広域強盗事件 「ルフィ」名乗り指示か 初の指示役逮捕

広域強盗事件 「ルフィ」名乗り指示か 初の指示役逮捕

一連の広域強盗事件のうち、去年、京都市で7000万円相当の高級腕時計が奪われた事件で「ルフィ」などと名乗って実行役に指示を出していたとして、フィリピンを拠点にした特殊詐欺グループの幹部が強盗の疑いで逮捕されました。
一連の広域強盗事件で指示役が逮捕されたのは初めてで、警視庁は合同捜査本部を設置し、全国の府県警と連携して各地の強盗事件との関連についても捜査することにしています。

逮捕されたのは、ことし2月に日本に送還され、フィリピンを拠点に特殊詐欺事件に関わったとして逮捕・起訴されたグループの幹部で、住所不定・無職の今村磨人容疑者(39)です。
警視庁によりますと、去年5月に京都市の時計販売店から高級腕時計、7000万円相当が奪われた事件で指示を出していたとして、強盗の疑いがもたれています。
今村容疑者は、闇バイトで募集した実行役を京都に集め、凶器やレンタカーの手配のほか現場の下見をさせた上で店舗に押し入らせていて、「ルフィ」と名乗って、当時収容されていたフィリピンの入管施設から携帯電話で一連の指示を出していたとみられるということです。
これまでに実行役などとして13人が逮捕され、メンバーから今村容疑者の銀行口座に現金が振り込まれたことや押収された携帯電話の解析などから今村容疑者を指示役として特定したということです。
フィリピンから送還された特殊詐欺グループの幹部が広域強盗事件の指示役として逮捕されたのは初めてで、警視庁は、京都府警のほか、広島、山口、千葉の各県警と合同捜査本部を設置して各地の強盗事件との関連についても捜査することにしています。

警視庁は、認否について明らかにしていませんが、捜査関係者によりますと、逮捕後の調べに対し「全く身に覚えがない」などと供述し、容疑を否認しているということです。

一連の広域強盗事件をめぐっては、ことし1月、東京・狛江市の住宅で高齢女性が死亡した強盗事件をきっかけに、同一のグループがSNSでメンバーを募り、実行役を入れ替えながら各地で強盗を繰り返している疑いが浮上しました。
狛江市の事件では、1週間前に千葉県大網白里市で起きた強盗傷害事件で逮捕された実行役の携帯電話から狛江市の住宅の情報が見つかり、警察官が現場の住宅を訪れたことで発覚しました。
また、狛江市の事件の2日後には、東京・中野区で去年起きた強盗傷害事件に関わったとして逮捕・起訴された永田陸人被告(21)が乗っていた車から、狛江市の事件の被害品が見つかりその後、狛江市の事件でも実行役として逮捕・起訴されています。
中野区の事件の実行役は、東京・稲城市で起きた強盗傷害事件に関与していたことも確認されました。
次々と事件のつながりが見えてきましたが、広がりは関東だけにとどまらず、こうした事件に関わっていたメンバーの一部が、山口県岩国市の事件や広島市の事件など西日本でも事件を起こしていたことが分かりました。
現金の流れなどから別ラインの捜査で判明した京都市の事件も含め、同一のグループがあわせて7つの事件に関わっていたことが判明。
警視庁は今村容疑者らのグループがメンバーの一部を入れ替えながら次々と各地の事件を起こしたとみて指示系統の解明を急いでいます。

一連の広域強盗事件は、これまで、各地の事件について、現場のある都道府県の警察がそれぞれ捜査を行って実行役などを検挙してきましたが、指示役については、警視庁が中心となって各地の事件も捜査する方針です。
捜査関係者によりますと、理由として一つの事件の捜査だけでは指示役としての十分な証拠が得られず、各地の警察の捜査で分かった情報や押収した資料を集約したほうが指示系統を解明できることや実行役などから押収した携帯電話などの解析技術が、地域によって差があることなどが挙げられます。
一連の事件の中でも、早い段階から指示役として「ルフィ」という名前が具体的に浮上したのが、京都府警が捜査していた去年の強盗事件でした。
実行役などの捜査から判明したといいます。
このため、京都府警と警視庁の間で、捜査資料の提供や、それぞれが担当する事件について情報共有するなど、協力関係のもとでの捜査が進められたということです。
その後、全国で相次いだ強盗事件でも、同じ「ルフィ」を名乗る人物が指示役として関与しているのが分かったことから、警視庁に各府県警が合流する形で、合同捜査本部が設けられることになりました。

この事件では、実行役らが奪った高級腕時計が、逃走途中だった高速道路のサービスエリアで再び何者かに奪われる、いわば「二重強盗」とも言える事件が発生していました。
警視庁によりますと、実はこの2度目の強奪も、今村容疑者が指示した疑いのあることが分かったということです。
捜査関係者によりますと、最初に店舗に押し入った実行役らは、事前に、秘匿性の高い通信アプリ「テレグラム」で「サンジ」などと名乗る人物とやり取りを行い、大阪の「吹田サービスエリア」のトイレの個室で、奪った腕時計を入れたバッグを受け渡す約束をしていたということです。
しかし、そこに現れた男に突然殴られ、バッグを奪われたということで、腕時計はその後、何者かが岐阜県内のコインロッカーまで運び、さらに別の人物が東京都内に運んで売却役に渡し、売りさばかれるなどしたとみられています。
現金の振り込みの記録などから、すべてに今村容疑者が関わった疑いのあることが判明しました。
結果として、最初に店舗に押し入った実行役らは、腕時計を奪われてしまったことでわずかな報酬しか受け取ることができなかったうえ、その後多くが逮捕されています。
捜査関係者は、事件の首謀者が捜査の手を遠ざけるために現場により近い実行役を切り捨てたり、みずからの取り分を増やしたりするためにこうした手口を使った可能性もあると見ています。
捜査幹部は「今村容疑者らからすれば、闇バイトで集めた実行役は、ただの使い捨て、“捨て駒”でしかない。高額報酬を前面に押し出したうたい文句とは全く違う」と話し、「闇バイト」に安易に手を出さないよう訴えています。