れる狛江市は、ことし春の統一地方選挙で行われた市議会議員選挙について、市内で障害者手帳を持つ全有権者の投票状況を調べ、その結果をまとめました。
それによりますと、狛江市全体の投票率が50.7%だったのに対して、障害がある人の投票率は46.9%と、3.8ポイント低くなりました。
障害者手帳を1つだけ持つ人の障害別の投票率の内訳は精神障害がある人が50.4%と最も高く、身体障害が47.5%、知的障害が37.7%となっています。
障害の種別や等級ごとの分析では、障害が重くなるほど投票率が下がる傾向で、例えば身体障害で、手足や体幹などに障害がある「肢体不自由」は最重度の人で25.8%と低くなっています。
障害の程度の重さが投票の難しさにつながっていることなどが浮き彫りになり、狛江市は「代理投票など利用できる仕組みがあるので結果をさらに分析して、障害に応じた支援のメニューやサポートの強化を検討したい」としています。
総務省によりますと、障害者手帳を持つ全有権者を対象に自治体が調査を行ったのは全国で初めてとみられるとしています。
障害者の投票支援に詳しい京都産業大学の堀川諭准教授は、「これまで障害者の投票の実態は把握されてきておらず、その第一歩になったという点で意義の大きな調査だ。障害者の投票環境に関するニーズを具体的に把握することは自治体に必要なことで、障害のある方の投票環境の整備を日本全国で実現していくために全国的に調査が行われるべきだ」と話してしています。

調査の結果、投票率が特に低かった最重度の「肢体不自由」の1人、狛江市に住む松本裕子さんです。
生まれつき脳性マヒがあり、4月の選挙の投票には行っていません。
障害の影響で書くことが難しいほか、自分の意思とは関係なく首が大きく揺れるため、文字を読むことも難しく、投票所で候補者の名前の中から、投票したい人を見つけるのに時間がかかってしまいます。
また、首の揺れに合わせて腕も震えるため、代理投票を利用して候補者を指さして係員に伝えようとしても別の候補者を指さしてしまうなどスムーズに意思を伝えるのも難しく、コロナ禍ということもあり投票には行けなかったといいます。
松本さんは「行きたくても行けないということはあります。家族がいない障害者はなおのこと大変だと思います。投票したいという人が困難を感じない環境が整備されてほしいです」と話していました。