事件前から入所の女性“19人の分まで精いっぱい生きたい”

事件の前から津久井やまゆり園に入所している女性が取材に応じ、「亡くなった19人の分まで精いっぱい生きたい」と語りました。

奥津ゆかりさん(54)は26日の追悼式で、入所者を代表し、「19人の皆さん、これからも天国から私たちのことを見守ってください」と追悼のことばを述べました。
奥津さんには知的障害があり、事件の前から津久井やまゆり園で暮らしています。
自身は被害を受けませんでしたが、同じ建物で多くの入所者が亡くなりました。
事件当時のことについて、「最初は寝ていて、何かガタガタいっているなと思っていたら、職員がドアをあけて『いいから逃げて』と言われました。何がなんだかわからなくてパニック状態でした。今でも自分が殺される夢をみることがあります」と振り返りました。
亡くなった19人のなかには、特に仲よくしていた60代の女性もいました。
優しく、明るい性格で大好きだったという奥津さん。
作業をしたり、おやつを食べたりと多くの時間を一緒に過ごしていたといいます。
19人を殺害した元職員の、「重度障害者には生きる価値がない」という考えについては、「『生きる価値がない』というのはおかしい。そんなことは絶対にありません」と強い口調で言い切っていました。
やまゆり園は事件後に取り壊され、おととし再建されました。
園長や多くの職員が替わり、再出発した園のなかで、奥津さんも新たな一歩を踏み出しています。
ことし2月から、週に2回園内で洗濯の仕事を始めました。
非常勤職員として外部の人と協力し、およそ60人分の服やシーツなどを洗っています。
積極的に園の外に出て、地域の人たちとの交流も始めました。
6月には地元の夏祭りに職員から借りた浴衣を着て出かけ、カラオケ大会に参加してお気に入りの曲を熱唱しました。
奥津さんは事件後、亡くなった19人を思い、鶴を折り続けています。
今月7日に入所者だけで行った追悼式で、奥津さんは祭壇に向かって折り鶴をささげました。
奥津さんは「事件で自分も死んでいたかもしれず、そうしたらこの場所にいることはできませんでした。でも私たちは今、こうして生きています。亡くなってしまった19人の分まで、これから精いっぱい頑張って生きていきたいです」と話していました。