“子どもに体験の機会を”都内のNPO法人が新プロジェクト

ひとり親家庭や経済的に厳しい家庭の子どもを対象に夏休み中、旅行やスポーツ、野外活動などの体験の機会を提供するプロジェクトを、子育て支援などを行う東京都内のNPO法人が始めることになりました。

これは、保育園の運営や子育て支援を行うNPO法人「フローレンス」が12日、記者会見をして明らかにしました。
会見では、別の民間団体が小学生の子どもがいる保護者を対象にした調査でスポーツや音楽といった習い事のほか、旅行など、学校外での子どもの体験機会は家庭の経済状況によって大きな差があることが紹介されました。
こうした体験格差は、夏休み中はさらに広がるとみられることから、このNPOではひとり親家庭や経済的に厳しい家庭、1000世帯の子どもを対象にことし9月にかけて遊びや学びの体験の機会を提供するプロジェクトを実施することになりました。
具体的には、レジャー施設などの予約サイトを運営する企業など8社と連携し、スポーツ選手によるかけっこ教室や飛行機の格納庫見学や機内食の体験、プログラミング教室などに招待したいとしています。
費用についてはNPOのホームページ内にプロジェクトの専用ページを設け、1000万円を目標に個人や企業から寄付を募っていて、参加する子どもたちの応募も始めています。
会見したNPO法人フローレンスの駒崎弘樹会長は「家庭の状況に関わらず、全ての子供たちが夏休みの体験を楽しみ、体験を通して叶えたい未来を実現できる社会を目指していきたい」と話しています。

子どもの学校外での体験活動は保護者の年収によって大きな格差が広がっていることが生活困窮家庭を支援する団体の調査で明らかになりました。
この調査は生活困窮家庭の子どもを支援する公益社団法人「チャンス・フォー・チルドレン」が去年10月12日から14日にかけて、インターネットの調査会社を通じて、小学生の子どもがいる保護者、2097人を対象に行いました。
それによりますと、1年間、子どもが学校外の体験活動を「何もしていない」と答えた保護者は、年収300万円未満の世帯が29.9%だったのに対し、300万から600万円未満の世帯は20.2%、600万円以上の世帯が11.3%となり、3倍近い差がありました。
年収300万円未満の世帯で子どもがやってみたいと思う体験活動をさせてあげられなかった理由を複数あげてもらったところ、「経済的余裕がない」と回答した人が56.3%と最も多くなっているほか51.5%が「保護者に時間的余裕がない」と答えています。
また、このところの物価高騰が子どもの体験機会に影響するか尋ねると、「機会が減った」「今後減る可能性がある」と答えた保護者は、年収300万円未満の世帯が50.6%、300万から600万円未満の世帯が47.2%、600万円以上の世帯が34.7%となっています。
さらに、保護者自身が小学生のころに「習い事などの学校外の体験活動をしていなかった」答えた保護者は、年収300万円未満の世帯が39.8%、300万から600万円未満の世帯が31.1%、600万円以上の世帯が23.2%となり、経済状況が厳しい保護者ほど、自身も幼少期の体験機会が少ないことが浮き彫りになっています。
具体的な体験活動では、「スポーツ・運動」「文化芸術活動」ともに年収が高い家庭ほど参加している子どもが多くなっています。
格差が大きい子どもの体験活動の参加状況をみると、『水泳』は、年収300万円未満の世帯が14.8%、300万から600万円未満の世帯が20.4%、600万円以上の世帯が32.7%となっているほか、『音楽』は、年収300万円未満の世帯が7.5%、300万から600万円未満の世帯が13%、600万円以上の世帯が17.5%と年収300万円未満の世帯と600万円以上の世帯で2.3倍の差が生じています。
自由記述欄には、次のような声が寄せられました。
「やりたいと言われても、どれも経済的に無理なので、子ども自身が無理だよねって、何も言わなくなりました。だんだんわかる年齢になり、子どもなりに我慢しているようで、申し訳なく思っています」(小学4年生保護者40代女性)。
「友だちが行っているからという理由でスイミングに行きたいと言っていたが、入会金や月謝が高額で行かせてあげられなかった」(小学1年生保護者30代女性)。
「生活に余裕が無い。物価上昇に追いつけない。送迎が出来ない」(小学5年生保護者40代男性)。
調査を行った公益社団法人「チャンス・フォー・チルドレン」は「『体験の貧困』は、子どもの進路選択などに影響を及ぼし、格差の連鎖を生む点でも問題だ。子ども・家庭への活動費の支援や体験の担い手を支えるための基盤整備が必要だ」としています。