川崎市 ヘイトスピーチ条例施行3年 ネット上の言動に課題

民族差別的な言動「ヘイトスピーチ」に対して、全国で初めて刑事罰を盛り込んだ条例が、川崎市で施行されてから1日で3年になります。
市は「街頭でのヘイトスピーチは確認されず、一定の成果はあった。ネット上の差別的な言動が今後の課題だ」としています。

川崎市では在日コリアンに対する差別的なデモが相次いだことから3年前の7月1日、公共の場所でヘイトスピーチといった民族差別的な言動を繰り返した場合に、刑事罰を科すことを盛り込んだ全国で初めての条例が施行されました。
その後、市の職員が定期的に街頭に出向き、差別的な発言や横断幕の掲示などがないか表現の自由に配慮しながら確認しています。
これまでのところ、対象となるような言動は確認されていないということです。
市では条例の施行後、インターネット上の差別的な言動について、SNSの運営業者などに削除を要請する取り組みも行っています。
委託業者が調べたものと、市民から申し出があったもののあわせて1500件の書き込みについて、内容を精査したうえで一部を専門家の審査会にかけ、特定の市民や団体を取り上げているかや、差別的な意図がないかなどを判断したうえで、84件の削除要請を出しました。
このうち55件が削除されましたが、インターネット上の差別的な投稿は後を絶たないということです。
川崎市人権・男女共同参画室松本聡担当課長は「条例は街頭でのヘイトスピーチに関しては一定の成果をあげたと考えている。一方、インターネット上ではスピーディーに同じような書き込みが反復されたり拡散されたりともぐらたたきのような状況だ。国や法務局とも連携し少しでも効果的な手法を考えていきたい」としています。

川崎市の在日外国人との交流施設、「川崎市ふれあい館」の館長で、在日コリアン3世の崔江以子さんは「駅前にいくことへの恐怖やちゅうちょは条例ができてからぐっと減りました。インターネットの広いフィールドに対応するには川崎市の対策だけでは追いつかないと思いますが、これまでに即日削除されたケースもあり、行政機関が策を講ずることも効果というのは大きいと思います。私たちが救済されるという実感を持つことができています」と話しています。

ヘイトスピーチの問題に詳しい東京造形大学の前田朗名誉教授は「条例が街頭でヘイトスピーチをする人たちの抑止力となったといえる。一方でインターネットは地理的、空間的な境界線がないため、特定の地方自治体で取り組んだとしても効果は限定される。自治体どうしで連携したり、国のレベルで同様のことをきちんと積み重ねたりして、相互に協力しながら対策をすることが必要だ」としています。