高卒の就職希望者減るなか求人は増加か 獲得競争厳しくなる?

来年春に卒業する高校3年生の就職活動が来月1日から事実上スタートします。
ことしは新型コロナの5類移行などから求人が増えるという見方があり、高卒での就職希望者が減るなか、獲得競争が激しくなりそうです。

来年春に卒業する高校3年生を対象にした企業の求人は来月1日から生徒などに公開され、この日から就職活動が事実上スタートします。
スタートを前に、27日は都内で合同企業説明会が開かれ、就職を希望したり、検討したりしている高校3年生などおよそ60人が、ホテルや建設業、製造業など17社の説明を聞いたり仕事を体験したりしました。
ことし3月末時点の全国の高卒者の求人倍率は3.49倍と過去最高を記録しましたが、厚生労働省は、新型コロナの感染症法上の位置づけが5類に移行するなどして求人が増えていることや、少子化などで高卒の就職希望者が減っていることから、求人倍率は今後さらに高まる可能性があると見ています。
また、このイベントを主催した会社がことし4月に行ったインターネットのアンケートでは、高卒者を採用する企業の採用担当者およそ300人のうち、今年度の高卒採用を増やすと答えたのは31.6%、減らすと答えたのは6.4%、変動しないと答えたのは55.9%でした。
増やすと答えた企業の半数以上は、理由として「若手人材の層を厚くする」ことや「人材不足」を挙げたということです。
参加した企業の人事担当者は「以前に比べて大卒の応募者が減ってきたため、高卒採用を強化している。若い頃から技術を身につけられることなど、メリットをアピールしていきたい」と話していました。
参加した男子高校生は「実際に仕事で使う機械を体験させてもらい、これを使いこなせたらかっこいいなと思った。いろいろな会社を見学してやりたいことを見つけたい」と話していました。
催しを主催した就職支援会社「ジンジブ」の近藤海里部長は「若手人材の確保が難しくなるなか、ポテンシャル採用として高卒の採用を新しく始める会社も増えている。高校生の就職活動は1社だけ見学して決めてしまうケースも多いので、様々な仕事を見て、理解を深めてから決めることが大事になる」と話していました。

合同企業説明会に参加した立川市のホテルは、昨年度は1人だった高卒者の採用を大幅に増やし、今年度は最大で8人程度採用する方針です。
このホテルでは、コロナ禍で経営が厳しい時期に従業員の態勢を縮小してきましたが、最近は客足が戻り、人手が足りなくなっているということです。
特に調理場での人材不足が深刻なため、今年度は調理師候補として5人程度の高卒者の採用を目指しているということです。
就職時に調理師免許がなくても、その後取得を目指すのであれば、育成や資金面でサポートする方針です。
ホテルで採用などを担当する藤倉雄次業務部長は「コロナ禍のあと、調理師を中心に人材不足が深刻になっている。経験がない高校生の採用は新しい挑戦だが、不足の解消に向けて力を入れていきたい」と話していました。

この春、高卒者の求人倍率は3.49倍で去年の同じ時期に比べて0.6ポイント増え、統計を取り始めた昭和63年以降、最も高くなりました。
統計をまとめている厚生労働省によりますと、これまで過去最高だった平成4年の3.34倍を超え、およそ30年ぶりに記録が更新されました。
都道府県別にみますと、東京が10.79倍大阪が6.35倍京都が4.32倍などとなっていて、大都市圏を中心に倍率が高くなっています。
去年の同じ時期と比べた求人数を産業別にみますと、宿泊、飲食サービス業が42.8%、運輸、郵便業が20.5%、不動産、物品賃貸業が19.2%、それぞれ増加していました。
こうした状況について厚生労働省の担当者は「新型コロナの感染症法上の位置づけが5類に移行して求人が大幅に増加している。一方で、少子化と進学率の高まりで就職を希望する人は少なくなっていて、結果的に求人倍率は過去最高という結果となった。ただ、求人はまだコロナ以前には戻っておらず今後も増加するとみられ、求人倍率はさらに高くなる可能性がある」と話しています。