人手不足の飲食業界に新サービス スポットで働くシェフを手配

深刻な人手不足が特に顕著な飲食業界で、必要なときだけ短時間、「スポット」で働くシェフを手配する新たなサービスが始まりました。

飲食業界では、新型コロナの行動制限の解除で外食の機会が増えていることや、外国人観光客の増加を背景に、急速に客足が伸びる一方、料理人など人手の確保が深刻な課題となっています。
こうしたなか、料理人の出張サービスを手がける企業が飲食店と料理人をマッチングし、一回3時間から最短即日で「スポット」でシェフを手配する新たなサービスを先週発表しました。
去年10月から取り組みを試行的に始めたところ、飲食店のほかホテル、婚礼施設など幅広い業態であわせておよそ370社の登録があり、今後も需要拡大が見込めることから本格的なサービス提供に踏み切ったということです。
サービスを利用する港区の羊肉料理の店は、コロナ禍の営業制限などでスタッフが相次いで退職し人手不足に頭を悩ませてましたが出張シェフの利用で安定してシフトを回せるといいます。
「スポット」でシェフとして働く岩崎朋哉さん(30)はフリーランスのシェフとして、働く店を選べることでさまざまなアイディアを蓄積したり調理法が学べるなど経験をつめるといいます。
岩崎さんは「この店は羊肉の専門店なので、これまで使ったことがない部位について教えてもらえるなど経験になる。料理人は、長時間労働になりがちですが、家族との時間もきちんとつくることができる今の働き方が気に入っています」と話していました。
また、店を経営する「アイフーズ」の後藤遊社長は、「飲食業界全体は人件費もかなり上がり、雇用を維持するのが難しい状況だと思う。事前にどんな人が来るのかを確認してマッチングできるので安心してサービスを使っています」と話してました。
サービスを提供する「シェアダイン」の井出有希共同代表は「既存の仕組みでは人材確保が追いつかない、危機的な状況にある。飲食業界で働き方改革が進み、料理に携わる人が自分らしいキャリアを構築できるよう後押ししたい」と話しています。

空き時間などに短時間でさまざまな仕事を担う「スポットワーカー」が増えています。
主な仲介業者でつくる業界団体、スポットワーク協会によりますと「スポットワーク」とは、好きな時間・場所・職種を選び、仲介業者などを通じてお互いの条件があえば短い時間と期間だけ働き、継続した雇用関係のない働き方を指します。
新型コロナが5類に移行し、需要が急回復する一方で人手不足が深刻な飲食業などで重要な役割を果たしつつあります。
スポットワーク協会によると、「タイミ‐」など大手4社の登録会員数は、ことし5月時点で、あわせておよそ1070万人で、2020年末と比べ2倍になっています。
一方で、スポットワーカーの働く環境には不適切な求人があるなどの課題もあり、協会では自主ルールを策定するなど安心して働くための環境整備も検討しているということです。